和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

手書き。

2007-11-08 | Weblog
「直筆で読む『坊っちやん』」(集英社新書ビジュアル版)を読むと、他の人がどのように言っているのかが、気になりました。そうするうちに、読売新聞の11月5日「編集手帳」が、この本を取り上げていたのでした。そこから引用してみます。

「・・・刊行され、話題を呼んでいる。原稿用紙の文字が、縦のまっすぐな中心線を軸とするようにすっきりと垂直に並んでいる。漱石の実直な性格の表れなどといった指摘もある。人間の脳はパソコンで文章を作る時よりペンで書く時の方が、はるかに活発に働く。脳科学者の川島隆太東北大教授は、実験データを基にそう主張している。」
「・・とは言え、漱石の『坊っちゃん』の自筆原稿を読んでいると、ペンの動きが生み出す文章のリズムがあることに気づく。・・・」


思い浮かぶのは、清水義範著「大人のための文章教室」(講談社現代新書)でした。そのはじめの方で、はやばやと清水氏は「この文章教室で最初に導き出される文章のコツは、心をこめたい文章は手書きにすべし、である。」(p19)と示しておりました。
はじまりでは、「手紙と、依頼書との間は、微妙な違いがあって」として具体的に語っております。「<本誌何月号のこういう特集の中に、関連するエッセイを四百時詰め原稿用紙四枚、何月何日を締め切りとして執筆していただきたい>という依頼書は、ワープロで打たれたものであることが多い。ところが、<我社も小説の出版に力を入れていくことになり、ついては、一度お目にかかって、ご尽力をいただくことが可能かどうか、また、ご構想中のものがあるのかなど、うかがいたく思います。追って電話を入れさせていただきます>という内容の通信文は、手書きであることが多いのだ(もちろん例外はあるが)。」(p13)

ちなみに、新書「自筆で読む『坊っちやん』」の最初で秋山豊氏が「ちなみに、現在入手が可能な『坊っちやん』のテキストのうち、もっとも原稿に忠実なものは、この新版『漱石全集』を元に本文を確定した、岩波少年文庫版『坊っちやん』(2002年刊)である。現代仮名遣いであったり、漢字を開いたりなどの表記替えはあるが、ことばや文章は原稿どおりになっている。」(p18)と指摘しておりました。それもあったので、さっそく岩波少年文庫の「坊っちゃん」を開いてみました。後書きの解説の場所には、奥本大三郎氏が書いていて読み甲斐がありました。
本文はというと、それが、おかしなもので原稿どおりという文が、かえって読みにくい感じをあたえられました。かえって「自筆原稿」のほうが読みやすいと思えてしまうのは、一読の妙なのでしょうか。自筆の味わいが、掛け替えのない魅力と感じてくるのでした。不思議なものです。あるいは少年文庫の方には、漢字にこまめに振り仮名をふってあるために読みにくく感じるためかもしれません。


ところで、11月1日から年賀葉書が発売になっております。
そういえば、年賀はがきでも、印刷された絵や文字に、ひとこと手書きで書き添えておられる方がいますね。私は、少ない年賀はがきでも、もっぱら印刷ですませるタイプ。ちょっと心を入れ替えてよいのかもしれませんが、例年どおりかなあ。
コメント
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