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榛名防衛備忘録:島嶼部防衛にMLRSのC-2による機動展開の必要性,日本版HI-RAIN運用提案

2021-04-10 20:21:39 | 防衛・安全保障
■C-2輸送機の実力を最大限発揮
 C-2輸送機は美保への配備を完了し続いて入間への配備が開始されるとC-1輸送機の時代もいよいよ世代交代となりましょう。C-2の輸送力は凄い。

 C-2輸送機、自衛隊はこの装備を最大限活かせているのか。非常に優れた輸送機で世界中の装備品が空輸を想定する際にはC-130に搭載できるか否かという視点で開発される中、自衛隊はC-130よりも遥かに大きな輸送力を持つC-2輸送機の量産を進める一方で、この輸送力で機動展開できる装備品を余り重点的に運用していません。これで良いのでしょうか。

 自衛隊はMLRSの空輸分散運用を検討しても良いのではないか。交換が得るのはアメリカ海兵隊のHIMARSとKC-130給油輸送機をあわせた新しい運用というものが開拓されつつあるためです。HIMARS,これは戦術トラックにMLRS発射装置2コンテナのうち一つを搭載したもの、軽量ですのでC-130でも空輸できるという点が大きな強みとなっています。

 HIMARSは開発当時、なによりもMLRSが面制圧を第一としていましたので制圧範囲が半分となり、廉価版という印象が拭えなかったものですが、ロケット弾がクラスター弾から精密誘導ロケットに転換しますと、数はそれほど必要なくなり、逆に軽量で有力な精密誘導ロケットシステムの運用システムとしてHIMARSは脚光を浴びてゆく事となりました。

 日本もHIMARSを、と考えたくなりますが、実際過去に幾つか構想もあったようなのですけれども、日本にはC-2輸送機がある、つまりC-130に搭載できるという利点のHIMARSを導入せずともC-2の輸送力ならばMLRSをそのまま運べてしまうのです、またMLRSはそれ程長くありませんので一機でMLRSに加え護衛用に軽装甲機動車さえ搭載できます。

 アメリカ海兵隊のHIMARS運用は、自衛隊と適合するのか、こう疑問をもたれるかもしれませんが、実は自衛隊の必要とする運用を先取りしている方式を開拓しています、なぜならアメリカ海兵隊は島嶼部防衛を念頭に輸送機を駆使したHIMARSの運用を研究していまして、要するに中国の西太平洋地域での海軍海洋進出に真正面から向き合う想定という。

 KC-130輸送機とHIMARSを組み合わせた運用は、具体的には離島と離島に設置されている飛行場や代替滑走路を駆使しまして、中国軍の軍事侵攻が懸念される島嶼部に隣接する複数の離島へHIMARSを緊急展開させATACMS戦術ミサイルシステムによる防衛網を迅速構築、脅威が遷移した場合には輸送機の機動力で先回りする、HI-RAIN運用と命名した。

 ハイライン運用、なにかこうSF小説"宇宙の戦士"、あのガンダムに影響を及ぼした1950年代のSFシリーズその原作者、ロバートハインライン氏を彷彿とさせる命名ですが、輸送機の機動力に適合するHIMARSの軽快さを活かした運用が研究、2019年に米豪合同演習にて能力の実証演習も実施されている運用です。HI-RAIN運用、しかしC-2輸送機ならば。

 C-2輸送機ならばHIMARSで無くともMLRSを運用できる、ATACMSならば2発、M-31-GPS誘導ロケットならば12発搭載できますので、もちろん予備弾薬を搭載するとなりますと重量と容積はC-2輸送機貨物室ではかなり圧迫されてしまいますが、MLRSはHIMARSよりも不整地突破能力は高いものがありますので射撃陣地を選ばず運用可能です。

 12式地対艦誘導弾システムがあるではないか、こう反論されるかもしれませんが、12式地対艦ミサイルシステムは射撃に必要な標定車両が中隊毎にしか配備されていません、つまり、C-2輸送機に発射装置だけを搭載しても別のところから標定車両が目標情報を伝送しないことには射撃さえできません、小分けして運用する点はMLRSの強みといえるでしょう。

 MLRSは目標座標さえ把握できれば、その地点に正確にロケット弾を投射できます、自衛隊が運用しているM-31ならば射程は70km、自衛隊は導入していませんがATACMSならば300km、誘導ロケット弾は対艦ミサイルではありませんので海上目標に命中させることは現段階では不可能ですが日本は専守防衛、自国の離島沿岸部を守るためならば合理的だ。

 C-2輸送機は航空自衛隊が当面22機を導入予定です、防衛省では電子偵察機等の派生型を検討していますが、一機当たりの輸送力が大きい事からC-1輸送機の同数を装備する必要も無くなり、当初計画よりかなり数量を抑制して調達する事となってしまいました。当たり前の話ですが、輸送需要がそのままでは調達予定圧縮もある意味当然なのかもしれない。

 しかし、これは同時に89式装甲戦闘車、MLRS、16式機動戦闘車、こういったC-130輸送機では空輸出来ない装備を積極的に離島展開する訓練を行っていません、こうすることでC-2輸送機の総合評価を下げてしまっているともいえる。C-2は自衛隊には不可欠の装備と考えるが故に、自衛隊版ハイライン運用を、MLRSとC-2の組み合わせで行うべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2021-04-12 14:56:30
HIMARSの方が戦略機動上は優位ですが、
今あるのはMLRSなので仕方がないからそのまま使いましょう。
ということだと思います。
キャタピラでは長距離移動は無理だし結局大型トラックは用意しないといけない。
でも確かに2倍の積載量はいいですね。
でも代替するならHIMARSの購入だ想いますけど、
その前にクラスター禁止条約から直ぐに離脱してクラスター弾を再配備すべきですね。
155ミリ砲や70ミリロケット弾の分も含めて、クラスター禁止条約に批准した福田元首相の罪は大きいな。
周辺諸国である中国やロシア・朝鮮半島2国が大量に保有しているクラスター弾が、我が国に1発も無い事は防衛上大変勿体なくて、危険な状況ですね。
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