谷川俊太郎といえば、
ぼくは、まず詩集の題名が思い浮かびます。
その題名が「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」。
はい。この題名だと、
なんでも、綴れるように思えてくる
不思議な呪文のような言葉です。
ということで、詩よりも、どちらかというと、
わたしは詩集の題名が印象に残っておりました。
さてっと、
河合隼雄対談集「あなたが子どもだったころ」(楡出版)。
そこに谷川俊太郎との対談もありました。
そのはじまりに、こうあります。
谷川】 ・・・前にね、ぼくは子どものころに
母が死ぬのが怖くて・・・夜、一人で寝ていて、
茶の間に母がいるかどうかすごく心配になることがあった。
河合】 それは初めて聞きます。うんうん、
これで話のいとぐちが出てきた(笑)。
谷川】 ぼくは離れた座敷に一人で寝てんですけど、
なかなか寝つかれないんです。
うちの中はしーんとしている。
一つ部屋を隔てたところに茶の間があって、
母はいつも夜おそくまで起きて
繕い物かなんかしてるんだけども、
そのとき、ふいにそこに母がいるかいないか
ってすごく心配になってくるんです。
河合】 それでどうしました?
谷川】 寝床を抜け出して、
明かりがついている茶の間の障子を
そうっと開けてのぞくんです。
それで、母親がいると安心して
また寝るんですが、それを
今でもすごく鮮明に覚えていますね。
はい。この対談は、ここからが
肝心なのですが、ここまでにします(笑)。
肝心なことは、とかく抜け落ちて、
それは暗やみに吸い込まれる。
そこから、「二十億光年」へ思いを馳せる。
「夜中。茶の間にぼくは母がいるのを確かめたかった」
という鮮明な記憶が、時がたち、
いつのまにか詩人の中で、
「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」
と昇華されたとしても
なんら不思議はないなあと、
「僕は思わずくしやみをした」。
ぼくは、まず詩集の題名が思い浮かびます。
その題名が「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」。
はい。この題名だと、
なんでも、綴れるように思えてくる
不思議な呪文のような言葉です。
ということで、詩よりも、どちらかというと、
わたしは詩集の題名が印象に残っておりました。
さてっと、
河合隼雄対談集「あなたが子どもだったころ」(楡出版)。
そこに谷川俊太郎との対談もありました。
そのはじまりに、こうあります。
谷川】 ・・・前にね、ぼくは子どものころに
母が死ぬのが怖くて・・・夜、一人で寝ていて、
茶の間に母がいるかどうかすごく心配になることがあった。
河合】 それは初めて聞きます。うんうん、
これで話のいとぐちが出てきた(笑)。
谷川】 ぼくは離れた座敷に一人で寝てんですけど、
なかなか寝つかれないんです。
うちの中はしーんとしている。
一つ部屋を隔てたところに茶の間があって、
母はいつも夜おそくまで起きて
繕い物かなんかしてるんだけども、
そのとき、ふいにそこに母がいるかいないか
ってすごく心配になってくるんです。
河合】 それでどうしました?
谷川】 寝床を抜け出して、
明かりがついている茶の間の障子を
そうっと開けてのぞくんです。
それで、母親がいると安心して
また寝るんですが、それを
今でもすごく鮮明に覚えていますね。
はい。この対談は、ここからが
肝心なのですが、ここまでにします(笑)。
肝心なことは、とかく抜け落ちて、
それは暗やみに吸い込まれる。
そこから、「二十億光年」へ思いを馳せる。
「夜中。茶の間にぼくは母がいるのを確かめたかった」
という鮮明な記憶が、時がたち、
いつのまにか詩人の中で、
「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」
と昇華されたとしても
なんら不思議はないなあと、
「僕は思わずくしやみをした」。