「春の祭典」 振付:ピナ・バウシュ
「PHILIPS 836 887 DSY」 振付:ピナ・バウシュ 出演:エヴァ・パジェ
「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」 振付・出演:ジェルメーヌ・アコニー
「PHILIPS 836 887 DSY」 振付:ピナ・バウシュ 出演:エヴァ・パジェ
「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」 振付・出演:ジェルメーヌ・アコニー
ピナ・バウシュ版「春の祭典」の日本での上演は18年ぶり、ということで無条件でチケットを買った。
最初の演目は、「PHILIPS 836 887 DSY」で、ストーリー性がない上に短いので、「分かろうとせず、感じる」ことに徹した。
結果、コリオグラファーが、「低い姿勢で上半身を回転させる」という動きを好んでいることはつかめた。
次の、「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」 は、ピナ版「春の祭典」の解説のように感じた。
以下は、舞踊の際に朗読される詩の一節である。
「アルーフォ、私の祖母、聖職者、フォン族の王国、蛇の体内に生まれたあなたは、子どもを持つことができませんでした。夢の中で、あなたは壺から水を飲み、黒い雄羊を捧げなければならなかった。私の父を産んだとき、あなたは60を超えていました。
私が生まれた時、人々は叫びました。「イヤトゥンデ!イヤトゥンデ!」母が戻って来たという意味の「イヤトゥンデ!」と。」
「亡くなった者たちは死んでいない・・・
死者は地中にはいない」
だが、主人公は、舞台一面に敷き拡げられた「土」(というか、地母神)である(幕間の30分を使って慎重にセッティングがなされた)。
例えば、途中で大柄な男性が地面に俯むけに倒れ込み、仮死状態に陥った後蘇生するが、これは、「土」から地母神の霊が男性に憑依し、いわば”顕現(代理化)”したことを示しているようだ。
そして、彼が、生贄となる乙女を指名するわけである。
乙女は、ラストで「土」の上に倒れ込み、息絶えて「土」に帰る。
(但し、若干注意が必要なのは、「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」における祖先の霊は、「地中」ではなく、”Things”(ものごと)の中に潜んでいるとされており、ピナとは「土」の位置づけが違うところである。)
・・・さて、これだけだと、なぜ人身供犠が要求されたのかが不明であるが、そのヒントが、「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」にあると考える。
それは、「原母」=「地母神」の死(あるいは殺害)というプリクエルのことである。
つまり、(生命を生み出す)「原母」が死んで(あるいは殺されて)不在となったため、それを呼び戻すために、原母が眠っている「土」に、代償として生命を捧げるというわけである。
なお、「原母」に恒久的な死がないことは定義上明らかであり、この点は「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」が明らかに謳っている。