『岩佐又兵衛:浮世絵をつくった男の謎』

辻 惟雄、2008、『岩佐又兵衛:浮世絵をつくった男の謎』(文春新書 629)、文藝春秋
「若冲の前に又兵衛が居た」などという売らんかなのキャッチーなふれこみで買って読んだ者が悪いのではあるが、若冲と又兵衛を並べるわけにはいかないと思う。もちろん、本書では又兵衛はあっても、若冲は登場しないのだが、マーケッティングのやり口なのだろう。ただ、若冲のインパクトにくらべると、又兵衛のそれは私にとっては、ずいぶん違う。どちらも、ある種のリアリズムとも見えるものだが、若冲は、孤独に一人で描き続けたのだが、又兵衛は早くも、工房システムを作り上げたようだ。その意味では、絵画史上では又兵衛の方が意味が大きいのだろう。
又兵衛自身の生い立ちからして、まさに、浮き世の転変そのものであろうか。信長によって虐殺された荒木村重の家族の中の生き残りで、戦国から江戸の時代を生き延び、武士を捨てて画業で生業をたて、さらに、「又兵衛」風の描画スタイルを確立し、福井と江戸を往復し、需要家の求めに応じて多くの作品を描く。江戸の最初期にこうしたライフスタイルを確立した又兵衛自身は興味深い。
「若冲の前に又兵衛が居た」などという売らんかなのキャッチーなふれこみで買って読んだ者が悪いのではあるが、若冲と又兵衛を並べるわけにはいかないと思う。もちろん、本書では又兵衛はあっても、若冲は登場しないのだが、マーケッティングのやり口なのだろう。ただ、若冲のインパクトにくらべると、又兵衛のそれは私にとっては、ずいぶん違う。どちらも、ある種のリアリズムとも見えるものだが、若冲は、孤独に一人で描き続けたのだが、又兵衛は早くも、工房システムを作り上げたようだ。その意味では、絵画史上では又兵衛の方が意味が大きいのだろう。
又兵衛自身の生い立ちからして、まさに、浮き世の転変そのものであろうか。信長によって虐殺された荒木村重の家族の中の生き残りで、戦国から江戸の時代を生き延び、武士を捨てて画業で生業をたて、さらに、「又兵衛」風の描画スタイルを確立し、福井と江戸を往復し、需要家の求めに応じて多くの作品を描く。江戸の最初期にこうしたライフスタイルを確立した又兵衛自身は興味深い。
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