「池上彰の新聞勉強術」(ダイヤモンド社・2006年)の中に、こんな箇所があります。
「読売、朝日、毎日、産経などの新聞は『全国紙』と呼ばれます。そこで、全国の読者がいる新聞だと思いがちですが、実体は『大都市新聞』なのです。つまり、主な読者は大都市とその周辺の住民に限られるのです。
朝日、毎日、読売は、それでも全国に取材網を張り巡らしていますが、産経となりますと、全国をカバーしているとは言えません。産経の読者は、首都圏と関西圏だけに限られます。全国の人に読まれている新聞ではないのです。」(p40)
産経新聞を購読して、注意を要するのは、池上彰氏の指摘なのですね。
つまり、産経は「全国の人に読まれている新聞ではない」ということ。
ついつい、皆さんが読んでいると購読者の私は勘違いしていることがあります。
さて、それでは本題。
9月27日の産経新聞一面は、コラムや広告を除き、全体のスペースの三分の一をタンカー・テロについての署名記事(湯浅博)で埋めておりました。写真は大型タンカー「高鈴」。そして、ペルシャ湾周辺の地図などです。
こんなふうに始まります。
「・・ペルシャ湾からはるばるインド洋の波涛(はとう)を越えて、原油を日本に運んでくる。原油の9割を中東に依存する日本の命綱の一つであることはいうまでもない。それが電力をはじめとして日本経済を支え、クルマを自在に走らせている。」
具体的なタンカーを襲う自爆テロの例を、ここで紹介しております。
「英ペルシャ湾派遣艦ノーフォークの作戦日記によれば、2004年4月24日、石油積み出しターミナルが小型の高速ボートによる自爆攻撃の標的になった。ターミナルの損害は軽微だったが、係留中だった『高鈴』が危機に直面した。多国籍軍の艦艇が、ターミナルに接近中の不審な高速ボート3隻を発見し、銃撃戦になった。うち1隻の高速ボートは『高鈴』の手前数百㍍で大爆発を起こし、その金属の破片や遺体の一部がタンカーの甲板に降り注いだという。・・・・タンカーは船体を銃弾でえぐられ、鉄製ドアが吹き飛ばされただけで済んだ。しかし、この自爆テロで、多国籍軍のうち米海軍兵2人と沿岸警備隊員1人が死亡した。・・その数日後、国際テロ組織アルカーイダに関係するザルカウィ容疑者の犯行声明が出た。彼らはタンカーを狙えば原油価格が高騰し、西側の主要国が耐えられなくなると信じている。ペルシャ湾内には『高鈴』を運航する日本郵船を含め、日本関連のタンカーだけで常時40~50隻がひしめいている。日本郵船の安全環境グループ長、関根博さんは『多国籍軍が警戒していなければ、とてもバスラ沖には近づけない』と語る。」
本文の真ん中は、湯浅博氏の取材した重要な箇所なのですが、ここは直接に新聞を読んでもらうこと期待して、この文の最後を引用します。
「いまも『高鈴』は26日現在、海自艦が警戒するインド洋の北側、アラビア海を西に向かって航行している。数日後にはそのペルシャ湾に入ることになるだろう。・・関根博さんは、テロ特措法がなくなって日本のタンカーが無防備になることをもっとも恐れる。『タンカーは危険地域でも行かねばならない。ペルシャ湾内もできれば海自艦に守ってほしいがそれができないからインド洋で補給活動をしていると理解している』国際社会でテロ、侵略、恫喝(どうかつ)をなくすことは不可能に近い。日本という有力国が一国の勝手な都合だけで脱落することは、他に危険と負担をツケ回すことに等しい。」
ちなみに、同じ日の9月27日読売新聞一面はミャンマー軍事政権の記事と写真。見出しは「デモに発砲3人死亡」でした。
全国では読まれていないという産経新聞の一面署名記事を、今日は引用してみたというわけです。せめて、「民意」と総称される、その中のお一人に届け。そして、産経のこの署名記事を読み返す人が何人かでもいれば。そう思いながら引用してみました。
追記。日経新聞の9月13日一面コラム「春秋」を読めました。
そこには、安倍首相の辞任会見が紹介されておりました。
こんな箇所があったのです。
「約二十分間の短い記者会見の中で、首相が繰り返した文言が三つある。
『テロとの戦い』と『改革』がそれぞれ五回。・・・
もっとも多く六回も発した単語は『局面』だった。
責務を果たすのが難しい局面を打開し、転換し、変えるために辞任する。
そんな理由を縷々(るる)説明した。」
うん。「テロとの戦い」・・「局面を打開」を首相は繰り返していたのですね。
辞任によって、このメッセージは届いたでしょうか?
すくなくとも、私には届きました。
「読売、朝日、毎日、産経などの新聞は『全国紙』と呼ばれます。そこで、全国の読者がいる新聞だと思いがちですが、実体は『大都市新聞』なのです。つまり、主な読者は大都市とその周辺の住民に限られるのです。
朝日、毎日、読売は、それでも全国に取材網を張り巡らしていますが、産経となりますと、全国をカバーしているとは言えません。産経の読者は、首都圏と関西圏だけに限られます。全国の人に読まれている新聞ではないのです。」(p40)
産経新聞を購読して、注意を要するのは、池上彰氏の指摘なのですね。
つまり、産経は「全国の人に読まれている新聞ではない」ということ。
ついつい、皆さんが読んでいると購読者の私は勘違いしていることがあります。
さて、それでは本題。
9月27日の産経新聞一面は、コラムや広告を除き、全体のスペースの三分の一をタンカー・テロについての署名記事(湯浅博)で埋めておりました。写真は大型タンカー「高鈴」。そして、ペルシャ湾周辺の地図などです。
こんなふうに始まります。
「・・ペルシャ湾からはるばるインド洋の波涛(はとう)を越えて、原油を日本に運んでくる。原油の9割を中東に依存する日本の命綱の一つであることはいうまでもない。それが電力をはじめとして日本経済を支え、クルマを自在に走らせている。」
具体的なタンカーを襲う自爆テロの例を、ここで紹介しております。
「英ペルシャ湾派遣艦ノーフォークの作戦日記によれば、2004年4月24日、石油積み出しターミナルが小型の高速ボートによる自爆攻撃の標的になった。ターミナルの損害は軽微だったが、係留中だった『高鈴』が危機に直面した。多国籍軍の艦艇が、ターミナルに接近中の不審な高速ボート3隻を発見し、銃撃戦になった。うち1隻の高速ボートは『高鈴』の手前数百㍍で大爆発を起こし、その金属の破片や遺体の一部がタンカーの甲板に降り注いだという。・・・・タンカーは船体を銃弾でえぐられ、鉄製ドアが吹き飛ばされただけで済んだ。しかし、この自爆テロで、多国籍軍のうち米海軍兵2人と沿岸警備隊員1人が死亡した。・・その数日後、国際テロ組織アルカーイダに関係するザルカウィ容疑者の犯行声明が出た。彼らはタンカーを狙えば原油価格が高騰し、西側の主要国が耐えられなくなると信じている。ペルシャ湾内には『高鈴』を運航する日本郵船を含め、日本関連のタンカーだけで常時40~50隻がひしめいている。日本郵船の安全環境グループ長、関根博さんは『多国籍軍が警戒していなければ、とてもバスラ沖には近づけない』と語る。」
本文の真ん中は、湯浅博氏の取材した重要な箇所なのですが、ここは直接に新聞を読んでもらうこと期待して、この文の最後を引用します。
「いまも『高鈴』は26日現在、海自艦が警戒するインド洋の北側、アラビア海を西に向かって航行している。数日後にはそのペルシャ湾に入ることになるだろう。・・関根博さんは、テロ特措法がなくなって日本のタンカーが無防備になることをもっとも恐れる。『タンカーは危険地域でも行かねばならない。ペルシャ湾内もできれば海自艦に守ってほしいがそれができないからインド洋で補給活動をしていると理解している』国際社会でテロ、侵略、恫喝(どうかつ)をなくすことは不可能に近い。日本という有力国が一国の勝手な都合だけで脱落することは、他に危険と負担をツケ回すことに等しい。」
ちなみに、同じ日の9月27日読売新聞一面はミャンマー軍事政権の記事と写真。見出しは「デモに発砲3人死亡」でした。
全国では読まれていないという産経新聞の一面署名記事を、今日は引用してみたというわけです。せめて、「民意」と総称される、その中のお一人に届け。そして、産経のこの署名記事を読み返す人が何人かでもいれば。そう思いながら引用してみました。
追記。日経新聞の9月13日一面コラム「春秋」を読めました。
そこには、安倍首相の辞任会見が紹介されておりました。
こんな箇所があったのです。
「約二十分間の短い記者会見の中で、首相が繰り返した文言が三つある。
『テロとの戦い』と『改革』がそれぞれ五回。・・・
もっとも多く六回も発した単語は『局面』だった。
責務を果たすのが難しい局面を打開し、転換し、変えるために辞任する。
そんな理由を縷々(るる)説明した。」
うん。「テロとの戦い」・・「局面を打開」を首相は繰り返していたのですね。
辞任によって、このメッセージは届いたでしょうか?
すくなくとも、私には届きました。