■激突-ファントム飛行隊
空母いぶき、いよいよ今週末に公開ですが、この映画と共に一読をお勧めしたい作品があります、新田原基地に当時在ったファントムが大活躍する鳴海章氏の小説です。
ファントムが活躍する劇画としては、ファントム無頼が有名ですが。政府主導で1980年代に導入決定したニミッツ級原子力空母を舞台とする作品です。乗員数が非常に自衛隊には荷が重すぎまして、しかも艦載機が自衛隊にはF-4のみ、とはいいつつ自衛隊が保有するのは空軍仕様のF-4EJ,という部分から無理はあるのですが、読み応えで覆っている作品だ。
かわぐちかいじ氏原作の空母いぶき映画化、日中空母激突という映画では扱い難い主題を前に中国軍を出さないが戦闘を描くという原作改変を行い、壊変にならないのかという未読の筆者が側聞事情からも心配する内容で、南西諸島の日中摩擦と自衛隊F-35B護衛艦配備に001A型空母という現状を前に映像化は配慮のし過ぎが悪影響を及ぼした印象がある。
原子力空母信濃、鳴海章氏が1990年代に発表した作品の方が、敢えて難しい内容でも映像化の障壁が低いように思います、いずも型改良型のF-35B搭載艦となりますと、余程の理論武装で制作し、配給に際しても左右両方からの批判への覚悟が無ければ、充分描いても不充分な描写でも、中途半端に現実味がありますので十年単位で議論の的となるでしょう。
映画はCGを多用するようです。実のところ映画空母いぶき、横須賀基地や那覇基地でのロケという話を知りません。いぶき母港が横須賀なのか呉などか、艦載機の拠点が館山航空基地なのか新田原基地なのかも原作未読が響いているのですが。しかし、自衛隊が協力しないのであれば、CGで原作通りに描いたとしても弊害は無かったように思うのですが。
話題作を前に延々原作未読未公開映画批評をやったとしても生産的ではありませんので、軍事検証を展開しましょう。社会派映画と想定しますと、沖縄での日中衝突は現実味が薄い、しかし、南シナ海航行の自由作戦、これならば現実味がある。そして、我が国の場合、法整備の不充分を現場に押し付けてきました歴史があります。説得力ある台本は、こうだ。
軍事検証から、空母いぶき、現実味のある設定は、南シナ海での航行の自由作戦に展開中、中国海軍から航空攻撃を受けるという事でしょう。実際は妨害に留まる程度だと考えますが、映画で戦闘を描くのであれば、日本側から海南島奇襲攻撃の展開は現実味が無く、攻撃を受ける場合でしょう。ただ、この場合は防衛出動命令発令下でなければ反撃できない。
特措法等で航行の自由作戦に参加するが、法律上は曖昧に自衛戦闘が必要最小限且つ緊急避難として認められ、政府が法整備不備から国籍不明の武装勢力と見なし撃墜せよ、と命じられ、中国海軍からの攻撃を法律上の国籍不明武装勢力からの攻撃と強弁してF-35Bとイージス艦により反撃、危機を回避する。国籍不明の中国軍という法律用語に混乱しつつ。
事実上の戦闘を展開しつつ、帰国後は政府が自衛隊と国籍不明武装勢力との事件は衝突であり戦闘では無かったと答弁する。恰も南スーダン日報問題のような軍事用語での戦闘を法律上の衝突と言い換えるだけで平和憲法の位置が曖昧になる現状と盧溝橋事件以来の日中戦争を事変として戦争扱いしない事で拡大し続けた過去の歴史と共に、現場が閉口する。
空母いぶき、はこのように描かれるのであれば、当方は評価するのですが。兎に角、原作者かわぐちかいじ氏が難しい内容を劇画で問うた事に相応に覚悟が在った筈です。しかし、例えば単に自衛隊の空母をCGで描きカッコイイ、で終わらせる事が有れば、韓国映画“ムクゲの花が咲きました”的な映画人の歪な商業主義が原作を汚す事とならないでしょうか。
空母いぶき映画化が現実味がある内容を前に原作通り映画化する事に躊躇するならば、いっそのこと流石にそれは無いだろう、というニミッツ級空母を自衛隊が導入する原子力空母信濃シリーズを実写化した方が、社会派の内容にも憲法問題の提起にも国粋主義の批判も肯定さえも盛り込んだ、映画メディアとしての正当性と正統性を貫けたのかな、と思う。
原子力空母信濃、中曽根政権とレーガン政権の時代に日米で海上自衛隊がニミッツ級原子力空母をアメリカから導入する秘密協定を結び、1997年にニミッツ級原子力空母ユナイテッドステーツが海上自衛隊へ引き渡される。海空自衛隊は共同で運用要員の研修とアメリカ空母艦上訓練やアメリカ海軍空母発着訓練支援を受け、空母“しなの”として就役する。
信濃艦載機は、新田原基地へ集められたF-4EJ改戦闘機とE-2C早期警戒機艦上改修型、そして三菱重工小牧南工場付近で改修されたAV-8Bハリアー改の三機種、信濃は、ヘリコプター搭載護衛艦しらね、イージス艦こんごう、ミサイル護衛艦はたかぜ、ミサイル護衛艦あさかぜ、と共に信濃戦闘群を編成し、権謀術数渦巻く冷戦後の世界へ挑む、という。
原子力空母信濃、このシリーズが刊行された事にトムクランシー氏が“日米開戦”を発表し、“レッドオクトーバーを追え”以来のジャックライアンシリーズに日米の武力衝突という内容を著すほどに日米貿易摩擦が軍事対立に繋がるのではないか、と一部が危惧していた時代、原子力空母信濃シリーズ最初の相手はなんと米空母インディペンデンスでした。
原子力空母信濃南シナ海海戦、シリーズ最初の内容は国内で相次ぐ原発トラブルを前に南シナ海沿岸友好国からの天然ガス供給に切り替える脱原発政策を展開した結果、局地的にアメリカ海軍と対立する、という上中下巻ものでした。原子力空母信濃激突ファントム飛行隊、として次の相手は中国海軍が導入した旧ソ連製空母海南竜と戦う上下巻作品です。
原子力空母信濃中米侵攻作戦、南米某国での政変により政府高官多数が拘束され救出へ信濃が派遣、電子戦機EF-4サンダーファントムが前作より新装備に加わります。そして原子力空母信濃最後の出撃、カールビンソンとインディペンデンスと日中空母が対峙するという内容でした。内容は若干荒唐無稽ですが作者のファントム愛が溢れている作品といえる。
原子力空母信濃シリーズを通して、F-4EJ戦闘機が相手とするF-14A戦闘機やSu-27戦闘機の高性能を前に、特にAMRAAMさえ運用できないF-4の苦戦が、恰も零戦五二型とF6F戦闘機の関係を見るようで、しかし、ストライクファントム改修やEF-4戦闘機の駆使等創意工夫で困難に挑む、一種推理小説でも読み解くが如くの状況展開は今尚輝きを失わない。
空母いぶき、と敢えて現実味を有するだけに際限が場外の論議を呼ぶ作品よりは、どうせCGでやるのだからニミッツ級でも護衛艦いずも型改良でも手間は同じ、原子力空母信濃シリーズを映像化した方が、なにしろ現在ならばファントムの実機がまだ飛行しているのですし、AV-8改をF-35Bに切り替えるくらいで、描けたのではないかな、と思ったりする。
空母いぶき、間もなく公開なのですが、小学館から売れている作品の話題性に乗っかり原作をおおきく改変した内容で無理を押し通すよりも、それならば、いぶき映画化でこだわる必要はあったのか、空母いぶき原作ではなく、空母映画のタイトルが偶然いぶき的な結果になるよりも、原子力空母信濃、話は大きく加え勢いよく映画化してほしかったですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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空母いぶき、いよいよ今週末に公開ですが、この映画と共に一読をお勧めしたい作品があります、新田原基地に当時在ったファントムが大活躍する鳴海章氏の小説です。
ファントムが活躍する劇画としては、ファントム無頼が有名ですが。政府主導で1980年代に導入決定したニミッツ級原子力空母を舞台とする作品です。乗員数が非常に自衛隊には荷が重すぎまして、しかも艦載機が自衛隊にはF-4のみ、とはいいつつ自衛隊が保有するのは空軍仕様のF-4EJ,という部分から無理はあるのですが、読み応えで覆っている作品だ。
かわぐちかいじ氏原作の空母いぶき映画化、日中空母激突という映画では扱い難い主題を前に中国軍を出さないが戦闘を描くという原作改変を行い、壊変にならないのかという未読の筆者が側聞事情からも心配する内容で、南西諸島の日中摩擦と自衛隊F-35B護衛艦配備に001A型空母という現状を前に映像化は配慮のし過ぎが悪影響を及ぼした印象がある。
原子力空母信濃、鳴海章氏が1990年代に発表した作品の方が、敢えて難しい内容でも映像化の障壁が低いように思います、いずも型改良型のF-35B搭載艦となりますと、余程の理論武装で制作し、配給に際しても左右両方からの批判への覚悟が無ければ、充分描いても不充分な描写でも、中途半端に現実味がありますので十年単位で議論の的となるでしょう。
映画はCGを多用するようです。実のところ映画空母いぶき、横須賀基地や那覇基地でのロケという話を知りません。いぶき母港が横須賀なのか呉などか、艦載機の拠点が館山航空基地なのか新田原基地なのかも原作未読が響いているのですが。しかし、自衛隊が協力しないのであれば、CGで原作通りに描いたとしても弊害は無かったように思うのですが。
話題作を前に延々原作未読未公開映画批評をやったとしても生産的ではありませんので、軍事検証を展開しましょう。社会派映画と想定しますと、沖縄での日中衝突は現実味が薄い、しかし、南シナ海航行の自由作戦、これならば現実味がある。そして、我が国の場合、法整備の不充分を現場に押し付けてきました歴史があります。説得力ある台本は、こうだ。
軍事検証から、空母いぶき、現実味のある設定は、南シナ海での航行の自由作戦に展開中、中国海軍から航空攻撃を受けるという事でしょう。実際は妨害に留まる程度だと考えますが、映画で戦闘を描くのであれば、日本側から海南島奇襲攻撃の展開は現実味が無く、攻撃を受ける場合でしょう。ただ、この場合は防衛出動命令発令下でなければ反撃できない。
特措法等で航行の自由作戦に参加するが、法律上は曖昧に自衛戦闘が必要最小限且つ緊急避難として認められ、政府が法整備不備から国籍不明の武装勢力と見なし撃墜せよ、と命じられ、中国海軍からの攻撃を法律上の国籍不明武装勢力からの攻撃と強弁してF-35Bとイージス艦により反撃、危機を回避する。国籍不明の中国軍という法律用語に混乱しつつ。
事実上の戦闘を展開しつつ、帰国後は政府が自衛隊と国籍不明武装勢力との事件は衝突であり戦闘では無かったと答弁する。恰も南スーダン日報問題のような軍事用語での戦闘を法律上の衝突と言い換えるだけで平和憲法の位置が曖昧になる現状と盧溝橋事件以来の日中戦争を事変として戦争扱いしない事で拡大し続けた過去の歴史と共に、現場が閉口する。
空母いぶき、はこのように描かれるのであれば、当方は評価するのですが。兎に角、原作者かわぐちかいじ氏が難しい内容を劇画で問うた事に相応に覚悟が在った筈です。しかし、例えば単に自衛隊の空母をCGで描きカッコイイ、で終わらせる事が有れば、韓国映画“ムクゲの花が咲きました”的な映画人の歪な商業主義が原作を汚す事とならないでしょうか。
空母いぶき映画化が現実味がある内容を前に原作通り映画化する事に躊躇するならば、いっそのこと流石にそれは無いだろう、というニミッツ級空母を自衛隊が導入する原子力空母信濃シリーズを実写化した方が、社会派の内容にも憲法問題の提起にも国粋主義の批判も肯定さえも盛り込んだ、映画メディアとしての正当性と正統性を貫けたのかな、と思う。
原子力空母信濃、中曽根政権とレーガン政権の時代に日米で海上自衛隊がニミッツ級原子力空母をアメリカから導入する秘密協定を結び、1997年にニミッツ級原子力空母ユナイテッドステーツが海上自衛隊へ引き渡される。海空自衛隊は共同で運用要員の研修とアメリカ空母艦上訓練やアメリカ海軍空母発着訓練支援を受け、空母“しなの”として就役する。
信濃艦載機は、新田原基地へ集められたF-4EJ改戦闘機とE-2C早期警戒機艦上改修型、そして三菱重工小牧南工場付近で改修されたAV-8Bハリアー改の三機種、信濃は、ヘリコプター搭載護衛艦しらね、イージス艦こんごう、ミサイル護衛艦はたかぜ、ミサイル護衛艦あさかぜ、と共に信濃戦闘群を編成し、権謀術数渦巻く冷戦後の世界へ挑む、という。
原子力空母信濃、このシリーズが刊行された事にトムクランシー氏が“日米開戦”を発表し、“レッドオクトーバーを追え”以来のジャックライアンシリーズに日米の武力衝突という内容を著すほどに日米貿易摩擦が軍事対立に繋がるのではないか、と一部が危惧していた時代、原子力空母信濃シリーズ最初の相手はなんと米空母インディペンデンスでした。
原子力空母信濃南シナ海海戦、シリーズ最初の内容は国内で相次ぐ原発トラブルを前に南シナ海沿岸友好国からの天然ガス供給に切り替える脱原発政策を展開した結果、局地的にアメリカ海軍と対立する、という上中下巻ものでした。原子力空母信濃激突ファントム飛行隊、として次の相手は中国海軍が導入した旧ソ連製空母海南竜と戦う上下巻作品です。
原子力空母信濃中米侵攻作戦、南米某国での政変により政府高官多数が拘束され救出へ信濃が派遣、電子戦機EF-4サンダーファントムが前作より新装備に加わります。そして原子力空母信濃最後の出撃、カールビンソンとインディペンデンスと日中空母が対峙するという内容でした。内容は若干荒唐無稽ですが作者のファントム愛が溢れている作品といえる。
原子力空母信濃シリーズを通して、F-4EJ戦闘機が相手とするF-14A戦闘機やSu-27戦闘機の高性能を前に、特にAMRAAMさえ運用できないF-4の苦戦が、恰も零戦五二型とF6F戦闘機の関係を見るようで、しかし、ストライクファントム改修やEF-4戦闘機の駆使等創意工夫で困難に挑む、一種推理小説でも読み解くが如くの状況展開は今尚輝きを失わない。
空母いぶき、と敢えて現実味を有するだけに際限が場外の論議を呼ぶ作品よりは、どうせCGでやるのだからニミッツ級でも護衛艦いずも型改良でも手間は同じ、原子力空母信濃シリーズを映像化した方が、なにしろ現在ならばファントムの実機がまだ飛行しているのですし、AV-8改をF-35Bに切り替えるくらいで、描けたのではないかな、と思ったりする。
空母いぶき、間もなく公開なのですが、小学館から売れている作品の話題性に乗っかり原作をおおきく改変した内容で無理を押し通すよりも、それならば、いぶき映画化でこだわる必要はあったのか、空母いぶき原作ではなく、空母映画のタイトルが偶然いぶき的な結果になるよりも、原子力空母信濃、話は大きく加え勢いよく映画化してほしかったですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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