和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

寒満月。

2008-01-17 | Weblog
中村草田男句集「長子」を読み、草田男の他の句集を読んでみたくなりました。ということで、「定本中村草田男全句集」(集英社)というのが、とりあえず手に入りましたのでチャレンジ。これ昭和42年刊とあります。この本には、以降の句集「美田」「時機(とき)」は含まれておりません。ですが、私がまず読むには手頃だと思いましたので、一応目を通してみました。ということで、印象に残った句を並べていきたいと思います。

いまは冬ですから、それにまつわる句を引用したいのですが、
それは後回しにして、とりあえず初対面の全句集の手ごたえという収穫がありましたので、それから。
蝉というのが、句集に散見しました。まずは蝉の句から。

  永久(とは)に生きたし女の聲と蝉の音と    p238

  今への恋情蝉聲櫛の歯と繁し          p323

  回想自ら密度に誇り法師蝉           p331

  幼きをみな蜩どきの縞模様           p364

  国の勢ひは山々へ退き蝉の寺          p366

  空からきらきら雀の涙か蝉の尿(しと)か    p398

  行きつぐ一里ひぐらしの刻早や過ぎぬ      p246

  山頂の丘や上なき蝉の聲            p220

  鳴く蝉は海へ落つる日独り負ひ         p170

  会へば兄弟(はらから)ひぐらしの聲林立す   p60



 
  文字知らざりし頃の鳴聲青蛙          p390


  冬の蝿ちりあそぶごと吾子の詩句        p292


  文字の上意味の上をば冬の蝿          p331


それでは、冬についての句で、私が気になったのは冬空でした。


  深雪降らしていま憩ふ空月と星         p385

  父母未生以前とは祖国寒満月          p213

  寒風に未来を問ふな臍(へそ)に聞け      p224

  寒くたのし鋏切る音針落つ音          p167

  冬富士や背中かゆくて吾子恋し         p148

  息白しいつまで残る明星ぞ           p145

  非力者を嗤ひし人に天(そら)寒し       p134

  机上冬父も欲りしは湧く力           p127

  群鷗に暮れ寒星の乱れなく           p99

  青空に寒風おのれはためけり          p66

  寒星の数を琴の音爪追ひに           p65

  負うて行く銀河や左右(さう)へ翼なす     p224


気になった句

 病友に文缺きて何の月の詩ぞ           p199

 坂の上(へ)ゆ夏雲もなき一つ松         p73

 馬多き渋谷の師走吾子と佇つ           p81

 年頭の灯台白しと報(つ)げやらむ        p97

 年頭の灯台白きを見て足りぬ           p97

 道の木に柿実るあり道遠し            p179

 寒の暁(あけ)ツイーンツイーンと子の寝息    p226

 響爽かいだだきますといふ言葉          p244 


私には、はじめて読む草田男体験というのが、ありました。たのしかった。
こういう時は、とりあえず記録しておくに限りますよね。
残りの句集も読んでみたくなりました。
コメント
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