和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

20歳で花守り。堀宗凡さん。

2023-01-17 | 本棚並べ
堀宗凡さんのことは、入江敦彦著「読む京都」に登場します。
入江さんは、二度出会っておりました。ここには、二度目の
場面を引用することに。

「 一ヶ月ほどのち、こんどは昼下がりだったが彼を見かけたとき、

 『 こないだは失礼しました。偉いお茶の先生やと母に教わりました。
   こんど会ったら、ちゃんとご挨拶するよう叱られました  』

  というと 『 ほな、うちおいでやす 』 と・・・
  
  それは多分わたしが体験する初めての本物のお点前だったが、
  その水が流れるような自然美におおいに胸をうたれた。

 『 お兄さんは、なんにもお作法をご存知ない言わはりましたけど、
   お見事でしたえ。作法を引き出すのは亭主の責任。
   お客が不調法なんは主人が無能やのえ 』

  帰る間際、堀宗凡は『 うち、こないだ本出してもろてん 』
  と件の『 茶花遊心 』をわたしに手渡し、
  『 また、いつでも遊びに来よし 』と誘ってくれた。

  直後から仕事が猛烈に忙しくなって、それきり
  堀との付き合いが途絶えたことを未だ後悔している。   」

     ( p98 入江敦彦著「読む京都」本の雑誌社・2018年 )


この入江さんの本に『 茶花遊心 』を紹介した箇所があります。

「 いまのところ読んだ限りで矛盾に満ちた京と茶の命題を
  もっとも緻密に解き明かした本は堀宗凡の『茶花遊心』である。

  本書には、もてなす気持ちがまるで一斉に花を開いた
  春の野原みたいに揺れている。70、80年代の京を代表する
  数寄者として知られた堀の一冊きりの、しかし400ページに
  及ぶ茶道家としての仕事の集大成だ。 」 ( p97 )

ちなみに、入江敦彦著「読む京都」の最後の方に
「 京都本の10冊 」が列挙されており、そこにも『茶花遊心』が 
選ばれております。そこには、

『 長らく修道した裏千家を離れ、
  独自の茶道に生きた≪ 最後の数寄者 ≫堀宗凡。
  稀なる茶人の花と和歌と人生の記録 』 ( p217 )

 こうもありました。

『 ・・・
  こちら側で身じろぎもせず
  京という水際立った水瓶に花を活けようとしたひともいた。
  それが堀宗凡なる茶人だ。

  彼の著書《 茶花遊心 》はその記録。収録された
  図版を眺めていると、まず思い浮かぶのは矜持という概念である。』(p222)


ちなみに、写真集でも見かけることができます。
私の好きな写真集に、中村勝・文で甲斐扶佐義・写真の
「ほんやら洞と歩く京都いきあたりばったり」(淡交社・2000年)があり、
その中に登場しておりました。
この写真集は主に商店街のご夫婦を写したりしながら、京都を歩いている
子供も、猫も、僧侶も、さまざまに登場しておりました。そこのp105に
古本屋の店先で本をひらいている姿が写っておりました。写真の下には

「河原町通三条下ルの古書籍の店先で、茶人の堀宗凡さん。さまざまな
 ファッションで河原町通を散歩する姿は有名だった(1979年撮影) 」

小さくプロフィールもありました。

【堀宗凡】 大正3年、京の料理屋に生まれる。
      幼い頃から花に魅せられ
     『 ききょう咲く陽あたりのよい土地少しあるならば 』
      と、20歳で花守りの人生が始まる。
      その間、裏千家14世淡々斎に師事。
      58歳より独自の茶道に生きる。 ・・・  


う~ん。写真集の中村勝さんの文も引用しておかなきゃいけないかな。

「 着流しの和服の上にマントのようなものを引っかけて、
  さりげなく古本屋の前に立つ姿はどこかカメラを意識
  しているようにも見える。

  粋な人といえば、この人も非凡なファッションセンスで、
  町を行く人たちの目を止めた。堀宗凡という有名な茶人だ
  ということは、ずっと後で知ったが、
  数年前まで河原町通をまさに闊歩していた。

  ときには、つばの広い帽子の女装であったり、
  ウエディングドレスのようなファッションで
  歩いていたのを見た人もいる。

  下鴨の自宅から葵橋を渡って、河原町通を四条辺りまで
  下って行くのが定番コース。途中、出町の西田運送店に
  立ち寄って先代の主人の話し相手になっていたという。
  ・・・・                      」  


それよりも、写真の『 茶花遊心 』をひらく楽しみ。
古書ですが、時々ネットの「日本の古本屋」で出ます。
いま、ちょうど検索すると、ちょい高いけど一冊ある。


  
  
コメント (6)
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