すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

誰かが「みとる」年の瀬

2012年12月24日 | 読書
 雑誌ブルータスがまた粋な特集をして,『文芸ブルータス』という号を出したのは,12月初めだった。
 http://www.zassi.net/detail.cgi?gouno=32599

 他の文庫本などもあったので,この三連休になってからようやく読み始めた。
 半分ぐらいは,一冊も読んだことのない作家たちだ。

 冒頭に掲載されている有川浩は,『阪急電車15分の奇跡』の原作者ということは知っていたが,映画を見ただけで小説は読んでいない。
 どんなものか,どれどれと読み始めたが,この『みとりねこ』がなかなか面白かった。

 犬や猫と一緒に暮らした経験もないし,おそらくこの後もないと思うのだが,動物好きでそういう経験をもっている人なら,これは泣けるんではないかなあという気がする。
 拾われた猫が,時期を同じくして生まれたその家の子どもの成長を見守り,その子の独り立ちの時に寿命を終えてしまう話だ。

 実は先月,私的な祝いの場でそれと似た物語があり,自らの感情を吐露した方がいた。
 私自身は様子こそ想像できてもぴんとこないし,ある面では可笑しみさえ覚えてしまったのだが,今この小説に重ねてみると,やはりジーンとくる話ではある。


 こんな言葉を,話者である「浩太(ねこ)」が語る。

 猫は訪れる摂理に逆らわない。

 この人間こそが,最終的に逆らえないと知りつつ,逆らおうとしてもがく者か。
 しかしある意味,そのもがきが文化となり,文明を作ってきたとも言える。
 どこまでそのもがきが続くのか,そんなふうに地球上の他の生物は見ているのかもしれない。「みとりナントカ」となって…。

 どうして,こんな壮大な結論になるんだ。
 年の瀬の感傷か。