【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]「共謀罪(合意罪)」「働き方改革」で民共「提出前攻防」が激化 野党一巡

2017年02月02日 17時44分36秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

【衆議院予算委員会 平成29年2017年2月2日(木)】

 「平成29年度予算案」は3日目。

 基本的質疑のテレビ入りが一巡し、自公民共維のことしの国会に臨む姿勢が明確になりました。

 民進党は「働き方改革」「共謀罪」の提出前の法案に照準をあわせたようです。

 共産党も「働き方改革」、「共謀罪」を取り上げていて、終盤にかけて、民共政策連携は進みそうな気配。与党・公明党も働き方改革を重視しています。私は今年後半には、共産党も含めた与野党協議体が立ち上がるのではないか、とのイメージを持ちました。

 維新は「トランプ国会だ」として、首相の擁護。維新の101本法案で、首相は「日系移民4世移住促進法案」(廃案、その前の議案番号は192参法113号) に前向きな姿勢を示しました。

 基本的質疑2日目は、民進党の続きからで、きのう指摘したように、閣僚経験者は一人も質問しませんでした。

 民進党の緒方林太郎さんらは、「組織犯罪防止条約の国内実施のための組織犯罪処罰法等改正案」(未提出)を質問。衆参単独過半数において、提出前の攻防が激化してきました。 緒方さんの問いに答える形で、岸田外相は「共謀罪」を「合意罪」と言い換える形で法案提出の作業をしていることを認めました。緒方さんは外務省国際法局条約課長補佐の経験を踏まえて、条約の国内実施にあたって、条約の「担保表」というものを作成し、内閣法制局の審査を受けるそうです。これは、条約の国内実施のために、担保法はこれだ、と一条一条詰めていくとのこと。TPP条約でも担保表があり、国会に提出されたとのことで、この「担保表」の理事会への提出を協議することになりました。

 緒方さんはこの「担保表」をめぐる岸田外相との質疑のなかで、「これまで3回提出された共謀罪法案は、条約に必要ない罪も盛り込まれていたのではないか」と指摘し、金田法相らが検討することになりました。

 大西健介さんは働き方改革について、昨夜官邸で開かれた「実現会議」の審議内容を加藤担当相に聞きました。実現会議の労働者代表が1名、使用者側が7名と偏っている点も指摘。「労働基準法第36条改正案」(未提出)に「上限残業時間月100時間以内」と書き込まれることがあると、「労働基準署の心疾患などの労災認定のための、いわゆる過労死ラインと同じであり、法律の意味がなくなる」と指摘し、原案とりまとめ段階での配慮を求めました。

 共産党の藤野保史さんは、公安の情報収集を仕事とする公務員が、原発テロを警戒するため、という目的で、原発抗議運動の情報収集をしていたと指摘。金田法相が挙げた犯罪組織である、「テロ組織、暴力団、薬物密造組織」の3つは例示的な列挙に過ぎなかったと安倍首相らの答弁を得ました。さらに、治安維持法案の趣旨説明で若槻礼次郎内相が労働組合に適用されるというのは、「誤解である」と演説したことを取り上げ、警鐘を鳴らしました。

 維新の下地幹郎元郵政改革相は、「今年初めての予算委員会なので、我が党の立場を説明したい」。下地さんのこのフレーズは何度か聞いた覚えがあり、下地さんも息の長い政治家だなと感じました。下地さんは「維新は提案型対決政党として新しい野党像を示す。これまでの野党は、内閣不信任案に賛成、予算に反対、首班指名では自党の党首の名前を書いていた。維新は補正予算に賛成した」と話しました。そのうえで、「政策は政策でしっかりやる、選挙は選挙でしっかりやる」と語りました。

 私は、おそらくこの背景に、野党共闘(民共自社)が実現すると、大阪府内の一部の小選挙区で「維新が1位自民が2位、野党共闘が3位」 となり、維新が小選挙区議席を増やすという世論調査が一部にあることも含んでいるのではないかと感じました。

 下地さんは、アメリカ国民が負担して調達し、米軍が日本に置いている装備を評価すると、6・4兆円(原子力空母ロナルド・レーガン8840億円含む)になるとのパネルを出しました。1年辺りの日本の調達費が2兆円、中国の調達費が6兆円であることから、在日米軍の資産を考えると、思いやり予算は必ずしも高くなく、在日米軍の必要性を説きました。

 沖縄県への地方一括交付金について、不用額が多いとして、鶴保沖縄相は「枠を決めてからやっているからそうなる。虚心坦懐に工夫を重ねていく」と述べました。これは、2009年民主党マニフェストの一部完成形である沖縄に限った地方一括交付金が執行率100%にならないということは、民進党にとっても検討課題です。

 下地さんは101本法案に言及。「日系移民4世移住促進法案」(廃案、その前の議案番号は192参法113号) について、安倍首相は「私が南米に行くと、4世の人も、日本の総理大臣の話を聞きたいと遠くから目を輝かせて来てくれる。日本は憧れのようだ」とし、この法案に前向きな姿勢を示しました。

 良いムードばかりではなく、下地さんは、沖縄の、泡盛やオリオンビールなどの適用されてきた、税軽減措置が、まもなく提出される財政改正法案で、2年間延長となることに言及。これまで5年ごとに延長されてきた政策減税。すなわち1972年から5年ごとに延長されてきたから、2017年の今年に期限切れとなるのですが、この延長が2年間と幅を短縮されました。下地さんは「5年間ではなく2年間だと設備投資しづらいとの声がある。いっそのこと、廃止してもらってもよかった」と語りました。政府の答弁にはありませんでしたが、翁長知事率いる沖縄県を、自民党政府が2年後にビビらせる、ためにやったことは間違いなく、半世紀以上変わらない自民党の姿に、元自民党員の下地元大臣があきらめにも似て、達観しているような気がしました。私も同様。 

 あす午前9時から、基本的質疑3日目、テレビ無し。国会全体が小春日和から春眠暁を覚えず、となってくる時期です。

【参議院外交防衛委員会】

 来週、2月9日(木)に国際情勢に関する参考人質疑を行うことを決定しました。

 期日は未定ながら、防衛に関する委員派遣をすることも決定しました。

 日切れ法案や、大量の条約が今国会にかかることから、与野党の円満ムードを序盤に作ろうという、自民党側の姿勢が透けて見えます。

この記事の本文は以上です。

(C)2017  宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
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民法債権編(債権法)改正案が、衆議院予算委員会でも初めて俎上に、保証で、法務省と金融庁の見解に相違

2017年02月02日 17時43分11秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 衆議院法務委員会で継続調査扱いとなって、年を越した、「民法債権編(債権法)改正案」について、平成29年2017年2月2日(木)のNHK国会中継入りの衆議院予算委員会で取り上げられました。

 同法案の国会中継で議論は、おそらく初めてだと思われます。

 民進党の階猛さんが、「債権法の改正では、個人の連帯保証の見直しが大きなテーマだ」とし、安倍内閣の政策指針である「日本再興戦略には、担保に頼らない融資の拡大をうたっている」と語りました。安倍首相の方針と、法案の内容に齟齬があると指摘しました。

 金融庁の大臣である、麻生副総理が答弁し「金融行政としては、担保をとることに依存する銀行は、質屋と同じではないか」「取り引き企業の成長性をみて、第三者の連帯保証をしないよう、監督審査基準をつくって、銀行に示している」と語り、保証制度に懐疑的な従来からの姿勢を強調しました。
 
 階さんが法案と政府の姿勢が違うと指摘すると、金田法相が答弁。まず「昨年の臨時国会では32時間以上審議している」と語り、早期に採決してほしいとの思惑をみせながらも「臨時国会で、法務委員会での、階議員と私の議論の大部分は保証の件だったが、行政的な意味合いと、民事上の意味合いが違う。契約自由の原則は大事だが、ある程度の制約も必要だ」という趣旨の答弁をしました。

この記事の本文は以上です。

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