和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

親友記。

2018-03-03 | 道しるべ
私は、千葉県在住です。
ということで、
新聞(3月2日)に、平成30年度後期の
「千葉県公立高校入試問題と解答」がありました。

私は、試験嫌いですから(笑)。
こういうのは、当然に敬遠するのですが、
国語問題の最初の例文が、気になりました。

足立巻一著「親友記」から引用された文。

珍しく、その例文を読んでしまいました。
この試験問題を作成された方に感謝したくなります。
うん。素敵な文でした。
試験に、こういう例文を出すという
手腕をお持ちの出題者がいらっしゃる。
というだけで、うれしくなります。

さっそく、
本棚から、古本で購入してあった
足立巻一著「親友記」(新潮社)を
とりだしてくる。

ここには、試験問題の例文とは別に、
本の「あとがき」を引用しておきます。
はじまりは

「わたしは血縁に薄かったけれども、
その代わりにとでもいうように良い師友に恵まれた。
生きがたい世に、
とにかく七十歳を越えることができたのも、
その師友のおかげである。」

真ん中をカットして

「思えば、わたしはそれぞれの時期において
相交わった少なからぬ師友の人生を、
こうして・・一連の作品の流れのなかに書きこめてきた。
それはまた、自分自身の歴史を、生を告白することでもあった。
そうしてどうやらわたしは終点にたどりついたらしい。
この『親友記』はその終点にあたる作品のつもりである。
・・・・・」


貴重な例文に感謝したい気持になります。
試験場で、この文章に触れる生徒を思い描きます。
ですが、ここには出題の例文は引用しません(笑)。


ちなみに、出題の例文を調べると、
本「親友記」の第二章「熱風」から、引用されておりました。
第二章の前半部。それも、
第二章の最初の2~3頁はカットされて、
そのかわりに、囲い込みの五行でもって、出題者が、
かいつまんで、例文までの状況を説明しております。
それも、行き届いた配慮で、例文内容にすぐ引き入れられました。
足立巻一氏の、ゆったりとした文の流れが、
試験問題という枠を踏み越えて、私には、輝いて見えました。


たしか、小林秀雄対談(岡潔との対談)に、
みんなが、答えを出すことばかり考えていて、
どんな問題を出すかを考えない。本当は、
どんな問題を出すかが重要なのに。
というような言葉があったのを思い出します。

コメント
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