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「ひとり」同士がふれ合う電車

2011年06月20日 | 雑記帳
 半年ぶりに映画をみた。

 『阪急電車 ~片道15分の奇跡~』 
 http://hankyudensha-movie.com/

 内容は地味であったが、なかなか染み入る映画だった。

 様々な悩みや苦労を抱える人間がいて、固く紐で縛られたようなその中味が少し解かれたような、緩くなったような、そんなストーリーなのだが、劇的な事件や展開があるわけではない。

 全国どこの鉄道沿線でも、もしかしたらあるかもしれない小さなドラマが結び付けられている、そんなところか。

 いじめにあっているらしい小学生の女の子が「誰か助けて」と呟き、そのまま「往路」と題された前半が終わってしまった。
 当然、そこに登場する誰かが関わって、問題解決する場面が「復路」に予想されたが、それはちょっと意外な形(いや、考えれば当然な形)でやってきた。

 駅の階段をホームへ降りてきたその女の子は、友人たちの言動に対して、強く立ち向かうのだ。それを見ていた中谷美紀扮する祥子がその後に声をかけ、その小学生は涙を見せる。
 「ああ、これは、励ます映画なのだ」と思った。

 悩みや苦しみを解決するのは本人の力以外にない。誰かが力を貸してくれたり、頼りになったりすることはあっても、結局は自分…そんなことを考える。そんな「ひとり」を励ますために、映画は作られた。

 たまたま読んでいた、『あたまのなかにある公園』(糸井重里)に、こんなフレーズがあった。

 ほんとにつらいときっていうのは、
 たいてい「ひとり」だし、ほとんどの人は
 その「ひとり」に耐えたことがあるんだよなぁ。


 そのフレーズにのっとれば、そういう「ひとり」を乗せた電車は毎日走っているし、その「ひとり」同士がふれ合うことは奇跡なんだよ、でも、たしかにあることなんだよ、と言っている映画だと思う。

 映画では悪役?にされた、関西のオバちゃんグループも、ひとりになればそれぞれの悩みを抱えていて、それをどこかで繕っていることを忘れてはいけない。