獅子丸のモノローグ

☆気まぐれ不定期コラム☆

私が愛したクルマたち(7) ホンダ・アコードハッチバック(2代目)

2011年06月06日 | カタログ倉庫

 私の「クルマカタログ収集癖」が本格化したのは、1982年の夏休みからである。
 当時はまだ中学生で免許を持っていなかったため、せっせと自転車を漕ぎながら、クルマのディーラー巡りを敢行していたものだ。
 メーカーでいえば日産が好きで、主に収集していたのは日産車だった。だが、場数を踏むうちに他メーカーのカタログも収集するようになった。
 そして、日産以外のクルマで、最も感銘をうけたクルマ。それが、ホンダのアコードだった。

 
 2代目アコードのハッチバック。当時は1600ccと1800ccで、そのクラスのFF3ドア車の先駆的存在のクルマだった。

 
 「独創のワールド・クオリティ」。非常に国産車離れしたというか、欧州車的なオーラを放っていたこのクルマ。

 
 逆スラントのノーズは、当時のBMW6シリーズを彷彿とさせる。ヘッドランプ周りのモールのあしらい方も、気品に満ちている。ボディ外版の張りやプレスラインの質感が緻密な感じで、当時の国産車の域を越えているように見えた。

 
 ワイドトレッドの台形ボディは、当時としてはまさに世界基準。
 このクルマの美点は、メッキモールの使い方が上手かったことだ。決して華美でなく、キラリと光る宝石のような上品なアクセントとなっていた。
 
 
 この時代、1600~1800ccクラスの国産車は、FRが主流。FFであるということ自体が個性だった。
 当時はホンダとスバルがFF車作りの老舗であり、他メーカーはようやくFF化に取り組みはじめたという状況。
 この時このクラスで鳴り物入りで登場したのが、日産の「T11系」だった。だが、その作りの稚拙さは中学生だった私の目にも明らかで、このアコードと較べると、まさに「月とスッポン」といった感があった。

 
 FF&3ドアハッチならではのスペースユーティリティを謳うこのカタログ。当時としては、「新しい時代のクルマ」というイメージであった。
 今だったら、「なぜハッチがバンパーレベルから開かないんだ!」とか、「そもそも、なぜ5ドアじゃないんだ!」とか、注文を付けたくなるところかもしれないが・・・

 
 パワステの採用が早かったのも、この当時のアコードの大きなアドバンテージだった。
 この車速感応式のパワステは、パーキングスピードでは本当に軽かったらしい
 まだMT主流の当時のご時世にあって、一石を投じたのが、このホンダ独自のトランスミッションである「ホンダマチック」。
 通常のATとは違って自動変速はしないので、いわゆる「2ペダルMT」に近いものかもしれない。
 このトランスミッションにおいて、「Lレンジ」はMT車における「ロー~セカンド」・「☆レンジ」は同「サード~トップ」・「ODレンジ」が同「オーバートップ」を受け持つことになっており、このクルマを俊敏かつ効率よく走らせるには、そのシフトの切り替えが必要だったようだ。
 ちなみに「☆レンジ」のみで、発進から巡航までを受け持つことも物理的には可能だったようだが、トルコンの滑りのみで車速を調整するので、その走らせ方では加速も効率もかなり悪かった模様。
 この「ホンダマチック」。過去のMT時代から現在のAT時代に移行するまでの、過度期の産物だったといえましょう。

 
 着目すべきは、そのインテリアの質感の高さである。プラスチックの成形や色づかいが上手く、この当時のこのクラスの国産車としては、群を抜いて上質に見えた。

 
 肉厚な感じのシートは、その色調と相まって、温かみのある室内を演出している。

 
 運転席と助手席とでシートの形状を変えているなど、いちいち芸が細かいのが素晴らしい。
 ホンダの偉いところは、これを下級グレードから上級グレードまで、分け隔てなく採用したことだ。
 ドライビングの要素となりうる部分では、グレードによって差別をしない。そんなホンダのポリシーが感じられる。 

 
 さらにハッチバック全車に、電子制御式の「オートレベリングサスペンション」を採用していたのが、スゴイ。

 
 スイッチひとつで車高を30mm上げることができ、ダートや深い雪道でも悠々走破できるというその機構。
 まるで、シトローエンの「ハイドロニューマチック」を、油圧ではなく電子制御で行っているかのような、その脚!

 
 
 安全性への取り組みも、ぬかりはない。最上級グレードの「EX-T」には、4輪ディスクを奢る。
 現在では当たり前の安全装備であるABSやエアバッグが無いが、その当時の私はそういうアイテムの存在すら知らなかった。そんな時代背景である。ちなみにABSは、この年の年末に出た「2代目プレリュード」が国産車初装着だった。
 オイル&フィルターの交換時期やタイヤローテーションを促す「メンテナンスインジケータ」も装備。ま、そんなもんは本来自分で憶えておくべきなんでしょうが・・・
 「ドア毎絵表示式の半ドア警告灯」。これは、私のレガシィ2.0iにも装着されているが、子供が小さいうちは非常に実用上便利なアイテムだ。

 
 なんと、「クルーズコントロール」も、全グレード標準装備!
 さらには、当時先進の装備だった「エレクトロニックナビゲータ」は、燃費や平均車速等を表示できる優れモノ。これは1800シリーズにオプションで装着可能だった。

 
 
 1800シリーズのみに装着の「マイルドフローベンチレーション」が、またまた目新しい。
 インパネ全面に横一線に吹き出し口が配置されており、そこから吹き込むそよ風により、車内全体が高原のような爽やかさなのだという。ああ、私もその爽快さを味わってみたかった・・・
 ちなみに、この時代のクルマなので、エアコンは標準装着ではないことを申し添えておきましょう。
 

  
 室内装備も充実している。電子チューナー式の「VIVID SOUND SYSTEM」を筆頭に、「パワーウインドウ」「照明付グローブボックス」・・・
 リヤワイパーのスイッチをフロントワイパー操作レバーに同軸で配置しているのは、操作性の点で、細かいながらも見逃せないチャームポイント。当時、意外とこういうクルマは少なかったのである。

 
 そして、現代では過剰装備としか思えないアイテムが「照明付きヒューズボックス」である。
 この当時のクルマは、ヒューズが切れることが多かったのだろう。
 
 
 そして、ホンダらしい魅惑のアイテムが、この「電動スモークドガラス・サンルーフ」である。
 ちなみに、サンルーフを国産車で初めて採用したのは、「初代プレリュード」だった。
 プレリュードというクルマ、確かにその名の通り、いろいろな意味で「前奏曲」だったのだ。

 
 
 
 
 ボディカラーやインテリアカラーの組み合わせ表はこのカタログには載っていなかった。
 カタログで確認した限りでは、ボディカラーは「ライトブルー」「レッド」「イエロー」「シルバー」の4色。おそらくはこの他に「ホワイト」あたりもあったと思われる。
 そしてインテリアカラーは「ブルー」「ブラック」「ワインレッド」そして「ブラウン」の4色である。現在の国産車はインテリアカラーがあまり選べないが、このアコードのインテリアカラーは多彩だった。この点も、偉い。ワインレッドの内装は、個人的には選びたくないが・・・
 
 
 全長4210mm×全幅1650mm×全高1335mm。現代のアコードはアメリカを向き過ぎてデカくなってしまったが、アコードとは、本来このぐらいのサイズのクルマだったのだ。
 この当時のホンダ車は、やはり全高の低さが際立つ。それはなんとあの「アルシオーネ」と同じ数値なのだ・・・

 
 2代目アコードハッチバック。今思えば、非常に魅力的なクルマである。この記事を書きながら、私はこのクルマが欲しくなってしまった。
 なぜ若かりし頃の私は、コレを中古で購入しなかったのだろう・・・程度のいい5MT車が見つかったら、今、買ってもいいかも?

コメント (17)
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