「食」は人にとって"癒し"であり、"娯楽"といえるのではないか、とこの映画を観て思った。都会の繁華街の片隅にある深夜に営業するこじんまりとした食堂には様々な背景を背負った客たちが集う。寡黙な店主と客たちが織り成す喜怒哀楽が観ている我々にホッコリとしたほのぼの感を与えてくれる佳作だった。
2月27日(火)夜、かでる2・7において、北海道立道民活動センター(通称:かでる2・7)に事務所がある3機関(北海道立女性プラザ・北海道立市民活動推進センター・北海道立生涯学習推進センター)が主催する映画会があり友人と一緒に参加した。
上映された映画は、小林薫が食堂の主人として主演する「深夜食堂」(2015年制作)だった。
原作は漫画雑誌に掲載されたもので、その後テレビドラマ化されて評判を呼んだようである。コミックもテレビドラマも見ない私にはまったく初見のものだった。
食堂のメニューはトン汁定食とビール、酒、焼酎だけという簡素な食堂だが、頼まれて主人が作れるものであれば何でも作ってくれるという食堂には常連さんが多かった。
映画の中では、ナポリタン、とろろご飯、カレーライスが、その料理を作っている様子を印象的に写しながら、三つのエピソードが描かれていく。
いずれもが映画の舞台である下町にはよくありそうな恋話、無銭飲食、そして2011年の東日本大震災の話などを題材としながら、時にはユーモアも交えながら淡々と進行していく。
寡黙で客たちをじっと見守るような主人の店は客たちにとっては居心地がよく、常連さんたちは食を楽しみ、酒を楽しんでいる。そうした中に、なじみのない客が来ても味わい深い心温まる料理に癒されていく。
常連さんたちにとっては、深夜食堂「めしや」を訪れて食や酒を楽しむことは、きっと“癒し”のときであり、“娯楽”のときなんだと思わされた。
私も学生時代に、バイトの帰りによく定食屋さんで夕食を摂ったものだ。そこの主人とはすっかり顔馴染みとなり、主人と話すのを楽しみに定食屋に通ったものである。それは単にすきっ腹を満たすだけでなく、主人との会話を楽しみ、癒しを求めていたのだと思い出される。
映画は、主演の小林薫をはじめ、高岡早紀、多部未華子、余貴美子、筒井道隆、田中裕子、オダギリジョーといった実力派キャストがとても仕上がりの良い映画にしていたように思う。
映画は続編も制作されたと聞く。ぜひ続編を観たいと思った。