すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

仕舞いの言葉が耳に残る

2015年06月15日 | 読書
 【2015読了】55冊目 ★
 『雪国の絵本 子ども・生活・遊び』(ほった圭 無明舎出版)


 特徴のあるイラストに惹かれて購入した。私より9歳ほど年配の隣市に住む元学校事務をされていた方の画文集である。内容は帯にあるように「昭和20~30年代・子ども遊び図鑑」と言っていいだろう。懐かしい!と久々に思い出したこともあれば、しみじみと感ずるものも多い。高度成長が始まる少し前、貧乏や冬の寒さの中で子どもたちは生き生きしていた。


 全国どこでもポピュラーな遊びだったと思うが、「カンけり」はよくやった。近所に広い空地はなかったが、ちょっとしたスペースや路上で繰り返し繰り返し遊んだ記憶がある。どんなふうに止めるか、ということをこの絵本が思い出させてくれた。どこかの家の夕食の匂いがしてきて、誰かの声で「飯(まま)できだど―」と聞こえたときが終了の合図だった。


 その年の初雪に一年生が窓の外を見て「ばんざあい」と叫んだことがあった。自分にもそんな時期があったはずだが、その感情は遠くなっている。この本に挙げられた「雪玉割り」「竹すべり」「ドフラ」「シャカジキ」…と10を超す遊びの世界が広がることを考えると、まさに雪の訪れは喜びでしかない。雪の遊びの仕舞いの言葉は「ううっ、さび(寒い)」だった。


 幼少の頃から温厚だった(笑)ので、取っ組み合いや諍いが頻繁だった記憶はない。しかしこの言葉を見たとき(何十年ぶり、おそらく五十年以上ではないか)、自分も確かに、何度となく言い放っている台詞であることを確信した。「オメどなば、あど遊ばね」…こう言ったが、翌日もしくは数日後にはまた同じ遊びをする。生の感情を発しあう潔さがあった。