第165回直木賞受賞作の本書、河鍋暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の物語連作。画鬼と呼ばれた暁斎や兄の暁雲にも及ばぬと感じるとよは明治の画壇の変化もあり暁斎はじめとした、江戸以来の日本画の各流派の中から次々と新しい流れが生まれているにも関わらず、彼女は画業を続けながらも頑なに父から教わった画法をまねぼうとするが、及ばないことを恥じてもいる。その彼女が村松梢風に暁斎について語り始めるまでを描く。
実在人物や歴史的な事件、風俗なども併せて興味深く読んだ。美人画が、明治の男性中心主義の中で生まれた流れだと知った。