すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

初動から何を汲み取れるか

2007年09月07日 | 読書
 休日に立ち寄った書店で見慣れない言葉がある背表紙を見つけた。

 『感動の初動教育法』(田中真澄著 ばるす出版)

 手頃な厚みの本だったので購入して読んでみる。
 
 肝心の「初動教育法」の明確な定義は本文中に文章としてはでてこないが、読み終えて見直した表紙裏のスローガンが、その意味を表すといってもいいようだ。

 最初の授業に全力をつくす
 教育は、新学期の最初の日、夏・冬休み明けの始業式直後、週明け一時限目、毎朝出会いの瞬間に、どう授業を始めるかで教育効果は決まる

 著者の田中氏はヒューマンスキル研究所所長の肩書きを持つ、職業講演家ということである。
 本の内容は田中氏本人の実践ということではなく、親交のある小学校教諭平光雄氏の実践の紹介に多くのページが割かれている。

 教職歴が数年でもあれば、「最初が肝心」の重要さは誰しも自覚しているに違いない。その自覚をどう実行に写せるかが教師の力量の一部(かなり大きな部分を占めているように思うのだが)であることは間違いなく、その面で参考になる「紙芝居」(提示する絵資料)と「語り」が豊富に紹介されている。
 また、学童期の子どもがとらえやすい言葉を選んでキーワード化を図ったり、警句を「暗号」という形で提示したり、様々なアイデアにあふれている。
 
 こうした平氏に強く感心している田中氏は講演のプロとして次のことを書いている。

 人に話をする場合、最も重要なことは、聴き手に「この人の話は面白い」と感じさせることです。二番目が「ためになる話をする人です」なのです。決してこの逆ではありません。

 私も含めて教員の多くは「そうは言っても…」と言いたくなる言葉である。
 しかし効果的な教育実践の多くは、やはり「引き込むこと」いまふうに言えば「ツカミ」を抜きには成立していないようだ。この点はもっとアナウンスされていい。ツカミの手法は一時間だけでなく、一日、学期、年間の導入時それぞれの段階で、検討されるべきだと思う。

 その観点では極めてわかりやすく、真似てみたい気にさせられる実践が載っている本だったと言えよう。
 ただ「初動」と限定するには惜しいだけの豊富な要素が、この平氏にはあるように見えた。

 わがままを取り去ることが、この子たちの本当の幸せの道につながる

 そう述べる平氏本人が日々の中で子どもにどう声かけされているのか、そんなことも若い教員なら興味も湧くだろう。保護者へのアピールなども詳しいが、実際子どもにどんな学習技能を培っているのか、目標達成の意識化を継続させていくための具体的な工夫など、知ってみたいことが多く浮かんできた。

 そういう意味でもう一歩突っ込んだ内容の出版を期待したい。
 しかしまた、本書の内容から汲み取ろうとする読み方もあるだろう、それも教師の醍醐味ではないかなどという思いも同時に浮かんできた。