『イタリア発イタリア着』(朝日文庫)
著者は学生の頃卒論のテーマでイタリア南部のトピックを選び、そのためにはイタリアに行かねばならないとナポリで1年の留学生活を送った。それをきっかけに、イタリア南部を中心に根を下ろし、やがては、北部のミラノやリグーリア州で過ごすようになった。本書は8つの章に編まれているのだが、それぞれの章には複数のセクションがあって、内容的にはそれぞれが単独の小編となっているように思う。もちろん著者の意図があって編まれているのだが、あいにく読者のセンスが悪いのか、なぜこの並びであるか、読み取れないこともあった。とはいえ、べつにそれは大きな問題ではない。小編は単独で読んでもまとまりがあるのだ。また、それぞれの章に配されているとはいえ、時系列に従っているわけでもない。したがって、小編を読者は勝手に並べ直して、著者のイタリア遍歴の流れを読み取ったような気もしている。