すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

こころ、素直さ、柔らかさ

2019年06月29日 | 読書
 たまたま観たTVドキュメンタリーに映っていたのは、噺家柳家小三治だった。何気なく眺めていたら、「これはね、極意とも言えるんだが…」と切り出した。会話する場面で声色をあまり使い分けないのが小三治の特徴でもあるが、その点についいて、「声色じゃなくてね、その人の心になるんだよ」と、淡々と語った。


2019読了65
 『暦のたしなみ』(小笠原敬承斎  ワニブックスPLUS新書)


 ここ数年、暦や歳時記には敏感だったのに、今年は「夏至」に気づいたのが当日の夕方だった。朝から明るいのは不眠症気味の自分に苦痛だったので、知らず知らずにそうした興味を封印していたのかな。二十四節気・七十二候を身体で感じる暮らしをするには、知識だけでは軽すぎるか。ちなみに今は「菖蒲華」の候。


 著者は「小笠原流礼法」の初の女性宗家。一般にもよく知られている「しきたり・年中行事」等が網羅されて、わかりやすく紹介されている。こうした類ではよく語られることだが、結局は「かたち」ではなく「こころ」だと力説する。ただ「こころ」とは「かたち」を知り沿おうという素直さも含まれると痛感した。



2019読了66
 『死ねば宇宙の塵芥』(曽野綾子・近藤誠  宝島社新書)


 「こころ」の強いお二人の対談。病気、医療、死生観など主張の厳しい方々なので、まさに言いたい放題が続く感じである。ふだんの生活自体が贅沢になったことで、昔は苦しまなくてもよいことに苦しんでいる人間の姿や、医療という名のもとに薬漬け等にされている現状が、ずいぶんと手厳しく批判されている。


 「毎日毎日、やることがあるのが最高のアンチエイジング」と語る二人の共通する死生観は、書名が語っているように思うが、同時に迷いも包み隠さず喋る。曽野は「わからないから、あの世は『ある』ほうに賭けることにしています」近藤は「最後の拠りどころとして神様が出てくる可能性はある」こころは柔らかい。