すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

まるでカタログ本のようだったが

2013年04月19日 | 読書
 『伊集院静の流儀』(伊集院静 文春文庫)

 講談社の売れ筋を文春で真似するか、と思いながらも手に取った。
 帯には「新社会人必読!すぐに役立つ人になるな。」という文字が…。購読層のねらいはそこのあたりか。

 雑誌に掲載された短いエッセーと人生相談、広告の文章、そして対談、短編と、確かにこれは今風のつくりだなと感じる。

 たしかに「格好いい大人」の代名詞的存在である伊集院静が書き、語るフレーズは味わいがあるけれど、あまり細切れだと何かのカタログを見ているような気分になる。

 ああこんな雰囲気いいなあとか、この道具があれば楽しいだろうなあ…などと感じる時間と共通性があるようなないような…。

 ただ対談はバラエティに富んでいて、結構伊集院という人間の姿をいろいろな方向から見られて興味深い。対話する人によって柔軟に語り口を変える、しなやかさも魅力の一つに加わった。

 「親方と神様」という短編は読んだことがあった。
 いかにも新社会人向けの設定ではあるが、それを意図して書かれたものではないだろう。
 仕事と人生の結びつきの強さを感じさせてくれるいい物語だ。

 この掌篇に魅力を感ずるとすれば伊集院文学の読者になれるだろう。
 などと、書いてみれば「文春文庫」の宣伝のようになってしまう。

 こんなふうに思考させることが編集部のねらいだったか。

 文春文庫で出ている12冊のうち、10冊は読んでいるので、自分もずいぶんと貢献している。