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世の中で一番悪いこと

2011年06月26日 | 読書
 「世の中で一番悪いことは何か?」

 こう問われたらなんと答えるか。

 もし子どもにこう訊かれたら、どんなふうに言うだろう。

 「人の命を奪うこと」…人殺し、殺人、そして戦争などいう言葉が浮かんでくる。

 こんな文章に出会って、おおっと思った。

 「順番を守らないことがこの世の中での一番大きな罪です。」

 『カバゴンの放課後楽校』(阿部進 新評論)の中の一節である。
 カバゴンこと阿部進が2008年に出したこの本は、昔ながらの「原っぱ」や「だがしや」を、なんとか今風に再現できないかと、「カバゴン夏楽校」という催しを、上州高山村で行った実践記録を中心に書かれている。

 独特の漢字の学び方、ダイナミックな科学実験などに加え、子どもたちが自分のお金で自由に駄菓子屋体験できる設定など、見事に「楽校」になっているなあと感じさせてくれる。

 文科省や厚生省が打ち出した「放課後」に関する政策が、どの程度成果を上げているのか、私には正直把握できないが、カバゴンがやっている、やろうとしていることは、かなり有益なモデルではないかと思う。地方にもそうした芽があるように思うが、自分たちの意識が向いていないことを少し反省させられた。

 さて、冒頭の「世の中で一番悪いこと」についての答は、カバゴンが、沖縄久米島にあるガジュマルの樹が植えられている墓地で、あるおばあさんから聞いたことである。
 ガジュマルの樹の左には、世間様に顔向けのできない犯罪者が入り、右にはもっと悪いことをした者が入るという。

 もっと悪いことは、ものの順序をたがえること。
 こんなふうにおばあさんは語った。

 それは親より先に死ぬことです。ものには順序があります。先に生まれた者は後から生まれた者よりも先に死ぬ。親は子どもより先に生まれ先に死ぬのが順序です。

 命をまっとうすることによって、あの世で親、子、孫、先祖と一緒に生きることができるという強い教えである。理屈抜きに響いてくる。

 命、その縦のつながりのなかに自分を見いだせるか。

 それはあまりに当たり前だから、時々立ち止らないと見過ごしてしまうことのようだ。