■呉地方隊展示訓練
大阪湾展示訓練を撮影した「やまゆき」について本日は特集したい。「はつゆき」型護衛艦は、1982年から1987年にかけて12隻が大量建造された護衛艦隊用汎用護衛艦の第一陣で、「やまゆき」は8番艦にあたる。
「やまゆき」は満載排水量4200㌧。全長130㍍、全幅13.6㍍、喫水4.4㍍。主機はガスタービンエンジン二基で出力は45000馬力、速力は30ノットに達する。武装は、3インチ単装砲一門、20㍉高性能機関砲2門、ハープーン対艦ミサイル四連装発射器2基、アスロック対潜ロケット八連装発射器1基、シースパロー短射程対空誘導弾八連装発射器1基、三連装短魚雷発射管2基。
哨戒ヘリコプター1機を搭載する格納庫を有し、更に必要に応じて12.7㍉機銃を武装工作船対処用に搭載する(銃座は常備)。乗員は、150名。地方隊用護衛艦はヘリコプターを搭載していないため、「はつゆき」型護衛艦は乗員200名が定員であるが、地方隊では150名にて運用しているとのこと。
「はつゆき」型護衛艦は、当初、アルミ製の上部構造物を有していたが、フォークランド紛争により熱に弱いアルミ製船体への問題点が浮き彫りとなり、この「やまゆき」から鋼製の船体を採用した。アルミニウムは軽量であるが、特にフォークランド紛争においてはダメージコントロールを行う際の梯子やラッタルなどがすぐに溶けてしまい、溶けたアルミは消火活動を妨げたとの事だ。
「はつゆき」型は、当初満載排水量4000㌧であったが、構造物を改めたことで4200㌧に増大した。当初は、「はつゆき」型を12隻建造する計画であったが、鋼製上部構造物としたことでトップヘビーとなってしまい、バラストを搭載することとなった。結果、重心を低下させ、各部に余裕をもたせた「あさぎり」型護衛艦8隻が建造されることとなった。
「はつゆき」型護衛艦から、護衛艦ではこれまで艦橋構造物に配置されていたCIC(戦闘指揮所)を船体内にあたる第二甲板に収め、対艦ミサイルによる攻撃への脆弱性を低下させた。本型は、艦隊が一丸となって行動する為のデータリンク装置を搭載しているが、スペースの関係上、相互通信用のリンク11は搭載できず、受信専用のリンク14を搭載している。
護衛艦「やまゆき」は、1981年度計画艦で、日立造船舞鶴工場において1983年2月25日に起工、1984年7月1日に進水式を迎え、1985年12月3日に竣工した。「やまゆき」と同じ1981年度計画艦には、「はつゆき」型の9番艦「まつゆき」が建造されている。
ヘリコプター護衛艦を中心として直衛にあたるミサイル護衛艦を配置、更にこの護衛艦部隊を保管する汎用護衛艦を周囲に配置し、海上護衛任務や上陸阻止任務などにも対応できるように編成したのが、現在の護衛艦隊編成の基礎となった、いわゆる八八艦隊編成である。その中でも、「はつゆき」型は対空、対水上、対潜能力にバランスのとれた編成が求められた。
付け加えれば昭和30年代から40年代にかけて就役した護衛艦の後継として計画された背景があり、オールガスタービン推進方式の護衛艦12隻の大量就役とともに海上自衛隊の任務遂行能力は大きく近代化されたとえいる。同時期にはP-3C哨戒機の大量整備やイージス艦導入計画の具体化などがあり、海上自衛隊は沿岸警備からシーレーン防衛に大きく舵をくることが出来たといえる。
特に、大型哨戒ヘリコプターを搭載可能とした格納庫を備え、アスロック対潜ロケットなどといった強力な対潜装備を備えており、データリンクさえ改めれば、当分は実用に耐える性能を有している。というのも、12隻を短期間の内に建造したことで一斉に多くの護衛艦が近い将来、耐用年数を迎えることになり、致し方ないことではあるが、後継艦問題が大きく圧し掛かっている。
大型ヘリコプターを搭載し、更に排気部分を大きくとる必要があるガスタービン艦を、満載排水量4000㌧に収めるという計画には、苦労を要したとされるが、結論としては非常に成功した護衛艦であると考える。なお、本型は、「あさぎり」型にも共通したことであるが、ヘリコプター甲板と船体の間に通路を有するなど、いわゆる見学や体験航海の舞台として見ても、実は優れた特性があり、護衛艦としての性能以外にも特筆できる部分として記したい。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)