1979年3月にフルモデルチェンジしたシルビアともに登場した、その兄弟車「ガゼール」。
日本初という「ボンネットグラフィック」が、なんともアメリカンである。
「未来から大股でやってきた」というコピーが、仰々しくてよろしい。
実質、前回紹介した「シルビア」と同じクルマなのだが、このイメージスケッチは、確かに「かもしか」を彷彿とさせる。
兄弟車シルビアとの大きな相違点は、フロントグリルのデザインだった。
インパネのデザインは、非常に都会的でカッコよかった。
オーディオ等のスイッチ類やメーターの意匠は精緻な感覚に溢れていた。
当時のクルマのインパネでは、私はこのガゼール/シルビアのものが一番好きだった。
なんだかメーターやスイッチがたくさん付いているのが、まさに航空機を彷彿とさせ、素晴らしい。
そこが、当時小学生だった私のココロを、鷲掴みにしたのである。
足元を照らす照明関係が充実していたのも、このS110系の大きな特徴。
早く免許を取って、このクルマでナイトドライブを楽しみたいと、コドモの私は夢想していたものだ。
「スーパーサウンドシステム」は、いかにも音質が良さそうである。
この辺の仕立ても、このガゼールは、当時のクルマの中ではダントツに魅力的だった。
パワーウインドウやリヤセンターアームレスト等の快適装備にも、抜かりはない。
この手の装備は、当時はクラウンやセドリック等の高級車の装備だったものだ。
高性能・低燃費を謳う、「2プラグZエンジン」。
このクルマの非常に珍しい装備が、「エンジンルームランプ」である。
エンジンルームに照明が装備されたクルマを、私はこのクルマの他には知らない。
それは補助コードとフックが付いており、一定の場所に吊り下げておくことも可能な優れものなのだ。
そして、ドライブコンピュータという名の電卓がオプションで選べたのも目新しかった。
そもそもこの当時、私の家には電卓そのものが無かったのだから・・・
この当時は、MT車が主流。
5MTは全てのタイプで選べ、ニッサンマチックと呼ばれるATは3速であった。
装備は非常に充実していた。
なんとパワーアンテナが全車標準装備!
全長4400mm×全幅1680mm×全高1310mm。
ちなみに、現行ティーダ・ラティオのそれは4430mm×1695mm×1535mm。
昔のクルマの小ささに驚くと共に、ガゼールの背の低さは際立っていた。まさに、スペシャルティ。
ただ、シャシーはボディに対して貧弱だったようだ。
ボディとタイヤ間の隙間の大きさは、いかんともしがたい。
だが、免許を取った昭和の終わりに、このクルマを愛車に迎え入れるのも面白かっただろうと、私は未だに後悔しているのである。