和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

歯痛と詩痛。

2019-01-13 | 詩歌
昨日の晩に泊りがけの来客。
そうです。連休です(笑)。
うん。家で楽しくビールが飲める。
と思っていたら、残念。

こちらへ来る前に、
歯医者の予約があって、寄ってきたとのこと。
お酒を飲めないどころか、
食事もままならない。という(笑)。

しかたない。楽しみにしていたお酒を
遠慮してこちらも頂かないことに。

う~ん。その余韻が今日になっても残る。

そういえば、歯痛をとりあげた詩が
たしか、田村隆一の詩集にあったはずだと、

 河出書房新社の田村隆一詩集を本棚から

 「詩集1946~1976」「詩集1977~1986」

この2冊を出してくる(ちなみに、全詩集は未購入)。


はい。気晴らしにパラパラとめくる。

「おれの耳のなかで
 歯科医の機械針が電気ドリルのような
 ひびきをたてた」

というのは、詩集「緑の思想」のなかの
詩「秋津」のはじまりの3行。
詩集「死後」の詩「夜間飛行」の始まりは

 はげしい歯痛に耐えるために
 高等数学に熱中する初老の男のエピソードが
 「魔の山」という小説のなかにあったっけ
 そして主人公の「単純な」青年の葉巻は
 マリア・マンチーニ

 どうして葉巻の名前なんか
 ぼくはおぼえているのだ 三十三年まえに
   読んだドイツの翻訳小説なのに
 ぼくも歯痛をこらえながら詩を書いてきた
 歯痛に耐えるためにと云うべきかもしれない
  ・・・・歯痛には
 いつも新鮮な味とひびきがあって
 生れたときから何回も経験してきたくせに
 この痛みの新鮮さに
 いつもぼくは驚かされる
 
 ・・・・・


はい。これは「詩集1946~1976」から引用。
「詩集1977~1986」にはそのまま
「歯」と題した詩がありました。詩集「五分前」から。

   歯
 
 歯の痛み
 痛みのない歯もある
 ある日 その歯がポロッと
 とれるときがある

 歯は茶褐色になっていて
 その色に感謝しなければならない

 その色を見ていると
 歯をかみしめた味 くいしばった味が
 ぼくには
 見えてくるのだ
 歯のおかげで
 ぼくらは養ってもらってきたのだ
 その歯が
 ある日 ポロッとぬけたとき
 痛みのない痛みに
 ぼくは痛みを感じるのさ

 あの痛み


はい。短いので、つい詩全文を引用しました。
もう最後にしましょう。詩集「ワインレッドの夏至」
にある詩「今日の午後は」のはじまりの4行

 歯痛
 というのはいつも新鮮で
 その痛みを幼年期から経験しているくせに
 痛みが去ったあとはきれいに忘れてしまう


さてさて、お客さんは、もう一晩泊まるのでした。
今晩は、私だけお酒を飲みながら、
この田村隆一の詩を朗読しましょうか(笑)。

「この痛みの新鮮さに いつもぼくは驚かされる」
という箇所は数度繰り返してもいいなあ。



追記
けっきょくお酒を飲まず。
それでもって、
詩を朗読せずでした(笑)。
14日午前中来客帰る。

コメント
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