和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ひとの手。

2012-01-13 | 短文紹介
「花森安治のデザイン」(暮しの手帖社)の表紙絵。その絵の隙間に、小さく「『暮しの手帖』創刊から30年間の手仕事」とある。この本の「おわりに」で大橋鎭子さんは、書いておりました。


「花森さんは、つねづね二つのことを言っておられました。
一つは、『暮しと結びついた美しさがほんとうの美しさ』だということ。表紙やカット、写真撮影も、特別なものでなく、いつも身近なものを題材に使われました。実用的な生活用品すべてに美を見出されていたのです。
もう一つは、人の手からつくられるものの美しさです。『手仕事』から培われる美意識を大切にしておられました。最後の号の原稿が『人間の手について』であるのも、なにか花森さんの遺言のような気がいたします。
そんな思いから生まれた、花森安治のデザインの仕事を通して、その美しさと、根底に流れる『暮し』と結びついた美しさを改めて感じ取っていただけましたら幸いです。」

ちなみに、『人間の手について』は
雑誌「暮しの手帖」1978年第2世紀52号に掲載されておりました。
また、
KAWADE夢ムック「花森安治」
保存版Ⅲ「暮しの手帖 花森安治」
でも、手軽に読むことができました。

ちなみに、「花森安治のデザイン」の「おわりに」で大橋さんは
こうも書いておりました。

「花森さんの机には、いつも物差しと三角定規、配色表、たくさんの筆記具が用途によって整えられていました。一ダースものえんぴつを毎日きれいに削るのは、妹の芳子の仕事でした。」

そして、そのすぐつぎに、こうあったのでした。

「表紙は、その号の編集があらかた終わった頃に、『今日は、表紙を描くぞ』と宣言して、小さな部屋に入って描かれるのでした。表紙は、その雑誌の顔、商品ですからその点も考え合わせて、ずいぶん苦しまれたと思います。途中で見ることは絶対禁止。みんなで息を呑むように待っていますと・・・・」


ついつい関連で、買えそうな古本を注文すると、
当たりはずれがあるのは仕方ないですね。
朝日選書23「朝日新聞社編 わが思索わが風土」も
つい買った一冊。ここに「一本のペン」と題して花森安治の16ページの文が掲載されておりまして、これは、読んでよかった。機会があれば、再読します。

最後に、「人間の手について」から引用。

「ぼくの知っている家庭では、幼稚園ぐらいから、こどもに、ナイフを持たせています。鉛筆を削らせたり、台所でじゃがいもや、にんじんを切らせたりしています。・・・道具をつかうのは、人間の手です。あるいは、人間の目や、耳や、鼻といった感覚です。こういった感覚は、訓練すればするほど、鋭くなっていきます。」

うん。「道具をつかうのは、人間の手です」。
私の今年の方位目標(こんな目標が、わたしには合っていそうです)といたします。

コメント
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