■世界の防衛-最新11論点
歴史ある艦の除籍と云うものは寂しさを感じるものですが今回は空母の話題と新しい潜水艦を建造する各国の動きについて。
アメリカ海軍は退役空母キティーホークの解体を決定しました。キティーホークは1961年に竣工しましたメガキャリアーという新しい艦隊空母の原型となったフォレスタル級空母の改良型であるキティーホーク級空母の一番艦で、二番艦にコンステレーション、三番艦にアメリカ、そして後期型にジョンFケネディが建造、いずれもすでに退役しています。
キティーホークは保存艦として維持する運動や、驚くべきことに横須賀市において保存艦としつつ艦内の航空機格納庫を市営駐車場とする驚きの構想も検討されていますが実現していません。そして2009年に退役して以降ワシントン州の海軍システムコマンドの施設において保管されていましたが2021年に解体が決定、テキサス州の解体施設へ送られます。
■キティーホーク解体決定
こちらが一般公開された空母キティーホークなのですが惜しむ気持ちならばわたしにもすこしある。
キティーホーク解体を惜しむ声は海軍内外にあるようです。キティーホークは冷戦時代の様々な歴史とともに運用された空母で、現代のアメリカ海軍を構成する幾つかの事件と遭遇しています。その一つがスービック基地で発生した人種暴動で、黒人乗員へ夜食サンドウィッチお代わり拒否という今では考えられない差別が艦を二分する暴動となりました。
黒人差別はアメリカで1960年代に大きな摩擦となりましたが、当時士官乗員348名中黒人士官は僅か5名、この暴動が海軍を差別撤廃へ大きく転換させたという。また1984年3月にはソ連潜水艦ヴィクター級K-314との衝突事故も発生、ヴェトナム、湾岸、台湾、コソボ、朝鮮と様々な危機の第一線に在った航空母艦の解体は多くの方の寂寥感を誘う様です。
■キティーホーク解体地へ最後の航海
しらね標的艦として曳航されていったのを思い出すもの。
退役空母キティーホークはスクラップとして1ドルで売却されることとなりました。この1ドルという費用は余りに安価ですが、背景には驚きの事情があります。先ず1960年代の艦艇にはアスベストを筆頭に様々な、現代では有害な資材を用いていて、その解体には完全なシーリングを行い防護服を装備した作業員が厳しい環境管理下で作業の必要がある。
キティーホークは満載排水量7万5200tの巨大な航空母艦であり、この空母を解体して得られる鉄材は膨大な量となりますが、上記事情から解体費用も膨大な金額となります。また蒸気カタパルトなど主要な機材はすでに撤去され電子機材も搭載されていません、したがって再生空母として転売する事も出来ませんし、機関さえ撤去され航行さえできません。
キティーホーク最後の航海は解体施設に向かうものですが、解体予定地はテキサス州のブラウンズビルにあるインターナショナルシプブレーキングリミテッド社の施設で、ワシントン州の海軍システムコマンドの施設からは2万5750kmの大航海が待っています、巨大すぎて曳船に曳航されたままではパナマ運河を航行できない為で、最後の航海を行います。
■イタリア海軍最新水上戦闘艦
イタリア海軍の艦艇と云うものは試行錯誤と革新を重ねていて毎回感心させられるものが多いのです。
イタリア海軍の多目的哨戒艦ジョヴァンニデッレバンデネレがジェノヴァのフィンカンティエリ社施設において進水式を迎えました。パオロタオンディレベル級の4番艦でパオロタオンディレベル級は多目的哨戒艦として設計され、ルポ級フリゲイトとミネルヴァ級哨戒艦を共通船体にて代替する構想で、多目的哨戒艦水上戦闘艦型で最初の艦となります。
パオロタオンディレベル級は艦首部分が二つに分かれている特殊な船体を採用していますが、水上戦闘艦型と哨戒艦型の二種類派生型が在り、また哨戒艦型も船体設計には余裕がある為、複合高速艇を複数搭載すると共に海兵隊員居住区画を有し、グレーゾーン事態や地域紛争等への初動として相応に機能、また余裕ある船体は長期の任務を可能としている。
ジョヴァンニデッレバンデネレが区分される水上戦闘艦型は127mm艦砲やアスター30艦対空ミサイルとオトマート2対艦ミサイルにWASSB-515魚雷発射装置等を搭載し満載排水量6200t、哨戒艦型は先行して建造される3隻が含まれ76mm艦砲と機関砲を搭載し満載排水量5880tとなっています。イタリア海軍は各型併せ16隻を建造予定となっています。
■攻撃型原潜モンタナ
ヴァージニア級攻撃型原潜も長いこと建造されているものだと驚かされるものです。
アメリカ海軍向けに建造が進んでいる攻撃型原潜モンタナは2022年2月までに最初の公試を完了させたとのこと、公試では潜水試験も実施した。モンタナはヴァージニア級攻撃型原潜21番艦としてハンティントンインガルスのニューポート造船所において建造されている原子力潜水艦で、起工式は2015年に、命名式は2020年9月に執り行われています。
ヴァージニア級攻撃型原潜はロスアンゼルス級攻撃型原潜の後継艦で、高価格の為に3隻の建造に終わったシーウルフ級攻撃型原潜と比較した場合は廉価版と云う印象はぬぐえませんが、短期間の建造に終わったシーウルフ級に対して新造の都度改良が行われているヴァージニア級攻撃型原潜は最新システムと、高度な静粛性能と水中打撃力を有しています。
■イスラエルがドイツより潜水艦
こちらは手堅い通常動力潜水艦の話題です。
イスラエルはドイツから新型のダカール級潜水艦3隻の建造契約を締結しました。ダカール級潜水艦は完全な新設計であり、ドイツのティッセンクルップ社が建造します、このティッセンクルップ社との間ではイスラエルは現在運用しているドルフィン級潜水艦を輸入しており、ドイツ設計の潜水艦は小型の206型潜水艦のイギリス生産艦も運用していた。
ダカール級潜水艦は燃料電池方式を採用する計画であり、ティッセンクルップ社では子会社のティッセンクルップマリンシステムズ社に対し燃料電池に関する新工場をキールに建設しています。就役時期などについては未定ですが、イスラエル海軍では新型潜水艦を1999年から就役したドルフィン級潜水艦の後継に位置付けているとされ、当面先と思われます。
■中国は新鋭コルベットを巡視船へ
中国海軍は相手に応じて052型防空駆逐艦と056型コルベットと022型ミサイル艇を使いわけている。
中国海軍が056型コルベット多数の中国海警局巡視船改造を開始したことが2月1日付NHK報道により明らかとなりました。海警局巡視船改造は艦対艦ミサイルこそ取り外すものの艦砲は維持され、個艦防空ミサイルに代えて機関砲が搭載、特筆すべきは少なくとも10隻が改造されているという事で、アメリカの沿岸警備隊カッター並の重武装といえます。
056型コルベットは2011年から2021年にかけ大量建造された小型水上戦闘艦で満載排水量は1500t、旧式化した初期のミサイル艇や維持費のみ掛かる魚雷艇を更新する目的で建造、76mm艦砲とHHQ-10個艦防空ミサイル、YJ-83対艦ミサイルと無人機用飛行甲板を装備し、中小国の小型艦を圧倒、10年間で72隻という大量建造を成し遂げた実績があります。
■無人原子力潜水艇ポセイドン
こんなものが太平洋を遊弋する様になりますとASWを組みなおさねばならない気がしますがそれ以上にASW能力を劇的に低下させたNATO等は気が気ではないのか、使える水準なのか。
ロシア海軍は無人原子力潜水艇ポセイドンと母艦の原子力潜水艦ベルゴロドを2022年夏ごろに竣工させる。プロジェクト09852として進められる新しい潜水艦は、2019年4月23日にセヴマシュ造船所において進水式を完了させており、従来の水中無人機UUVが航続距離の問題を抱えているのに対して核動力を備える事でこれらの問題を解決している。
無人原子力潜水艇ポセイドンは様々な用途が想定されているが、用途の一つとして核弾頭を搭載し敵拠点基地付近まで進出し攻撃する無人自爆潜水艇としての用途も考えられる。宇宙条約のような核兵器配備を禁止した条約は海洋条約には未だなく、仮に多数が同時運用されるならば、潜水艦発射弾道弾を基軸とした海軍核戦略は世代交代を迎える事となる。
■ラインラントプファルツ竣工
海上自衛隊で云えば第一世代のヘリコプター搭載護衛艦と云う水準の水上戦闘艦です。
ドイツ海軍は2022年1月、フリゲイトラインラントプファルツを就役させました。これはティッセンクルップ社において建造されていましたバーデンヴュルテンベルク級フリゲイトの4番艦で最終艦、2007年にドイツ国防省が建造契約を結んでいます。満載排水量7300tと戦後にドイツ海軍が建造した水上戦闘艦の中では最大のもので設計も特殊でした。
バーデンヴュルテンベルク級は乗員120名と特殊部隊員50名が乗艦可能で、武装は127mm艦砲とハープーン対艦ミサイル、対潜兵装は搭載せず防空はRAM近接防空ミサイルに留め、しかし搭載艇を4隻装備し、またNH-90哨戒ヘリコプター2機が搭載可能であり、この機体を多用途ヘリコプターへ置換えれば搭載艇と併せて相応の戦力投射能力を有しています。
ドイツ海軍が重視したのは戦力投射能力で2年間入渠せず母港を離れ作戦可能、非対称戦争や海賊対処等に重点を置いた大型艦です。しかし、2007年に要求された艦艇であり、この2007年にNATOとロシアの関係が在った、2020年代のロシア脅威再燃を前に対空戦闘能力の低さと対潜戦闘能力の欠如という要求そのものが、時代遅れであると指摘されます。
■イギリス原潜アンソン建造進捗
原子力潜水艦の建造はかなり時間がかかると共にこの5番艦を建造するまでにネームシップからの時間を考えればどんどん新型を開発する日本の通常動力潜水艦と云う方式は選択肢として有用とおもうのだが。
イギリス海軍が建造する攻撃型原潜アンソンが初のトリムダイビング潜航試験を完了させました。アンソンはキングジョージ五世級戦艦の名を継ぐ潜水艦としてデボンシャーのBAEシステムズ社工場にて建造中のアスチュート級攻撃型原潜の5番艦で、全長は97mと水中排水量は7400t、速力は29ノットで魚雷やトマホークミサイル等38発を搭載する。
アスチュート級攻撃型原潜一番艦アスチュートは2010年に就役、攻撃型原潜としては世界で最も静粛性に優れた潜水艦とされていました。トリムダイビング潜航試験は造船所敷地内において実施され、所謂公試ではありませんが、潜航時の均衡や水密区画の確認など潜水艦建造では重要な過程です。BAE社ではアンソン以降の潜水艦も建造をすすめています。
■インドネシアスコルペヌ級導入へ
オーストラリアの潜水艦計画が二転三転の後の御決りの白紙撤回を続ける中でインドネシアは韓国からの技術導入とフランスの最新導入をすすめる。
インドネシア海軍はフランスよりスコルペヌ級潜水艦を導入する、フランスのフローレンヌパルリ国防大臣が2月10日に発表しました、インドネシア海軍が導入を希望しているのは2隻とされ、これは先行して決定したラファール戦闘機導入と並行し交渉していたものです。インドネシアは現在、韓国が建造しているドイツ設計209型潜水艦を運用中です。
スコルペヌ級潜水艦はフランスが2005年に開発した通常動力潜水艦で輸出用に水中排水量は1070tの小型から1800tの大型まで選定出来、また基本型はディーゼルエレクトリック方式ですがAIP非大気依存推進方式への変更も可能とされています。フランスはオーストラリアへの潜水艦輸出が中断し政治問題化しましたが、隣国へも売り込みを進めています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
歴史ある艦の除籍と云うものは寂しさを感じるものですが今回は空母の話題と新しい潜水艦を建造する各国の動きについて。
アメリカ海軍は退役空母キティーホークの解体を決定しました。キティーホークは1961年に竣工しましたメガキャリアーという新しい艦隊空母の原型となったフォレスタル級空母の改良型であるキティーホーク級空母の一番艦で、二番艦にコンステレーション、三番艦にアメリカ、そして後期型にジョンFケネディが建造、いずれもすでに退役しています。
キティーホークは保存艦として維持する運動や、驚くべきことに横須賀市において保存艦としつつ艦内の航空機格納庫を市営駐車場とする驚きの構想も検討されていますが実現していません。そして2009年に退役して以降ワシントン州の海軍システムコマンドの施設において保管されていましたが2021年に解体が決定、テキサス州の解体施設へ送られます。
■キティーホーク解体決定
こちらが一般公開された空母キティーホークなのですが惜しむ気持ちならばわたしにもすこしある。
キティーホーク解体を惜しむ声は海軍内外にあるようです。キティーホークは冷戦時代の様々な歴史とともに運用された空母で、現代のアメリカ海軍を構成する幾つかの事件と遭遇しています。その一つがスービック基地で発生した人種暴動で、黒人乗員へ夜食サンドウィッチお代わり拒否という今では考えられない差別が艦を二分する暴動となりました。
黒人差別はアメリカで1960年代に大きな摩擦となりましたが、当時士官乗員348名中黒人士官は僅か5名、この暴動が海軍を差別撤廃へ大きく転換させたという。また1984年3月にはソ連潜水艦ヴィクター級K-314との衝突事故も発生、ヴェトナム、湾岸、台湾、コソボ、朝鮮と様々な危機の第一線に在った航空母艦の解体は多くの方の寂寥感を誘う様です。
■キティーホーク解体地へ最後の航海
しらね標的艦として曳航されていったのを思い出すもの。
退役空母キティーホークはスクラップとして1ドルで売却されることとなりました。この1ドルという費用は余りに安価ですが、背景には驚きの事情があります。先ず1960年代の艦艇にはアスベストを筆頭に様々な、現代では有害な資材を用いていて、その解体には完全なシーリングを行い防護服を装備した作業員が厳しい環境管理下で作業の必要がある。
キティーホークは満載排水量7万5200tの巨大な航空母艦であり、この空母を解体して得られる鉄材は膨大な量となりますが、上記事情から解体費用も膨大な金額となります。また蒸気カタパルトなど主要な機材はすでに撤去され電子機材も搭載されていません、したがって再生空母として転売する事も出来ませんし、機関さえ撤去され航行さえできません。
キティーホーク最後の航海は解体施設に向かうものですが、解体予定地はテキサス州のブラウンズビルにあるインターナショナルシプブレーキングリミテッド社の施設で、ワシントン州の海軍システムコマンドの施設からは2万5750kmの大航海が待っています、巨大すぎて曳船に曳航されたままではパナマ運河を航行できない為で、最後の航海を行います。
■イタリア海軍最新水上戦闘艦
イタリア海軍の艦艇と云うものは試行錯誤と革新を重ねていて毎回感心させられるものが多いのです。
イタリア海軍の多目的哨戒艦ジョヴァンニデッレバンデネレがジェノヴァのフィンカンティエリ社施設において進水式を迎えました。パオロタオンディレベル級の4番艦でパオロタオンディレベル級は多目的哨戒艦として設計され、ルポ級フリゲイトとミネルヴァ級哨戒艦を共通船体にて代替する構想で、多目的哨戒艦水上戦闘艦型で最初の艦となります。
パオロタオンディレベル級は艦首部分が二つに分かれている特殊な船体を採用していますが、水上戦闘艦型と哨戒艦型の二種類派生型が在り、また哨戒艦型も船体設計には余裕がある為、複合高速艇を複数搭載すると共に海兵隊員居住区画を有し、グレーゾーン事態や地域紛争等への初動として相応に機能、また余裕ある船体は長期の任務を可能としている。
ジョヴァンニデッレバンデネレが区分される水上戦闘艦型は127mm艦砲やアスター30艦対空ミサイルとオトマート2対艦ミサイルにWASSB-515魚雷発射装置等を搭載し満載排水量6200t、哨戒艦型は先行して建造される3隻が含まれ76mm艦砲と機関砲を搭載し満載排水量5880tとなっています。イタリア海軍は各型併せ16隻を建造予定となっています。
■攻撃型原潜モンタナ
ヴァージニア級攻撃型原潜も長いこと建造されているものだと驚かされるものです。
アメリカ海軍向けに建造が進んでいる攻撃型原潜モンタナは2022年2月までに最初の公試を完了させたとのこと、公試では潜水試験も実施した。モンタナはヴァージニア級攻撃型原潜21番艦としてハンティントンインガルスのニューポート造船所において建造されている原子力潜水艦で、起工式は2015年に、命名式は2020年9月に執り行われています。
ヴァージニア級攻撃型原潜はロスアンゼルス級攻撃型原潜の後継艦で、高価格の為に3隻の建造に終わったシーウルフ級攻撃型原潜と比較した場合は廉価版と云う印象はぬぐえませんが、短期間の建造に終わったシーウルフ級に対して新造の都度改良が行われているヴァージニア級攻撃型原潜は最新システムと、高度な静粛性能と水中打撃力を有しています。
■イスラエルがドイツより潜水艦
こちらは手堅い通常動力潜水艦の話題です。
イスラエルはドイツから新型のダカール級潜水艦3隻の建造契約を締結しました。ダカール級潜水艦は完全な新設計であり、ドイツのティッセンクルップ社が建造します、このティッセンクルップ社との間ではイスラエルは現在運用しているドルフィン級潜水艦を輸入しており、ドイツ設計の潜水艦は小型の206型潜水艦のイギリス生産艦も運用していた。
ダカール級潜水艦は燃料電池方式を採用する計画であり、ティッセンクルップ社では子会社のティッセンクルップマリンシステムズ社に対し燃料電池に関する新工場をキールに建設しています。就役時期などについては未定ですが、イスラエル海軍では新型潜水艦を1999年から就役したドルフィン級潜水艦の後継に位置付けているとされ、当面先と思われます。
■中国は新鋭コルベットを巡視船へ
中国海軍は相手に応じて052型防空駆逐艦と056型コルベットと022型ミサイル艇を使いわけている。
中国海軍が056型コルベット多数の中国海警局巡視船改造を開始したことが2月1日付NHK報道により明らかとなりました。海警局巡視船改造は艦対艦ミサイルこそ取り外すものの艦砲は維持され、個艦防空ミサイルに代えて機関砲が搭載、特筆すべきは少なくとも10隻が改造されているという事で、アメリカの沿岸警備隊カッター並の重武装といえます。
056型コルベットは2011年から2021年にかけ大量建造された小型水上戦闘艦で満載排水量は1500t、旧式化した初期のミサイル艇や維持費のみ掛かる魚雷艇を更新する目的で建造、76mm艦砲とHHQ-10個艦防空ミサイル、YJ-83対艦ミサイルと無人機用飛行甲板を装備し、中小国の小型艦を圧倒、10年間で72隻という大量建造を成し遂げた実績があります。
■無人原子力潜水艇ポセイドン
こんなものが太平洋を遊弋する様になりますとASWを組みなおさねばならない気がしますがそれ以上にASW能力を劇的に低下させたNATO等は気が気ではないのか、使える水準なのか。
ロシア海軍は無人原子力潜水艇ポセイドンと母艦の原子力潜水艦ベルゴロドを2022年夏ごろに竣工させる。プロジェクト09852として進められる新しい潜水艦は、2019年4月23日にセヴマシュ造船所において進水式を完了させており、従来の水中無人機UUVが航続距離の問題を抱えているのに対して核動力を備える事でこれらの問題を解決している。
無人原子力潜水艇ポセイドンは様々な用途が想定されているが、用途の一つとして核弾頭を搭載し敵拠点基地付近まで進出し攻撃する無人自爆潜水艇としての用途も考えられる。宇宙条約のような核兵器配備を禁止した条約は海洋条約には未だなく、仮に多数が同時運用されるならば、潜水艦発射弾道弾を基軸とした海軍核戦略は世代交代を迎える事となる。
■ラインラントプファルツ竣工
海上自衛隊で云えば第一世代のヘリコプター搭載護衛艦と云う水準の水上戦闘艦です。
ドイツ海軍は2022年1月、フリゲイトラインラントプファルツを就役させました。これはティッセンクルップ社において建造されていましたバーデンヴュルテンベルク級フリゲイトの4番艦で最終艦、2007年にドイツ国防省が建造契約を結んでいます。満載排水量7300tと戦後にドイツ海軍が建造した水上戦闘艦の中では最大のもので設計も特殊でした。
バーデンヴュルテンベルク級は乗員120名と特殊部隊員50名が乗艦可能で、武装は127mm艦砲とハープーン対艦ミサイル、対潜兵装は搭載せず防空はRAM近接防空ミサイルに留め、しかし搭載艇を4隻装備し、またNH-90哨戒ヘリコプター2機が搭載可能であり、この機体を多用途ヘリコプターへ置換えれば搭載艇と併せて相応の戦力投射能力を有しています。
ドイツ海軍が重視したのは戦力投射能力で2年間入渠せず母港を離れ作戦可能、非対称戦争や海賊対処等に重点を置いた大型艦です。しかし、2007年に要求された艦艇であり、この2007年にNATOとロシアの関係が在った、2020年代のロシア脅威再燃を前に対空戦闘能力の低さと対潜戦闘能力の欠如という要求そのものが、時代遅れであると指摘されます。
■イギリス原潜アンソン建造進捗
原子力潜水艦の建造はかなり時間がかかると共にこの5番艦を建造するまでにネームシップからの時間を考えればどんどん新型を開発する日本の通常動力潜水艦と云う方式は選択肢として有用とおもうのだが。
イギリス海軍が建造する攻撃型原潜アンソンが初のトリムダイビング潜航試験を完了させました。アンソンはキングジョージ五世級戦艦の名を継ぐ潜水艦としてデボンシャーのBAEシステムズ社工場にて建造中のアスチュート級攻撃型原潜の5番艦で、全長は97mと水中排水量は7400t、速力は29ノットで魚雷やトマホークミサイル等38発を搭載する。
アスチュート級攻撃型原潜一番艦アスチュートは2010年に就役、攻撃型原潜としては世界で最も静粛性に優れた潜水艦とされていました。トリムダイビング潜航試験は造船所敷地内において実施され、所謂公試ではありませんが、潜航時の均衡や水密区画の確認など潜水艦建造では重要な過程です。BAE社ではアンソン以降の潜水艦も建造をすすめています。
■インドネシアスコルペヌ級導入へ
オーストラリアの潜水艦計画が二転三転の後の御決りの白紙撤回を続ける中でインドネシアは韓国からの技術導入とフランスの最新導入をすすめる。
インドネシア海軍はフランスよりスコルペヌ級潜水艦を導入する、フランスのフローレンヌパルリ国防大臣が2月10日に発表しました、インドネシア海軍が導入を希望しているのは2隻とされ、これは先行して決定したラファール戦闘機導入と並行し交渉していたものです。インドネシアは現在、韓国が建造しているドイツ設計209型潜水艦を運用中です。
スコルペヌ級潜水艦はフランスが2005年に開発した通常動力潜水艦で輸出用に水中排水量は1070tの小型から1800tの大型まで選定出来、また基本型はディーゼルエレクトリック方式ですがAIP非大気依存推進方式への変更も可能とされています。フランスはオーストラリアへの潜水艦輸出が中断し政治問題化しましたが、隣国へも売り込みを進めています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)