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九十三歳の語りに触れて

2008年10月03日 | 読書
 『戦争絶滅へ、人間復活へ』(むのたけじ 岩波新書)を読む。

 インタビュー形式で語られているこの著書は、まとめ方も良かったのか今まで読んだものより読みやすく感じた。
 しかしその内容には、今まで自分が知りえていない戦争の現実も確かにある。
 特に従軍慰安婦を巡る場面など実に生々しく語られている。戦争という極限場面でみせる人間の性、それらは想像を絶する。果てしなく深く黒く…ただ、そういう歴史を直視する必要があることを、この今まであまり語られなかっただろう現実を読んで、思い知らされた。

 それに比して軽いとは言わないが、興味深いエピソードもいくつか散りばめられている。聞き手がいるよさなのかもしれない。

 意外なことに、五代目小さんのことが書かれてある。
 小さんは、2.26の反乱軍の中にいたという。むのは、小さんの落語について語っている。

 あざむかれた者の哀愁

 これは実に面白い。つい最近も車でCDを聴いたばかりで、そんな感覚で捉えている人がいることにも驚くし、大雑把に知っている小さんの人生ももう一度読み直したいと思うほどだ。

 最終章が「絶望のなかに希望がある」と題されて、地元秋田の中学生や高校生との出会いや仙台の小学生のことが書かれてある。
 むのがその出会いをある面で明るくとらえていることに、少し驚いた。物怖じせずダイレクトに訊いてくる、仲間を大切に思う…そうした場面に、新しい息吹を感じていると書く。

「憲法九条っ子」のような存在
 
 現実にそうした子を間近に見ている私たちは、問題のみに目が行きがちだか、むのが捉える大きな流れの中で垣間見える光だとすれば、もうちょっと私たちもそこに目を凝らしてもよくないか、そんな気にさせられる。
 そういう姿勢で向かうべきだと感じる。