「ちょうど季節は雛祭り。立派な雛飾りを前に、突然入鹿に嫁入りするよう諭される雛鳥。事情を聞かされ、はじめは母の意見を聞き入れようとはするものの、やはり自分は久我之助の妻になりたいと嘆く。それは死んであの世で添い遂げることを意味する。
一方、久我之助は、入鹿の探している女性の行方を知っており、仕えたところで拷問の末に殺されるに違いないと悟り、それならば武士らしく切腹すると決意する。そして雛鳥が自分の後を追って来ないように、自分は入鹿に従ったことにしてほしいと父に託し、愛しい恋人の命を守ろうとする。
最早、命を救うことはできないが、我が子が愛した人の命は救いたい。同じ想いを抱える定高と大判事は、互いに入鹿に従うことを示す、花のついた桜の枝を川に流すのだった。」
一方、久我之助は、入鹿の探している女性の行方を知っており、仕えたところで拷問の末に殺されるに違いないと悟り、それならば武士らしく切腹すると決意する。そして雛鳥が自分の後を追って来ないように、自分は入鹿に従ったことにしてほしいと父に託し、愛しい恋人の命を守ろうとする。
最早、命を救うことはできないが、我が子が愛した人の命は救いたい。同じ想いを抱える定高と大判事は、互いに入鹿に従うことを示す、花のついた桜の枝を川に流すのだった。」
あれほど反目しあっていた両家だが、相手の”イエ”を救うため、なぜか”自己犠牲合戦”を始める。
大判事は、「助くるはまた(太宰の)イエのため・・・」と述べて、久我之助を切腹させ、雛鳥を救おうとする。
対する定高も、入内の命令を聞いた時から、実は雛鳥の首を斬って入鹿に渡すつもりだったと述べる。
大判事と定高は、お互いに「花の付いた桜の木」を川に流し、入鹿の命令を受諾したという虚偽の合図を送る。
だが、二人が子を殺した瞬間、鳴き声がこだまのように響き、相手もまた子を殺したことが発覚する。
かくして、自殺の次に強力なポトラッチである「子殺し」(「周辺」からの逆襲(3))が、両家の”自己犠牲合戦”という形で実行された。
定高は、雛の道具を流れ灌頂にし、雛鳥の首を雛の輿乗り物に乗せて、対岸の大判事に送る。
これを受け取った大判事は、久我之助の首を斬り落とし、2つの首を並べて、婚礼の儀を執り行うのであった。
・・・いかにも近松半二らしいグロテスクな結末で(6月のポトラッチ・カウント(3))、温厚な私も、さすがに彼に対する殺意を抱いてしまった(といっても、既に死んでいるが・・・)。
というわけで、「妹背山婦女庭訓」より「太宰館花渡し」と「吉野川」のポトラッチ・ポイントは、5.0×2人=10.0。