おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「落語鑑賞教室」その15。春風亭一之輔「子別れ(子は鎹=かすがい)」。そして「処暑」。

2021-08-28 20:47:55 | 落語の世界

             「夏の神保町まつり 一之輔一門会」より。

                    

                   

      楽屋話ばかりで本題に入らないので、師匠に怒られる。 

師匠登場。人情話の中でも笑いと涙で聞かせる「子別れ」を。

枕で弟子達の話をからめ、先代師匠の話から、師匠として弟子のかわいさを淡々と思い出話風に語り出します。

「子別れ」初代春風亭柳枝創作落語で、3代目麗々亭柳橋4代目柳家小さんの手を経て磨かれた人情噺の大ネタです。

上は「強飯の女郎買い」、下は「子はかすがい(鎹)」の名で呼ばれることがあります。一之輔師匠は、この下の部分を。「大酒飲みが下では酒を断って改心したのか、どうも分からない、」とか、ぼそぼそつぶやきながら。

上。熊五郎は腕のいい大工だが酒好きなのが玉に瑕。ある日、泥酔して帰ってくると妻のお光に向かって女郎の惚気話まで始めてしまい、夫婦げんかの末にお光は一人息子の亀を連れて家を出てしまう。

中。熊はお光と離縁して女郎を身請けし、一緒に暮らし始めるが、彼女は一切の家事をせず、朝から酒を飲んでは寝てばかり。結局他所に男を作って出ていってしまう。

そして下。家から出て行った親子と別れてから3年。熊は酒を断って心を入れ替え、懸命になって働いたおかげでなんとか身を持ち直し、親方の身分に。

 ある日、熊五郎はお店(たな)の番頭と茶室に使う木口を木場へ見に行く。途中で前の花魁の悪妻女房のお島、その前の亀吉の母親の良妻賢母のお徳の話や、亀吉が好きだったまんじゅうの話などする。

 話ながら歩いていると番頭が亀吉が歩いてくるのを見つける。熊五郎は番頭を先に行かせ亀吉に話かける。

熊五郎 「今度のおとっつぁんは、おめえを可愛がってくれるか」

亀吉 「おとっつぁんは、おまえじゃないか」

熊五郎 「おれは先(せん)のおとっつぁんだ。新しいおとっつぁんがあるだろ?」

亀吉 「そんな分からない道理があるもんか。子どもが先に出来て、親が後から出来るのは芋ぐらいのもんだ」

 母親のお徳は独りで仕立ての針仕事をして、貧乏暮らしをしながら亀吉を育てているという。

足元を見ると貧乏生活で、クツも履いていない、また虐められて、額に傷まで出来ている。

熊五郎はこれまでのことを亀吉に詫び、50銭銀貨の小遣いをやり、ウナギを食わせるから明日また会おうと約束する。

 家に帰った亀吉は母親の糸巻の手伝いをしている時にお金を持っているのを見つる。

                     
お徳 「なんだい、こりゃあ、まあ、50銭銀貨じゃないか。どうしたんだい、お使いを頼まれたのかい。どうしたんだい?・・・おまえまさか悪い了見出して盗んだんじゃないだろうね。はっきりとお言いな、言わないと、おとっつぁんの玄翁(げんのう)で叩くよ」、ついに亀吉は泣きながら父親に会ったこと、小遣いをもらったことを話し出す。

                   

 あくる日、亀吉は約束通りに鰻屋へ行って父親とウナギを食べていると、鰻屋の前を母親が行ったり来たり。亀吉は母親を座敷へ引き入れて両親が再会するが、二人ともかしこまって堅くなり、他人行儀でもどかしい。

      

熊五郎 「えへん、えへん、じつは昨日ねえ、亀坊に会ったんだよ。で、ウナギが食いてえって言うもんだから、じゃあ、食わせてやろうじゃねえかってことになって、・・・えへん、えへん、じつは昨日ねえ・・・」なんども同じことを繰り返していて埒があかない。

亀吉の「元のように3人で一緒に暮らそうよ」の一言で熊五郎はお徳に頭を下げ、元の鞘に収まることになります。

お徳 「こうやって夫婦が元の鞘に収まれるのも、この子が有ったればこそ。お前さん、子は夫婦の鎹(かすがい)ですね」。

亀吉 「え、あたい鎹かい、それで昨日、おっかさんが頭を玄翁(げんのう)でぶつと言ったんだ」。

約45分。父親と母親、子供と使い分けながらの熱演でした。

鎹。玄翁(げんのう)。

春風亭一之輔

1978年1月28日生まれ、千葉県野田市出身。2001(平成13)年3月 日本大学芸術学部卒業。


2001(平成13)年5月 春風亭一朝に入門
2001(平成13)年7月 前座となる 前座名「朝左久」
2004(平成16)年11月 二ツ目昇進 「一之輔」と改名
2012(平成24)年3月 真打昇進

プロフィール
主な持ちネタ:不動坊 茶の湯 鈴ヶ森 初天神 など
趣味:程をわきまえた飲酒 映画・芝居鑑賞 徒歩による散策 料理 喫茶店めぐり 洗濯
自己PR:自他共に認める「十八番」のある噺家を目指し、精進致しております。ごひいきのほど宜しくお願い申し上げます。
ホームページ:https://www.ichinosuke-en.com
Twitter:ichinosuke111

《出演が予定されている定席》
鈴本演芸場 9月上席 昼席
浅草演芸ホール 9月上席 昼席
末廣亭 9月中席 夜席 
池袋演芸場 9月中席 夜席
鈴本演芸場 9月下席 昼席
浅草演芸ホール 9月下席 昼席

・・・

先週の月曜日・23日は、「処暑」でした。

 「処暑(しょしょ)」は、厳しい暑さの峠を越した頃のこと。暦の上では朝夕には涼しい風が吹き、心地よい虫の声が聞こえてくるころで、暑さが和らぎ、穀物が実り始めます。同時に台風シーズンにもなります。

どうも昨今の気候。「処暑」以降も残暑厳しい日々が続きます。

「七十二侯」では、

・8月23日〜8月27日頃「綿柎開」わたのはなしべひらく

綿を包む柎が開き始める頃。柎とは花の萼(がく)のこと。柎が開き始めるとふわふわとした綿毛が中からとび出してきます。

・8月28日〜9月1日頃「天地始粛」てんちはじめてさむし

ようやく暑さが静まる頃。秋雨前線が冷たい空気とともに秋を運んできます。とはいっても、日中はまだまだ暑い日が続きます。

・9月2日〜9月6日頃「禾乃登」こくものすなわちみのる

日に日に稲穂の先が重くなってくる頃。稲穂が実り、色づき始めます。

 

日中の暑さは相変わらずで、熱帯夜も続きます。いつになったら寝苦しい夜から解放されるのやら。


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