随分前に映画「愛は静けさの中に」をみて、水中は健聴者にとっても音が聞こえず、対等の場であることを知って、感動した記憶がある。
本作は、母親役の女優マーリー・マトリン、父親役のトロイ・コッツァーは、初めての男性のろう者のオスカー受賞者という、役柄の上でも実際のろう者でもある両親役のもとで育ったCODA(Children Of Deaf Adults)であるルビーの物語。ろう者の両親のもとで育ったので、自身の発話が健聴者の両親のもとで育った同級生たちとは違うとからかわれて言葉を発することと歌うこと(自分自身では歌が大好き)にコンプレックスを抱いていた主人公、高校の音楽教師でバークレー音楽院卒業のV先生の指導の元、バークレーに合格して寮に出発するまでを描く。
一家はノースイーストの漁村の漁師の一家。漁師として代々稼業を続けるも、ろう者ゆえの差別や偏見、健聴者中心の社会のハンディキャップを受けている。CODAとしてそだてられたルビーはろう者の一家を支えていくことを自分の使命と考えている。しかし、V先生と出会い、目標を与えられた彼女が目覚めていく過程と同時にろう者の一家の闘いと彼女の送り出しまでのエピソードが素晴らしい。