和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ゴルフとかは。

2007-11-01 | Weblog
守屋武昌・前防衛次官に対する証人喚問の詳報を読みました(読売新聞2007年10月30日)。いろいろな見方があるでしょうが、私には肉声が聞けて何か安心感がありました。それについて語ってみたと思います。

養老孟司著「こまった人」(中公新書)に「参拝問題」と題した小文があります。
そこで養老さんがこんなことを指摘しておりました。

「医者を強く告発する人間が医者になったら、はたしていい医者になるか。私はそれを信じない。根本的には、必要なときに他を信じない人間に、生産的なことができるはずがないと思うからである。小泉首相はべつに『特別な人』ではない。『ただの人』である。ただの人が首相という特別な地位に置かれたとき、どう行動するか。そろそろそれを、民主主義国家である以上は、一般市民も『身につまされて』考えるべきであろう。あなただって、首相になるかもしれないですからね。記事を書いたり報道したりする人たちは、その意味ではしばしば他に対する責任を感じないで済む人たちである。『俺はそこまで偉くない』と、自分で思っているからであろう。メディアの根本にあるのは、そのことだと思う。その文脈でなら、メディアの報道より靖国に参拝する小泉のほうを私は信用する。少なくとも『国民のために犠牲になった』人たちに対する小泉個人の思いが、そこには素直に見える。・・」(p73~74)

守屋前防衛次官が「どう行動するか」。証人喚問で、その肉声に私はほっとしたのです。ここにはとても崇高さはないけども、「率直に見え」たのです。たとえば、

「倫理規程があるのはよく承知していた。ただ、私のポストが上がるにつれ、昼の仕事のストレスがたまり、週末にストレスを解消したいという思いがあった。仲間や部下を連れて行くと気を使うので、長年の友達関係だった宮崎氏を頼ってしまった。私が人間として甘かった。やってはならないことをしてしまった。」

これは、ゴルフ接待について語っているのでしょう。
うん。これならわかる。善悪は置いといて、これなら私にも理解できそうです。
こんな答弁もありました。

「ゴルフ場の正規料金は承知していない。(宮崎氏から)『我々社員は1万円で(プレーを)できるから、1万円でいい』と言われた。ただ、その料金では普通の人はできないわけで、不適切であり、配慮に欠いた行為だった。」

私は自分がゴルフなどはやったこともない類いの人間なものでして、
ただ、ストレスとゴルフということでは、
最近読んだ本のことが思い浮かんだのでした。
城山三郎・高山文彦対談「日本人への遺言」(講談社)。
そこで、夢の話があるのですが、私は印象に残っていたのです。

【城山】まあでも、『落日燃ゆ』にしても『指揮官たちの特攻』にしてもどっちも書くのはつらかったね。よく夢を見たし。そういう意味では、今はハッピーですよ(笑)。ハッピーっていうと変だけど、夢を見ないで済む。書いている最中はよく夢にうなされてね。
・・・・・・
逆に言えば、そのテーマを夢に見るほど考えこまなくてはいけないということだね。
【高山】そこまで考えているから、なかなか眠れないんでしょうね、床に入っても頭が冴えて。
・・・不眠症になったのはいつ頃からですか。
【城山】やっぱり作家になってからだね。学生時代にヒロポンをやっていたせいもあるかもしれないけど、今度は睡眠薬をいくら飲んでも寝られなくなった。3種類くらい飲んでも効かないし、それをアルコールと一緒に飲むからだんだんおかしくなって。薬が変に効いたのか、やたらと高いところへ登るわけよ。ベッドの上やタンスの上へ上がったり、しまいには鴨居でこんなふうにぶら下がっている。もう家内が恐慌状態になっちゃって。で、国立第一病院に入院させられたわけ。・・・身体がこう軽くなって軽くなって、テーブルの上に上がったり、鴨居と柱にこうして蜘蛛みたいにぶら下がったり(笑)。・・・
【高山】それで病院の先生に、適度の運動が必要だからゴルフを勧められたわけですか。
【城山】・・・名医だったね。『あなたの身体は眠るという機能をすっかり忘れている』と。だから週に一回、ゴルフとは言わなかったけど、外に出る遊びを作りなさいと言われてね。『外に出て運動する日を作りなさい。そうすれば身体が疲れて、その晩は眠れる。そうすると身体は眠るという機能を思い出す。その機能は1週間続く。でも、1週間経ったら身体は忘れるから、週一回は必ずやりなさい』と言うんだ。そしたら、ゴルフしかないじゃない。で、薬も何も飲まないで週に一回ゴルフを始めたら、1週間眠れた。だから1週間に一回必ずゴルフをした。それまでさんざんゴルフの悪口を言っていたのに、しょうがないね。でもあれは名医だよ。普通は薬を出したがるでしょ。あのとき彼にそう言われなかったら、今頃生きていないんじゃない?いつか鴨居から落っこちたりしてさ(笑)。
                  p144~p154


なぜこんなことを書いているかといいますと、
守屋氏の証人喚問のなかで、宮崎氏の名前が出てきた。
週刊新潮11月1日号に、その宮崎元伸氏の特別手記を読んでいたからでした。

それにしても、たとえば閣僚の自殺があったりなどすると、
城山さんの「今頃生きていないんじゃない?」が
リアルに伝わってくるじゃありませんか?
養老さんの言うところの
「他に対する責任を感じないで済む人たちである」マスコミの喧騒のなかで、
こうして「ただの人」の肉声を聞けると、ようやく考える端緒をつかんだようで、
私などほっとするのでした。
たとえ、結論には、いつたどり着けるかわからなくとも、
ここから、考えをはじめれば、よいのだなという出発点を確認できたような。
そんな安堵感を持ちます。



コメント
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