■ヨコスカサマーフェスタ2007
海上自衛隊横須賀基地一般公開“横須賀サマーフェスタ”詳報、第一回の基地入場に続き、第二回は、護衛艦「ありあけ」などの艦内一般公開の様子を掲載したい。
水面に映る海上自衛隊の艦船。この日に開放された横須賀基地吉倉桟橋には多くの艦船が停泊しており、これらの艦船が一般公開されている。神戸港や大阪港、名古屋港に艦船が寄港した場合に一般公開が行われることもあるが、これだけの数の艦船が同時に一般公開されるのは、こういった海上自衛隊の艦船基地ならではの規模といえる。
今回の写真は、護衛艦「ありあけ」のものである。「ありあけ」は9隻が建造された「むらさめ」型護衛艦の最終艦として就役した護衛艦で、本型は護衛艦としてステルス性を強く意識した設計を採用、国産のFCS-2と加え、垂直発射装置(VLS)を大胆に採用したのも本型の特色で、Mk41に内臓されたアスロック、Mk48に搭載されたシースパロー短SAMによる素早い任務遂行が可能である。
艦橋部分。「むらさめ」型護衛艦は艦橋情報装置ABSを護衛艦として初めて採用しており、データ化された航海情報を大モニターに表示、航海要員に提供している。艦橋のすぐ後ろにFCS-2機器室が配置されている。その一層下にはチャフ弾庫、通信機器室が配置、一層下にCIWS管制室と二層に別れた士官居住区が配置されている。この01甲板の居住区には、右側に艦長室、左側に司令室が配置されている。
イギリスのJane's Fighting Shipsが記載した内容によれば、「本型は、あさぎり型の拡大改良型というよりもこんごう型の縮小型というべき」という旨を十年ほどまえに掲載したが、そこまでではないものの、三次元レーダーであるOPS-24対空レーダーを搭載し、戦術情報処理装置OYQ-9、対艦戦術情報処理装置ASWCSなどにより高い能力を有する。
一般公開された士官室。写真はサロンエリア、諸外国、特に西欧諸国の艦船をみると、バーカウンターなどを設けたフリゲイトや駆逐艦もみられるが、海上自衛隊は基本的に禁酒である。また、木材を多用した西欧諸国の艦船の士官室と比べると、防火性を重点的に設計した印象で、さしずめ、機能的な寝台特急カシオペアと豪華特急トワイライトエクスプレス、という違い、という印象だろうか。居室は基本的に二段ベットで、環境としては、寝台特急に例えると全体的に最盛期の東海道山陽ブルートレイン並、幹部は二人用個室A寝台並、曹士は開放型B寝台並というところか。
士官室。天井の配管などが隠されている部分など、こういう部分への配慮から、士官室らしさがよくわかる。この他、体験航海などで休憩所として開放される科員食堂がある。この他、曹士用に15名に一箇所の割合で、レストエリアがある。内装としてはその中間くらいのレベルとして、先任海曹が利用するCPO室がある。
主機操縦室。機関室にはスペイSM1Cガスタービンエンジン二基、LM2500ガスタービンエンジン二基が搭載されている。スクリューは二軸方式であり、スペイSM1CとLM2500が各一基づつが用いられるCOGAC方式が採用されている。機械室は自動化されており、機側自動運転が可能となっている。ただ、ロールスロイス社製とジェネラルエレクトリック社製エンジンを合わせて搭載している事で、無駄な点もあり、政治的妥協を強いられた背景も垣間見える。
状況表示板。攻撃を受けて被害などがでたりすると、被害箇所について、ここに配置されたランプが点灯します、と解説を受ける。本型は煙突が二箇所に分かれていることから分かるように分散配置されており、このシフト方式を採用することでミサイルや魚雷による被害の局限化を期している。この他、艦内のデータ通信や電話を被害発生時に脆弱性のある通常ケーブルから光ファイバー方式としているのも本型の試みだ。
被害表示ランプが一斉に点灯、ここまで同時に被害を受けたのか、ああ、今日が命日だ、と半ば諦めムード。案内の隊員さんが、慌てていや、ランプの点灯試験しただけです、と。閑話休題、プレーリー装置付可変ピッチプロペラの採用や微粒子水泡を用いたマスカーを搭載しており、音響ステルス性にも、上部構造物のRCS低減ステルス性並の大きな配慮をしている。
科員食堂。椅子は48基あり、129名が交代で食事をとるようだ。本型は、汎用護衛艦として始めて科員居住区に二段ベットを採用していることが特筆される。これは、基準排水量増大により「あさぎり」型よりも艦内容積が増加した一方で、自動化により乗員定数を低減させることに成功したからで、更に定員の一割程度は、ソファー兼寝台を利用することで、これまでは自身の寝台以外座る事が出来ない、という艦内生活に余裕を与えることが出来た。
「むらさめ」型護衛艦は、科員寝台を15名分づつに小分けしておりプライバシーをある程度確保した設計を取っている。ただ、「たかなみ」型からは大部屋方式に回帰しており、その話を聞いた時、戦闘艦と居住性は両立し得ないのだろうか、と考えさせられたものだ。しかし、インド洋やアラビア海といった行動範囲の増加に伴い、居住性とストレス問題は、どれだけ考えてもやりすぎという事は無いだろう。
嬉しい麦茶のサービス。乾いた喉に染み渡る冷涼感、本艦は佐世保基地から展開したとのことで、佐世保というと実戦的な基地部隊というイメージがあるが、こういった気配りもあるのか、と感謝した。居住性に関してであるが、本型から司令、艦長、士官、先任海曹、曹士の各浴室に洗濯機と電機乾燥機が個別に配置されており、更に水周りの設備の一人当たりの個数も、従来の護衛艦よりも増加しているようだ。
艦内にあった書架。重要な娯楽といえる。貨物船や客船の自動化と稀に比較する人も居るようだが、実際はダメージコントロールなどを考えると、その自動化には限界がある。米アーレイバークミサイル駆逐艦などと比べると、かつての護衛艦の寝台とロッカーしかなかった居住区と比べれば進んだものの、娯楽などについて更に進んでもいいのでは、と思ったりもする。
ヘリコプター格納庫部分。2機を収容することが可能とされるこの格納庫は、搭載ヘリコプターのローター取り外しなどの作業も考慮している。一定時間以上海上を飛行した場合塩分除去などのために取り外す事は珍しくないということである。着艦拘束装置は、艦の後方気流と回転トルクの関係上、右舷後方から着艦するということで、レールや格納庫内の配置も工夫されている。
HARUNA
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