すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

これもまた『ものは言いよう』

2020年10月26日 | 読書
 ヨシタケシンスケとの出会いが『りんごかもしれない』だったことは前に書いた。今までの絵本とは一味違う、そのスタイルが好きになって、意識的に取り上げてきた。通常の読み聞かせはしにくいが、やはりその考え方が刺激的なので、つい手を伸ばしてしまう。昨年末に出版されたこの本を読み理解が深まった。

『ものは言いよう』(ヨシタケシンスケ・MOE編集部 白泉社)



 いうなれば「ヨシタケシンスケ読本」である。1章「まるごとヨシタケシンスケ」のQ&Aに始まり、小さい頃から現在に至る細かな点までいわゆるヨシタケワールドで表現されている。2章からは絵本の紹介、製作にかかわる「ひみつ」や、家族、影響を受けた本等々、かなり細密だが読ませるのは編集の上手さだ。


 タイトルは、ヨシタケの座右の銘と答えている慣用句だ。「物事は言いようによってどうにでも聞こえる」という意味だが、これは詳しくいうと二つの要素がある。「見方(視点)の違い」と「言い方(表現)の違い」だ。妄想力(いや想像力か)に長けたヨシタケが、独特の描き方で物事に対するのだから、面白くなる。


 さて、「物は言いよう」と対になった同義の句「事は言いなし」があることを初めて知った。「言いなし」は「言いなす」の名詞形だ。「なかだち・とりなし」もあるが、「もっともらしく言う。言いこしらえる」という意味であり実はあまり印象がよくない。思いつくのは、どこかの国の政権の姿。私だけではないだろう。


 間違っても政治ネタや外交ネタは題材にしそうにないヨシタケだけれど、独特の「言いよう」で、そんな作品も見たい気がする。代表作のタイトルだけ並べても、十分に基本として通用しそうだから。『ふまんがあります』『それしかないわけないでしょう』『みえるとか、みえないとか』それから『ころべばいいのに』(笑)