和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

言葉だけを信用してはいけません。

2019-07-26 | 本棚並べ
梅棹忠夫著「知的生産の技術」(岩波新書)の最後に、
もし文庫解説のような解説がつくとしたら?


うん。私は迷わず、桑原武夫の文をいれるだろうなあ。
そう、思える桑原武夫の文を読みました(笑)。

「新・わたしの知的生産の技術」(講談社・1982年)。
いろいろな方の語りが掲載されておりまして、
その最初に桑原武夫氏の文がありました。
うん。これだけを読めば、『知的生産』が何なのか
わかります(笑)。

はい。適宜引用。

「知的生産の材料とは何でしょうか。
それはいうまでもなく情報です。
情報を全然もたないで知的生産はできない。」(p11)

「マスコミだけで情報が確実で十分かというとそうではない。
・・・・露骨な例でいえば、
田中角栄の金脈問題をどの新聞が書きましたか。
『文藝春秋』が書くまで、どの大新聞社も書こうとしなかった。
もちろん知っていたと思います。しかし、まず、
小資本のところにやらせておいて、見極めがついてから、
それに乗ろうという算段でしょう。
政府と密接な関係を持っているNHK、
資本の支配下にある民放もこういう情報は遠慮する。
新聞にもテレビにも載らないことがいっぱいある。」

「知的生産をしようとする場合、
特別の情報を持とうと努力しなければ
独創的な考えは出てきません。
他人さまに聞いた話をくり返しているだけでは
知的生産にはなりません。・・・・
少なくとも情報の交錯が必要です。・・・
知的生産ということは何らかのもつれあい、
あるいは矛盾からでなければ出てこないと思います。」


「言葉にだまされてはいけません。
いつでも言葉より現実を尊重するように
しなければ知的生産にはなりません。

例えば、ネール首相の生きていたころ、
日本の新聞はインドを『平和国家』といっていました
・・ネールさんがインドは平和国家だと宣伝するのは
自由ですが、それに外国人が乗ってしまうなら阿呆ですね。
阿呆は知的生産に適しません。

私は一カ月ほど、インドを歩いて・・・・
アジアで航空母艦を持っていたのはインドだけです。
そしてこれを活字にしたのは日本人では私が初めてです。

ネール首相が世界に向かって他国への軍隊の駐留を
やめよと演説して大喝采を博したのですが、この時
インドはネパールとブータンに軍隊を駐屯させていたはずです。
言葉だけを信用してはいけません。」

「すぐには解けない。しかし、嘆かわしいといっているだけで
解答を志さないようでは知的生産にならない。」

「人間の偉さというのは、
現実を正確に認識したうえで、
これを超えていつまで理想を保持しうるか
ということにかかっていると思います。

フランスというと自由、平等の祖国といわれますが、
・・・いまいちばんどぎついナショナリズムで
世界の市場を席捲しようと頑張っているのがフランスです。
海外輸出はすでに西ドイツを抜きました。
その輸出品の最大のものが兵器です。
自由、平等、友愛の祖国、
小意気でお洒落なパリ娘、
これがフランスだと思っていたら間違いです。」


うん。こうして引用をしていると、
30~40年ほど前の文章をテキストにしてるのに、
今現在の、オレオレ詐欺に引っかからないための、
高度な講習をうけているような、そんな気分(笑)。

そうそう、
「桑原武夫紀行文集」全3巻(河出書房)が
古本で1200円(送料別)で出ておりました。
うん。わたしの夏の読書はこれにします(笑)。

コメント
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