■ヨコスカサマーフェスタ2007
横須賀サマーフェスタ詳報第三回は、訓練展示の様子である。海上自衛隊というと、護衛艦や潜水艦、哨戒機が筆頭に挙げられるイメージがあるが、その作戦遂行能力を支えるのが地方隊の重要な任務である。
横須賀サマーフェスタ、訓練展示は、横須賀水中処分隊の複合艇による機動展示より開始された。水中処分隊隊員の最大の難関は5週間に渡るスキューバ訓練で、25㍍プール無呼吸の水泳を立て続けに何十も泳ぐ、そして妨害排除などの訓練を行う。港湾埋め立て作業などで発見される第二次大戦中の機雷や魚雷、不発弾などを確実に排除するには、こういった厳しい関門を潜り抜けねばならない。
水中処分隊の訓練展示の背景を体験航海を実施していた護衛艦「はたかぜ」が帰港してくる。イージス艦とターター搭載ミサイル護衛艦の移り変わる過渡期に導入されたミサイル護衛艦で、満載排水量は5900㌧、前方からの経空脅威に素早く対処するべく、艦首付近にスタンダードミサイル発射器を搭載したことで、この独特の艦容に繋がっている。
第二回の体験航海に向かうべく、護衛艦「しらゆき」が基地を出港してゆく。ヘリコプター甲板には鈴なりの艦船ファンがカメラを並べ、親子連れが手を振っているのがここからも見えた。手前にみえるのは海上保安庁の放射能測定船「きぬがさ」。米海軍の原子力艦寄港時には必ず放射線測定を実施している。幸い、放射能測定船が放射能を検知した事例は無いようだ。
SH-60J哨戒ヘリコプターによる機動飛行。順次最新型のSH-60Kに近代化されているものの、数の上では現在の海上自衛隊主力哨戒ヘリコプターである。哨戒ヘリコプターの存在は潜水艦の天敵といってよく、上空に哨戒ヘリコプターが飛行しているだけでも潜水艦の行動を大きく制約させる。この無言の抑止力が潜水艦の脅威からのシーレーン防衛の完遂に近づける。
港内において実施された曳船(タグボート)による放水展示。今回の展示には横須賀港務隊の曳船68号と曳船79号が参加した。実際、夏期のものすごく暑い季節には、放水をみているだけでも清涼感が伝わってくる。着色された放水で、逆光なのが残念であるが、非常に晴れ渡った空に放水が散ってゆく様子が幻想的だ。曳船は、放水とともに機動航行を展示していた。
SH-60Jによる救難飛行の展示。哨戒ヘリコプターは、外洋においては護衛艦の艦載機として、対潜哨戒の他、工作船対処やミサイル誘導の中継といった戦闘任務にくわえ、災害派遣任務にあどにもあたる。機内のスペースを活かせば、海難救助から急患輸送、緊急物資輸送などにも活躍する。
救難飛行展示において要救助者を回収し続いて救助にあたった機上救難員(フロッグマン)を吊り上げている様子。足ヒレのシルエットが大きめに写っており面白い。SH-60Jは、ここ数年間の横須賀サマーフェスタにおいて飛行展示を実施しているが、その前はS-61が救難飛行展示を実施していた。砕氷艦「しらせ」艦載機として運用されるS-61は、SH-60Jと同じ館山航空基地に所属している。
ミサイル護衛艦「はたかぜ」と護衛艦「しらゆき」が体験航海を終えて入港してきた。撮影時、「はたかぜ」は第1護衛隊群の第61護衛隊に所属、「しらゆき」は横須賀地方隊第21護衛隊に所属している護衛艦で、入港の様子も複数となると急にフレームが賑やかになった印象だ。
曳船66号と曳船74号、横須賀港務隊の曳船で、それぞれ排水量は35㌧と50㌧。海上自衛隊は40隻の曳船を運用している。こうした支援船は、入出港支援や人員輸送を行う第一種、基地周辺での訓練や爆発物処理を行う第二種、訓練教育用の第三種に区分され、曳船は入出港の支援を行うので第一種支援船に区分される。
手前の船は、交通船2146号。交通船2137号型で、基準排水量は30㌧、船体はFRP製で、主として沖に停泊する艦船や基地の離れた区画と区画との連絡に用い、場合によっては港湾哨戒などにも用いるという。交通船には、上陸用舟艇型の船首がランプになったものもあり、支援船の世界は、なかなか奥が深いのだ。
HARUNA
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