和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

何年か間隔をおいて読む。

2018-05-08 | 古典
丸谷才一著「思考のレッスン」を再読すると、
レッスン3(思考の準備)こんな箇所。

「自分が読んだ本で、
『これは大事だ』という本がありますね。
あるいは、一冊の本の中で、
『ここは大事だ』という章がある。
そういうものは、何度も読むことが大切ですね。
繰り返して読んだり、
あるいは何年か間隔をおいて読む。」(p135)


うん。「何年か間隔をおいて読む。」
というのが曲者で(笑)、
そのほとんどが、読み返さずに、
本の在処も忘れてしまう。

今回何年かぶりに読み返して、
ああ、そういうことかと合点したことがありました。

本のはじまりの方に、鶴岡出身の丸谷さんが
こう指摘しているのでした。

「たとえば、鶴岡は、江戸から明治にかけて、
全国に誇ることのできる二冊の名著を生んでいます。

一つは、元禄時代に書かれた『徂徠先生答問録』。
これは、鶴岡の侍である水野弥兵衛と疋田族の二人が、
荻生徂徠に質問状を出して、それに徂徠が答えたものを
まとめた本です。漢文じゃないから読みやすいし、
徂徠のものの考え方がとてもよくわかる素晴らしい本です。
ずいぶんいろんな質問をしてるんだけど、
それが実にいいんだなあ。・・・・
薄い本ですが、徂徠のエッセンスがつまっている。
読んでいて、荻生徂徠その人と
直接会って話を聞くような、気持のいい本です。」(p30)


はい。この「思考のレッスン」は
インタビューに答えてゆくかたちで進みます。
丸谷才一氏は、この本を現代版の
「徂徠先生答問録」とする心構えで臨んでいることが
今回読み返していて、思い浮かんできました。

レッスン3(思考の準備)に

「忘れてはならないものが、もう一つあります。
学者の書いた回想録、自伝、伝記、インタビュー、
これはその人のものの考え方がはっきりと出ることがあって、
とても参考になります。・・・」(p125)

「インタビューは、概してわかりやすいし、
ちょっとした言葉の中に深い意味が込められていて、
とても刺激的なんですね。
レヴィ=ストロースの『遠近の回想』という自叙伝も、
たしかインタビュー形式でした。
レヴィ=ストロースのお父さんは、売れない絵描きだったのね。
お父さんがキュビズムの絵を初めて見て帰ってきて、
家族にその話をしたんだって。
幼いレヴィ=ストロースはそれを聞いて興奮して、
これがキュビズムというものだろうという絵を
自分で想像してパステルで描いたというんです。

これを読んだとき・・・感心した。
そう言えば、彼の発想にはどこか絵画的なところがあるでしょう。
『生のものと火にかけたもの』とかいう例の分類など、
イメージがくっきりしていて油絵みたいな感じがする。
・・・・」(~p126)


うん。
以前に読んだときは、
もっと、他にも大事なことが
話されていると思えて、そちらへと私の興味が
いっていたのでした(笑)。




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