Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

最初の巻

2021年04月26日 06時30分17秒 | Weblog
知の仕事術 池澤夏樹・著
 「フィクションの場合は、最初の五十ページはできるだけ丁寧に読んで「文体」をつかむとよい。」(p86)

 これは全くその通りだと思うのだが、小説の元祖ともいうべき「源氏物語」については、これが極めて重要なようである。

源氏物語入門 〈桐壺巻〉を読む 著者 吉海 直人
 「冒頭の本文を読んでみてほしい。何が書かれていないかわかるだろうか。・・・
 ・・・するともっと重要な人物、つまり后(中宮・皇宮)が描かれていないことに気づく。
」(p25)

 「桐壺巻」は、「源氏物語」本編の前史であり、たくさんの伏線がちりばめられている。
 ワーグナーでいえば、Vorspiel (前奏曲)に相当するものであり、それゆえ多くの Leidmotiv (示導動機)が出てくると考えると分かりやすい。
 上に引用したのもその一つで、中宮不在の状況あるからこそ、桐壺更衣が弘徽殿の女御らからのイジメに遭って死ぬわけだし、物心がつく前に母を失ったために、源氏は終生母性を追求し続けるわけである。
 ちなみに、著者は結構辛辣な文章を書く人で、こういうくだりもある。

 「しかし帝が成長すると、悲しいことにその分弘徽殿は年増になっていく。そしてもはや床避り(床離れ)の時期となり、更年期障害と相俟って、女性特有のヒステリックな状態に陥っていたとしたら、それは決して弘徽殿が悪者なのではなく。一夫多妻制の生み出した悲劇ともいえる。」(p50~51)
 
コメント
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