ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

労働者派遣法改悪法が成立

2015年09月11日 12時25分33秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 労働者派遣法改悪法(189閣法43号)は衆議院に回付され、平成27年2015年9月11日(金)の本会議で了承され、成立しました。今月30日(水)施行。

 回付案には珍しく討論となり、民主党、維新の党、共産党がおのおの登壇し、反対討論しました。

 1985年、男女雇用機会均等法に続いて成立した労働者派遣法の中核をなす、通訳、タイピストなど専門26業務が撤廃されます。どのような仕事も派遣社員にすることができます。

 2012年改正では労働災害死亡者が多かった「製造業日雇いスポット派遣」を禁止しました。そして、「違法派遣があった場合の見なし労働契約(見なし雇用とも言う)」のプログラム(手順)が2015年10月1日に発動されることになっていましたが、自民党政権での再改正により阻止されてしまいました。

 さらに問題なのは、一つの会社で、例えば経理部と総務部を行き来することで、大企業に20歳で就職した人が正社員と同じ仕事をしながら57歳まで派遣社員で働き雇い止めされる、という「生涯派遣で一生搾取、雇用の調整弁」になる可能性もあります。現代の奴隷です。

 有料職業紹介業、一般派遣業に続き、これまで「届け出制」だった特定派遣業も「許可制」になります。1年以上の派遣は「特定派遣」という大づかみな認識になります。ピンハネ率が高いと揶揄される派遣業ですが、実際には利益率は低い業種で、輸出メーカーに比べれば、10分の1程度の利益率しか見込めない業界です。

 これまで、駅前に「家政婦紹介所」「マネキン紹介所」との看板を出していた、地方の個人営業の派遣会社が、特定派遣の許可をとれず、身売りする可能性が高まっています。あくまでも法理上はパソナ一社だけが許可されることもありえるとはいえ、もちろん、そのような運用はないですが、今後、地方の家族経営の派遣会社が身売りし、派遣会社の集約が高まり、派遣先への発言力が高まるとともに、派遣登録者が今のように何社も登録することは現実的にできないことになるかもしれません。

 筆者・宮崎信行は、2年以上前の、平成25年2013年8月6日からその危険性を訴えてきました。

 [当ブログ内から抜粋引用はじめ]
自民党政府、労働者派遣法改正法案を第186通常国会に提出へ 「40条の2」再改正

2013年08月06日 14時11分05秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 自民党政府が、2014年1月召集の第186回(?)通常国会に、労働者派遣法(改正法案を提出する考えであることがわかりました。


 [当ブログ内から抜粋引用おわり]

 そして、労働政策審議会(労政審)の中間とりまとめを受けて、2013年8月21日付で、

キャリア女性1985年夏の敗戦 タイピスト、翻訳、通訳など労働者派遣法「専門26業種」廃止へ

を書きました。

 第186回通常国会では、一般質疑の段階から、派遣法について書きました。

内閣法制局部長が異例の暴露、「派遣は一時的な働き方だ」との答申「厚労省が法案から省く」 参・厚労委

 さらに、法案提出時の2014年3月23日付で、

◎自民党政府、労働者派遣法改正案を提出、生涯派遣で一生搾取の「リンカーン前米国」化の奴隷法案を許すな


 とし、「奴隷法案」とのレッテルを張りました。 

 ところが、罰則の経過措置を念のため書き込んだ附則で「懲役1年以下」が「懲役1年以上」と誤記された謎のミスが見つかり、廃案になりました。

「労働者派遣法改正案」が第186通常国会で廃案 民主党、「生涯ハケンで一生搾取」の奴隷化阻止

 自民党は、施行日を半年ずらした同じ条文を、秋の臨時国会にも出しました。

政府、労働者派遣法改正法案を再提出 今国会での成立不可避か 1文字直して施行日「来年4月」はそのまま


 秋の臨時国会では、審議入りしました。

リンカーン民主党だ 労働者派遣法改悪法案実質審議入りに民主党4人衆が猛攻、派遣会社「淘汰」も議題に



 ところが衆議院が解散され、廃案になりました。

 衆院選では、民主党がTVCMで「夢は正社員になること」。これに対して当初はサプライズがあったようですが、その通りだとの反応があり、労働市場をめぐる世代間の認識の違いなどが明らかになりました。



[画像]週刊金曜日2014年12月12日号、5ページ。

 しかし、第46回衆院選の民主党56議席、自民党294議席から、第47回衆院選で民主党72議席、自民党290議席となり、自民党政権が続いたため、最初の通常国会である第189回国会の会期末まで2週前に成立してしまいました。それでも「2014年10月1日施行」を3回の修正で「2015年9月30日施行」まで追い込むことができたのは、民主党のみならず、日本共産党、参議院社民党による死闘の成果です。

 正直、私個人もこの2年1カ月間に、労働者派遣法改悪阻止に関する記事を何十本書いたのか、把握できません。無念です。しかし、解散総選挙をはさんだうえでの成立ですから、正直、どうしようもない。

 私自身、会社員生活8年半のうち、半数以上の期間、左隣のデスクは派遣社員の女性でした。たしかに中には「30代後半で本業は声優、副業が新聞社、夜はスーパーでバイト」という人や、「CMソングを連想する言葉を聞くと突然踊って歌いだす」という人もいました。しかし、高校生のころバレーボール部の活動に熱心だったために就職活動に恵まれなかった有能で人柄の良い方もいらっしゃいました。その方は、職場内の異動でブランクをあけながら5年つとめました。株式会社日本経済新聞社は「マスコミかつ丸の内(大手町)」なので、派遣登録者にとっては耳あたりの良い職場だったようです。

 今後の展開としては、派遣を使い続ける「常用代替(じょうようだいたい)」の禁止、職種による賃金差別を禁じる「同一価値労働同一報酬(同一労働同一賃金)の原則」「均等均衡待遇」をめざす法改正マニフェストを民主党が打ち出すことになりそうです。

このエントリー記事の本文は以上です。

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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