「唐の都長安では、「皇帝の次は皇太子も倒れるだろう」という不穏な立札が夜な夜な現れる怪奇現象が起きていました。さらには、皇帝の崩御を予言した化け猫がいたという話まで。そんな話を聞いた空海(幸四郎)は、早速噂の化け猫がいるという屋敷に向かい一連を解決しようとしますが、事件は50年前にまで遡り…。時空を超えて唐王朝を揺るがす大事件に空海が挑みます。」
昼の部・後半は、夢枕獏先生の長編小説を舞台化した「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。
こういう新作を上演することで、松竹サイドは新しいファン層獲得を狙っているのだろう。
そういう事情もあってか、筋書には、何と異例の「人物相関図」(p13)が、まるまる1ページ使って掲載されている(やれば出来るじゃん)!
というか、複雑なストーリーである上に唐代の人物が多数出て来るこの芝居は、人物相関図がないと到底理解できるものではない。
さて、本作は新作歌舞伎であり、内容を知らない人が多いし、原作の小説が刊行されていることから、あらすじを詳細に説明すると営業妨害になりかねない。
ということで、ネタバレを回避しつつやや強引に要約すると、以下の通り。
・何者かの呪いで徳宗皇帝(12代)が崩御。
・皇太子を守るため、密教の元締めである恵果和尚が助太刀に参上、これを知った留学僧:空海は「密教を盗む」ため事件に接近。
・事件の鍵は50年前に死んだとされた楊貴妃にあると睨んだ空海は、楊貴妃の墓を暴くも、遺骸は既に盗まれていた。
・そこに化け猫が登場、方士の丹翁が駆けつけて空海らを救うが、化け猫を「白龍」と呼んでおり、二人は旧知の間柄。
・丹翁は、楊貴妃の悲劇の真実を教えて欲しいという空海の頼みに応じて、阿倍仲麻呂が書いた手紙を手渡す。
・その手紙によれば、楊貴妃は、妻を玄宗皇帝(9代)に殺された方士が復讐のため、皇帝を色に溺れさせ、国を傾けさせようと差し向けた娘だった。つまり、ハニー・トラップの道具だった。
・皇帝の寵愛を受ける楊貴妃だったが、叛乱が起き、楊貴妃を殺せと迫られた皇帝は、道教の師である黄鶴の勧めで楊貴妃に仮死の術を施し、叛乱が静まった後で生き返らせるという策を立てる。
・ところが、・・・(以下省略)
この後、空海ら一行は、玄宗皇帝と楊貴妃が初めて会ったという華清宮へ赴き、宴を催す。
そこに50年前の姿のままの楊貴妃が現れ、白龍と丹翁の因縁が明かされる・・・。
このくだりが、タイトルである「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」の元となっているわけである。
・・・というわけで、楊貴妃は、父によってハニー・トラップの道具とされ、無理やり仮死状態に陥らせれただけでなく、その後とんでもない被害(ネタバレにつき黙秘)に遭ってしまったため、ポトラッチ・ポイントは3.0と認定。