知の仕事術 池澤夏樹・著
「フィクションの場合は、最初の五十ページはできるだけ丁寧に読んで「文体」をつかむとよい。」(p86)
これは全くその通りだと思うのだが、小説の元祖ともいうべき「源氏物語」については、これが極めて重要なようである。
源氏物語入門 〈桐壺巻〉を読む 著者 吉海 直人
「冒頭の本文を読んでみてほしい。何が書かれていないかわかるだろうか。・・・
・・・するともっと重要な人物、つまり后(中宮・皇宮)が描かれていないことに気づく。」(p25)
「桐壺巻」は、「源氏物語」本編の前史であり、たくさんの伏線がちりばめられている。
ワーグナーでいえば、Vorspiel (前奏曲)に相当するものであり、それゆえ多くの Leidmotiv (示導動機)が出てくると考えると分かりやすい。
上に引用したのもその一つで、中宮不在の状況あるからこそ、桐壺更衣が弘徽殿の女御らからのイジメに遭って死ぬわけだし、物心がつく前に母を失ったために、源氏は終生母性を追求し続けるわけである。
ちなみに、著者は結構辛辣な文章を書く人で、こういうくだりもある。
「しかし帝が成長すると、悲しいことにその分弘徽殿は年増になっていく。そしてもはや床避り(床離れ)の時期となり、更年期障害と相俟って、女性特有のヒステリックな状態に陥っていたとしたら、それは決して弘徽殿が悪者なのではなく。一夫多妻制の生み出した悲劇ともいえる。」(p50~51)
「フィクションの場合は、最初の五十ページはできるだけ丁寧に読んで「文体」をつかむとよい。」(p86)
これは全くその通りだと思うのだが、小説の元祖ともいうべき「源氏物語」については、これが極めて重要なようである。
源氏物語入門 〈桐壺巻〉を読む 著者 吉海 直人
「冒頭の本文を読んでみてほしい。何が書かれていないかわかるだろうか。・・・
・・・するともっと重要な人物、つまり后(中宮・皇宮)が描かれていないことに気づく。」(p25)
「桐壺巻」は、「源氏物語」本編の前史であり、たくさんの伏線がちりばめられている。
ワーグナーでいえば、Vorspiel (前奏曲)に相当するものであり、それゆえ多くの Leidmotiv (示導動機)が出てくると考えると分かりやすい。
上に引用したのもその一つで、中宮不在の状況あるからこそ、桐壺更衣が弘徽殿の女御らからのイジメに遭って死ぬわけだし、物心がつく前に母を失ったために、源氏は終生母性を追求し続けるわけである。
ちなみに、著者は結構辛辣な文章を書く人で、こういうくだりもある。
「しかし帝が成長すると、悲しいことにその分弘徽殿は年増になっていく。そしてもはや床避り(床離れ)の時期となり、更年期障害と相俟って、女性特有のヒステリックな状態に陥っていたとしたら、それは決して弘徽殿が悪者なのではなく。一夫多妻制の生み出した悲劇ともいえる。」(p50~51)