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桜と絵本と豆乳と

10年前の、せつない気持ち。から

2020年10月07日 | 雑記帳
 雑誌ブームの時期はいつだったか。それとは関係なしに結構購読し、かなり量が膨らんだ。何度か処分はしたが、気になった号は残してある。何気なく書棚へ手を伸ばした一冊を取ってみた。『BRUTUS』(マガジンハウス)だ。表紙にある特集名にはこんな句が…。「せつない気持ち。」おうっ…2010年11月号である。

 ただ「哀しい」でも「寂しい」でもない、
 「せつない気持ち」は複雑だ。

 と、特集の趣旨を書きだしているが、時代は「韓流ブーム」の頃でその辺りが起点になっているようだ。「せつない韓流スターBEST10」というページもあり、わずかに知っている数人の俳優も載っていた。関心がないので、それより茂木健一郎、内田樹、柴田元幸らの文章に今さらながら見るべき内容があり嬉しかった。


 茂木が紹介した認知実験の結果に納得した。「ある対象物があり、その背景にさまざまなノイズになるものを置いて対象物を見るとき、日本人と欧米人の間には、パフォーマンスに明らかな差が出る」とある。つまり日本人は「背景も含めて対象物を見」るが、欧米人は「対象物だけを見て背景を無視」する傾向がある。


 これは我が国における様々な出来事、事件等にコメントする欧米人の見方の核心と言えよう。意識的にコントロールできる領域は個人だとする認識をなかなか徹底できない点は日本人として認めざるを得ない。ただ複雑な絡み合いの結果に今があるという捉え方は、「論理的な帰結でもある」という考えに頷いてしまう。


 10.7今朝の散歩で見つけた蝉の抜け殻、せつない

 だから「せつない」という言葉を人が心底から吐くとき、そこに運命として受けとめる覚悟が芽生えている。この雑誌が発刊された半年後にこの国を襲う大震災時には多くの人が、そこまでもたどり着けない状況に陥った。そこから今は「せつなさ」まで立ち直った方々がいるに違いない。それはまだずっと継続中だ。


 奈良美智の絵を添え「セツナイ33」と題し、映画、文学、音楽等の例が33挙げられている。もちろん選者によって好み?はあろうが、自分にもいくつか馴染み深いものがある。今の関わりだと絵本だ。唯一選ばれたのが『100万回生きたねこ』。そういえばこの絵本に「かなしい」という語は一度も使われていない。

 あっ、そのことは明日。