第5 精神障害の悪化と症状安定後の新たな発病
1 精神障害の悪化とその業務起因性
精神障害を発病して治療が必要な状態にある者は、一般に、病的状態に起因
した思考から自責的・自罰的になり、ささいな心理的負荷に過大に反応する
ため、悪化の原因は必ずしも大きな心理的負荷によるものとは限らないこと、
また、自然経過によって悪化する過程においてたまたま業務による心理的
負荷が重なっていたにすぎない場合もあることから、業務起因性が認められ
ない精神障害の悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認めら
れても、直ちにそれが当該悪化の原因であると判断することはできない。
ただし、別表1の特別な出来事があり、その後おおむね6か月以内に対象疾病
が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合には、当該特別
な出来事による心理的負荷が悪化の原因であると推認し、悪化した部分につい
て業務起因性を認める。
また、特別な出来事がなくとも、悪化の前に業務による強い心理的負荷が認め
られる場合には、当該業務による強い心理的負荷、本人の個体側要因(悪化前
の精神障害の状況)と業務以外の心理的負荷、悪化の態様やこれに至る経緯
(悪化後の症状やその程度、出来事と悪化との近接性、発病から悪化までの
期間など)等を十分に検討し、業務による強い心理的負荷によって精神障害が
自然経過を超えて著しく悪化したものと精神医学的に判断されるときには、
悪化した部分について業務起因性を認める。
なお、既存の精神障害が悪化したといえるか否かについては、個別事案ごと
に医学専門家による判断が必要である。
――コメント――
旧認定基準の内容を変更し、特別な出来事に該当する出来事がなくとも、悪化の前
に業務による強い心理的負荷が認められる事案について、十分な検討の上で、業務
起因性を認める場合があることが示されました。
その際、業務起因性が認められない精神障害について、その悪化の前に強い心理的
負荷となる業務による出来事が認められても、直ちにそれが当該悪化の原因である
と判断することはできないとする考え方は旧認定基準と同様であり、悪化の前に
業務による強い心理的負荷が認められる場合には、業務による強い心理的負荷に
よって精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したものと精神医学的に判断される
か否かについて、認定基準に記載された考慮要素を踏まえ、十分に検討することが
必要であるとされています。
なお、認定基準第5の1にいう「治療が必要な状態」とは、実際に治療が行われて
いるものに限らず、医学的にその状態にあると判断されるものを含むものである
とされています。
今日の過去問は「雇保法H27-3-C」です。
【 問 題 】
広域延長措置に基づき所定給付日数を超えて基本手当の支給を
受けることができる者が厚生労働大臣が指定する地域に住所
又は居所を変更した場合、引き続き当該措置に基づき所定給付
日数を超えて基本手当を受給することができる。
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【 解 説 】
広域延長給付の対象となっている者が他の地域に住所又は居所を
変更した場合であっても、それが厚生労働大臣が指定する地域で
あれば、引き続き広域延長給付を受けることができます。 正しい。