[画像]2年前の東電原発遮水壁拒否を証言する馬淵澄夫さんと取材する筆者・宮崎信行(左端)、ANNニュースから。
民主党の東京電力福島第一原子力発電所事故対策本部(大畠本部長、玄葉光一郎事務総長、大島九州男事務局長)は2013年9月18日(水)国会内で、会議を開きました。
東京電力からは、目がうつろだったフェローに代わり、松本純一・東京電力改革特別タスクフォース事務局長代理が出席。肩書は耳慣れないところですが、松本純一さんという人はこちら。
この2年半、テレビですっかりおなじみの顔ですが、筆者は初めて見ました。
会議はまず大畠本部長が「きょう夕刻官邸に申し入れに行く」と語りました。
大島九州男事務局長(参議院議員)に促されて、前回の会議(福島県で開催)での東電の宿題として、松本氏は「各タンクエリア堰内溜まり水の状況」と題するA4判4枚を説明。タンクから漏れた汚染水の堰内の溜まり水のうち、台風18号で、H4(北)エリアというところにあるタンクから、1リットルあたり17万ベクレルの放射能が9月15日に出たものの、9月16日午前3時4分から午後8時57分に汲み上げて、堰内の水位(溜まり水)が11センチから3センチに減らした、などと説明しました。放射能が低いタンクは、排水したようですので、地下水も含めれば、少なくとも湾内の海には出たのだろう、と筆者は認識しました。とはいえ、なにかすぐに太平洋に健康被害のある魚が出たりするような問題ではないでしょう。ただし、かなり長期間かつお金がかかる。そのことの方が問題でしょう。
ところが、ここで松本氏が着席したところで、大島さんが激怒。怒る大島さんを初めて見ました。「前回宿題だった、馬淵さんの言っている遮水壁をつくらなかった経緯についてのペーパーがない」との指摘に、松本氏は「弊社の武藤栄元副社長と連絡がとれず、馬淵先生がおっしゃっている内容との確認がとれない」として、東電社内で、同氏と副社長の連絡がとれないから、資料を持参しなかったというありえない詭弁を弄しました。
ここで、馬淵澄夫さんがノートを見ながら、口頭で経緯を説明しました。まだ、朝早かったので、朝日1面を見ながら話を聞く出席者も多く見られました。
ターミネーターのBGMが流れるかのような緊張感の中、馬淵さんは次のように説明しました。
「(2011年の)6月11日に、私と東電の吉田所長が責任者として(原発の)サイト内に入り、遮水壁が必要だと吉田所長と確認をしました。6月13日に当時担当だった武藤副社長に話し、6月14日に海江田万里経済産業大臣(当時)に記者発表してもらう手はずになっていたところを、武藤副社長から、「株主総会が迫っており、有価証券報告書(有報)に監査が入っている。遮水壁をつくるには1000億円かかるので、資本市場に動揺を与える」として、14日の海江田大臣の記者会見をやめてほしいとの要請が(経産省に)入った。これを私たちのタスクフォースが察知し、海江田大臣にかけあったところ、「市場に混乱を与えるので発表しない」と官邸と経産省が判断した。そこで、「遮水壁はやることは確認している」との文章をつくってもらった」
こういう趣旨の説明をしました。「官邸と経産省が判断した」との説明には、私は、海江田さんが現在党の代表なので、「官邸と~~」としてリスクを分散させたのかなあ、という感想を私見として持ちました。
この後、松本氏は「武藤と確認できていない」と答えました。
なお、汚染水の量に関して松本氏は「炉心を冷やすのに必要な日量400トンだ」との説明をしました。これは以前からぶれておらず、事実でしょう。この水をいつまでタンクにため続けるのかが問題ですが、民主党議員からは、ALPS(汚染水の洗浄装置)を東電が3系統整備(故障中)したのに、4系統目を国費(予備費)から整備することの違和感が提示されました。
これを受けて、予備費の支出には反対しないが、技術的に難しい作業を国費で負担するようになると、東電としては、技術的に難しい作業を国費ですぐに取り掛かろうとする一方、技術的にやさしい作業は東電負担になるので翌年度に先送りしようというインセンティブが働いてしまい、まず難しい作業から始めようとする工程表のずれがでるのではないかとの指摘が出ました。これは3・11当時、ピカピカの1年生のヒラ議員だった玉木雄一郎・政調副会長の指摘で、これについては会合の最後に、玄葉事務総長が引き取り、東電と国費の財源スキームも検討していくことを確認しました。
いずれにしろ、東電は民主党ににらまれたら、逃げ切れないと覚悟すべし。「夏休みの宿題を忘れたのは親の病気を看病していたからです」と嘘をついて、かえって大事になる小学生のような対応は自民党にしか通用しません。
[画像]2013年8月末時点での東京電力福島第一原子力発電所における汚染水問題への対策、経済産業省資源エネルギー庁資料=民主党を通じて入手。
2013年9月18日付朝日新聞1面ワキは「福島第一 東電、破綻を懸念 遮水壁、2年前見送り」の見出しで、馬淵澄夫・総理補佐官(当時)が2011年6月に、遮水壁(海側、陸側)で原発1号~4号機の地下を鋼鉄製の遮水壁で囲い、「永久凍土方式」にすることを要求したところ、東電が「1000億円の費用がかかり、債務に計上すると、市場から破綻の心配がある会社だとみられる。6月末には株主総会もある」として拒否。そのうえで、経済産業省の海江田万里大臣に対して、「着工時期や費用は不明で、年明け以降の中長期的課題だ」と記者会見するよう要求していたと報じました。
[画像]2013年9月18日付朝日新聞1面。
これに関して、筆者がインターネットで調べたところ、次の海江田大臣の記者会見での発言がそれに該当した部分とみられます。
[経済産業省ホームページから引用はじめ、太字・色付けは筆者]
海江田経済産業大臣の閣議後大臣記者会見の概要
平成23年6月28日(火)
10:14~10:39
於:記者会見室
(中略)
Q: それから、今、細野さんが特命担当大臣になられたということも含めて、自民党から浜田さんを総務省の政務官のほうに引き抜いたり、それから馬淵さんなんですけれども、総理補佐官を外れて、これまで放射性物質の飛散対策をやられていたのがどうなるかとか、その辺の今回の改造全般についての感想といいますか所見をお願いします。
A: 人事は総理の専権事項でありますから、私からあれこれ言うつもりはございません。その上で、馬淵補佐官については、これまでも特に中長期的な対応ということで、大変貴重な尽力をいただきまして、それが先だって特に地下水と原子力発電所との遮蔽についてのレポートもまとめていただきましたので、それを参考にこれから細野大臣と私との間でしっかりと行っていきたいと。
それから、また機会があればこれからも馬淵さんには貴重な提言もいただきたいと思っておりまして、その意味ではこれまでどおり粛々と原子力事故の収束に向けてお互いが力を合わせて協力をしていくということでございます。
それから、私の仕事として、これからいよいよ原子力事故の損害賠償の機構の法律が国会で議論されることになると思います。それは先ほどの細野大臣との所掌の関係で言えば、私が全面的に責任を負うということでありますので、そこに力を入れていきたいというふうに思っております。(後略)
[引用おわり]
このくだりを読むと、馬淵さんは更迭され、細野豪志さんに担当を代えられたように思えます。
この感情的な対立が政権最交代後の第17回民主党代表選で、海江田vs馬淵の一騎打ちになり、社会党・第1次民主党が擁立した海江田さんが当選し、細野さんを幹事長に任命したように思えます。
海江田さんは2013年9月10日の記者会見でも永久凍土方式は技術的にも財政的にも難しい、との発言をしています。
筆者は、民主党のことを思えば、原発官邸のメンバーは10年間テレビに出ないところで民主党を支えてほしいと考えています。具体的には、菅さん、枝野さん、海江田さん、細野さん、馬淵さん、福山さんらのことですが、台風クラブならぬ、3・11原発クラブの狂気が続いています。ただ、今回の馬淵さんの発言は大いに支持したいところです。
[写真]東京電力を追及する馬淵澄夫さん。左隣は、海江田代表側近で第1次民主党・社会党・北海道連系列の荒井聡さん、2013年8月、国会内、筆者撮影。
[写真]思いつめた表情で、馬淵さんの意見を聞く、山下和彦・東京電力フェロー(技術顧問)、2013年8月、国会内、筆者撮影。
ここから先は完全に冗談です。東京電力株式会社は、1000億円を負債に載せることを嫌がったそうです。ただ、当該期にしろ、今期にしろ、14兆円前後の資産のなかに、「核燃料」が8000億円計上されています。もちろん、柏崎刈羽原発の周辺にある核燃料は資産でいいでしょう。しかし、福島4号機の使用済み核燃料プールにある核燃料棒は、今後資産として使えるのでしょうか。もちろん、国策としての核燃料サイクルは続いています。ただ、少なくとも4号機の核燃料は、資産ではなく、負債にすべきでは? 核燃サイクルの資産と、地中に完全に廃棄する場合は、費用の換算が違うでしょうが、バランスシートの左から右に移すべし。当然、これをやった直後から、借り換えも含めて融資した銀行は株主代表訴訟をおこされかねないし、そもそも東電は倒産するでしょう。株式も紙屑です。その前に、ある程度国費で増資するということもあるでしょう。私は東日本大震災は、時間が経つほどつらくなる類の災害だと、2年半前から考えておりました。まさに地獄の沙汰も金次第。
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