すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

痛快さを感じてみたい本

2007年09月08日 | 読書
 プロローグは次のように書き出されている。

 2006年9月30日。
 大森修氏が小学校長を退職するちょうど半年前。
 大森氏が校長を務める中野山小学校で公開研究会が行われた。全国から800人もの教師が集まった。

 急な私事があり、直前でやむを得ず断念した会だった。
 テーマや講師などの魅力もあったが、実は何より現役校長として最後の「大森節」を聞きたかったというのが本音であり、それが叶わなかったことが残念だった。

 せめて、この本でいくらか想像をたくましくして大森節を堪能してみたいと購読した。

 『特別支援教育をつくる管理職の全仕事術』(大森修・松野孝雄著 明治図書)

 大森氏と松野氏の共著ではなく、「聞き書き」という形で松野氏が大森氏の発言などをまとめているものである。そうはいってもいわば一番弟子と呼んでもよい松野氏であれば、本人が記す以上に大森節全開ではないだろうか…そんな予想はかなり当たった気がする。

 特にⅡ章の校内研修の組み方は読みごたえがあった。

 指導者にそこらへんの校長なんて呼んではいけない。授業を十年も二十年もしていない者にいったいどんな指導ができるというのだ

 多くの授業後の協議会では、司会が案(組み立て)の問題なのか、対応の問題なのか、整理できない。だから協議会などする意味がない

 気持ちいいほどのバッサリである。
 こうした大胆な発言は、明晰な頭脳、蓄えられた理論と確かな目によって形を成していることは間違いない。
 従って、非常に緻密な戦略を練ってしたたかに対応している場面も多い。Ⅳ章以降の「体制」「連携」「組織」といった点で随所に表れる。そのまま校長の現職教育論としても有効であろう。

 しかし、なんといっても惹かれる?大森氏の持ち味は、教委職員に対しても「お前じゃ話にならん」とか「何ならお前が来てやってみろ!」と叫びたてる過激な正論!である。読んでいるだけでも小気味いい。
 最後に、大森氏が式の話を嫌がるという実に人間らしい?エピソードが出てきたところも微笑ましい。

 結構堪能できた本であった。
(と、内容よりも痛快さに感じいっている読み方は問題ありか、と最後に自省)