『里山ビジネス』

玉村 豊男、2008、『里山ビジネス』、集英社 (集英社新書 448B)
まさか、この本を里山ビジネスのすすめという具合に読む人はないでしょうね。本書の帯は、そうした読書層を当てにしたメッセージを載せいている。いわく「一番効率の悪い里山で最も割りにあわないビジネスがなぜ成功したのか?」というキャッチをつけている。これは、著者の意図するところとは違っていると望みたいが、実際の所どうなんだろう。
著者は、本書の中で、矛盾点をいろいろ指摘している。たとえば、行政との関係。あるいは、自然の許容範囲とビジネスの規模。さらには、ビジネスに対する考え方。果たして、事業を拡大していこうというのか、それとも、とどまるのか。
本書では、その辺り、明示的ではないが、少なくとも、里山の環境とのバランスのとれたビジネスは、本書を読んで、里山でビジネスを始めようと思う読者がいたら、その時点で、日本全体の里山の環境とビジネスとは矛盾した状況に陥るだろう。つまり、里山ビジネスがペイすると考える人が増えれば、里山環境は崩壊するだろう。里山は人との関係によって成立している「フラジャイルな」(こわれやすい)環境なのだが、そうした中にビジネスチャンスが見いだされれば、全国の里山は崩壊する。
本書で触れられていて、とても大事なことは、サーリンズのいう「豊かさへの禅の道」にもにて、欲望をいかに肥大させないかという点にあると思うのだが、果たして、本書の帯の述べるようなキャッチは、どのように導こうとするのか。わたしは、里山ビジネスは新規参入は無理と読んだのだが、帯はそのようではない。想定する読者層が違うのだ。
著者は、既に著名な著作家で、彼がビジネスを始めることが、ビジネスを確立したのであって、だれもがそのような道をとりうべきこともあり得ない。だが、出版社は、そうした方向をキャッチーなトレンドとしようとする。これは、どうなんだろう。結局は、出版社の意向は、出版数のアップであって、里山の環境保全でもなんでもない。これでいいのだろうか?
著者はこうした著作の印税で自らの里山ビジネスを維持しようとする。周囲の環境への負荷をかけること(拡大再生産を行わない)のないように。そのようにするには、著者の著作家としてのキャリアを生かしていかねばならない。売るためには、環境を守ろうではなく、ビジネスプロモーションという方向を提示せねばならない(著者ではなく、出版社の問題なのかもしれないけれど)。こうした矛盾に満ちた状況にあたって、だれも、本当のところ(里山を巡る状況、じつは、よくわからないのだが)をもっと知ろうとする努力が大切なのではないだろうか。ビジネスの場と考えるのではなく。
まさか、この本を里山ビジネスのすすめという具合に読む人はないでしょうね。本書の帯は、そうした読書層を当てにしたメッセージを載せいている。いわく「一番効率の悪い里山で最も割りにあわないビジネスがなぜ成功したのか?」というキャッチをつけている。これは、著者の意図するところとは違っていると望みたいが、実際の所どうなんだろう。
著者は、本書の中で、矛盾点をいろいろ指摘している。たとえば、行政との関係。あるいは、自然の許容範囲とビジネスの規模。さらには、ビジネスに対する考え方。果たして、事業を拡大していこうというのか、それとも、とどまるのか。
本書では、その辺り、明示的ではないが、少なくとも、里山の環境とのバランスのとれたビジネスは、本書を読んで、里山でビジネスを始めようと思う読者がいたら、その時点で、日本全体の里山の環境とビジネスとは矛盾した状況に陥るだろう。つまり、里山ビジネスがペイすると考える人が増えれば、里山環境は崩壊するだろう。里山は人との関係によって成立している「フラジャイルな」(こわれやすい)環境なのだが、そうした中にビジネスチャンスが見いだされれば、全国の里山は崩壊する。
本書で触れられていて、とても大事なことは、サーリンズのいう「豊かさへの禅の道」にもにて、欲望をいかに肥大させないかという点にあると思うのだが、果たして、本書の帯の述べるようなキャッチは、どのように導こうとするのか。わたしは、里山ビジネスは新規参入は無理と読んだのだが、帯はそのようではない。想定する読者層が違うのだ。
著者は、既に著名な著作家で、彼がビジネスを始めることが、ビジネスを確立したのであって、だれもがそのような道をとりうべきこともあり得ない。だが、出版社は、そうした方向をキャッチーなトレンドとしようとする。これは、どうなんだろう。結局は、出版社の意向は、出版数のアップであって、里山の環境保全でもなんでもない。これでいいのだろうか?
著者はこうした著作の印税で自らの里山ビジネスを維持しようとする。周囲の環境への負荷をかけること(拡大再生産を行わない)のないように。そのようにするには、著者の著作家としてのキャリアを生かしていかねばならない。売るためには、環境を守ろうではなく、ビジネスプロモーションという方向を提示せねばならない(著者ではなく、出版社の問題なのかもしれないけれど)。こうした矛盾に満ちた状況にあたって、だれも、本当のところ(里山を巡る状況、じつは、よくわからないのだが)をもっと知ろうとする努力が大切なのではないだろうか。ビジネスの場と考えるのではなく。
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