北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】次世代旅客機の始動とF-35巡る新展開,ラファール-タイフーン-グリペンの激闘

2020-11-24 20:20:35 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は航空に焦点を合せまして見てゆきましょう。画期的な新世代旅客機の話題と各国で進む次期戦闘機選定などに最新情報です。

 オランダのデルフト工科大学研究チームが開発する低燃費旅客機フライングVがスケールモデルの初飛行に成功したとのこと。フライングVは三角形のデルタ翼胴体に客席を配置する一種の全翼航空機のひとつ。ただ、B-2爆撃機のような全翼航空機は胴体と主翼が一体化した構造だがフライングVは燃料タンクから客室までを主翼に一体化させている。

 スケールモデルは全長3mと重量22.5kgで当然無人機、この実験はドイツ国内の空軍基地で実施され、実験にはKLMオランダ航空も支援にあたった。飛行実験は9月までに成功裏に完了したとの事だが、低速領域においてダッチロールが発生しやすく、現実的に旅客機とするにはまだまだ課題は多いとのこと。全翼機は90年代に各国が研究し実現していない。
■エアバスのゼロエミッション機
 軍用機の中でも人員輸送機や貨物輸送機に空中給油機などは旅客機を原型としているものが多く将来この種の航空機がどのように発展してゆくかは関心事でしょう。

 エアバス社は9月21日、商用旅客機初のゼロエミッション温室効果ガス排出ゼロの旅客機ZEROe計画を発表しました。エアバス社のフォーリーCEOはこの具体的計画として2035年までに実用化する方針を示しています。旅客機は長距離旅客輸送における利便性の高い交通手段である一方、一人あたりの温室効果ガス排出量が鉄道の50倍となっています。

 ZEROe計画では三機種の開発が見込まれており、水素動力を採用しターボファンエンジン方式とターボプロップ型の旅客機、そして画期的な全翼機が示されています。ターボファン型の機種は航続距離3700kmと乗客120名から200名を想定、ターボプロップ型は乗客100名と航続距離1800km、全翼機方は乗客200名規模のものを構想しているとのこと。

 水素動力は過去のヒンデンブルク号事故を思い出しますが安全技術が確立、新型コロナウィルスCOVID-19感染拡大に伴う感染防止の観点から移動が抑制され、全世界の旅客航空会社は空前の不況状態にあり、老朽機から駐機を断念し解体が前倒しとなっています。こうした中で遠くない将来に旅客機の世代交代が前倒しされる事を見込んでいるのでしょう。
■F35参加!フィンランドF-X
 次期戦闘機選定は世界各国で進むところではありますが長く活躍した名機の後継程時間がかかる模様です。

 アメリカ政府は10月10日、フィンランド空軍次期戦闘機選定へのF/A-18E/F戦闘攻撃機とF-35戦闘機の輸出に関する承認を実施した。現在フィンランドでは旧式化が進むF/A-18C/D、フィンランド空軍名称F-18戦闘機の後継機を選定中だ。フィンランド空軍次期戦闘機選定はタイフーン、ラファール、グリペン、スーパーホーネットが対象である。

 F-35は唐突に候補に加わった構図である。フィンランド政府はF-35の候補追加に先立ち、2021年度戦闘機関連予算を20億ドルから58億ドルに大幅増額させており、F-35戦闘機が採用された場合は64機とエンジン66基など関連資材を含め125億ドル規模の契約になると考えられている。F/A-18F選定の場合は147億ドルで64機、内14機がEA型となる。
■スイスF-X可否へ国民投票
 スイスでは次期戦闘機の機種は兎も角として直接民主制の国ゆえにその必要性そのものの国民投票が行われたという。

 スイス政府は9月27日、F-5E戦闘機後継として空軍が導入する次期戦闘機にかんする64億スイスフランの支出について国民投票を実施し了承を得ました。64億スイスフランは60億ドル、この巨費を投じて40機の戦闘機を導入する近代化構想については2016年に野党が疑義を提示しており、4年間の準備期間を受けて国民投票で民意を問うたかたちです。

 F-5E戦闘機のほか、次期戦闘機は選定長期化によりF/A-18C戦闘機の後継も担う事となり、現在、F-35A,F/A-18E/F,ラファール、ユーロファイターが選定中で2022年までに決定し2025年より導入を開始します。スイス空軍は戦闘機稼働率の観点から緊急発進などの防空は平日に限定している苦肉の策を講じており、40機の新戦闘機導入の必要性があります。
■オランダ発表F35落雷注意
 F-35戦闘機について気になる情報がありました、落雷の影響があるということで墜落には至らなかったのは幸いですが。

 オランダ空軍レーワルデン基地所属のF-35ライトニングが飛行中に落雷で損傷する事案が発生しました。これは9月18日にオランダ空軍が発表したもので、オランダ空軍のF-35Aが飛行中に落雷を受け、その後基地に帰投すると燃料タンク内の圧縮装置OBIGGS主管系統の一部に破損が認められたという。オランダ空軍におけるF-35運用は開始されたばかり。

 F-35を製造するロッキード社はオランダ空軍の発表を受け、同様の問題は各国F-35の間で既に過去4件起きていると発表しました。これを受けての対処法として、F-35を飛行させる場合は雷雨や雷雲を可能な限り避けると共に、地上でも発雷が危惧される状況では極力シェルターに格納、露天駐機はエプロン地区付近に避雷針を置く安全策を提示しています。
■中国J-20圧勝の軍新聞広報
 F-15戦闘機が将来立ち向かわねばならない航空情報ではありますがプロパガンダを含めて少し慎重に見てゆきたい報道が。

 中国空軍は西安基地新聞として14日、最新のJ-20戦闘機について異機種対戦闘機訓練において1:17の戦果を挙げたとして最新鋭戦闘機の実力を誇示しました。J-20は2019年より部隊配備が開始された新型機で、今回演習の内容が発表されたのは9月ですが、1:17の戦果を挙げた空戦訓練は1月に実施されたものといい、発表まで九カ月を経ていました。

 J-20戦闘機の圧倒的高性能を九カ月を経て誇示するのは、先月より運用を開始したインド空軍のフランス製ラファール戦闘機配備を受けてのものとみられ、西安基地新聞では重ねてラファールの様な第四世代戦闘機、正確には4.5世代機ですが、J-20のような新世代戦闘機には対抗できない、として中国空軍の優位性を広く部内外に示す目的が考えられます。
■ギリシャがラファール導入
 ギリシャ空軍ミラージュ2000に続く次期戦闘機選定に関する話題が入りました。

 ギリシャのミソキタス首相は九月、旧式化が進むミラージュ戦闘機の代替にフランスから最新鋭のラファール戦闘機18機を導入すると発表した。ギリシャ空軍は1985年に第一次契約として40機のミラージュ2000を導入、続いて2000年に改良型のミラージュ2000-5を15機導入している。一部報道によれば18機のラファール内6機は無償供与ともされる。

 ラファールの導入とともにダッソーアビエーションとギリシャ政府の契約には旧式化が進むミラージュ2000の内10機について、ミラージュ2000-5相当への改修も含まれているとされる。ミラージュ2000の近代化改修は前より検討が進められていたがラファールの導入はトルコギリシャ摩擦に伴う地域安定化へ急遽、フランスが供与を決定したものである。
■クロアチアF-XにJAS39提案
 MiG-21戦闘機後継機を探すクロアチアにスウェーデンが一世代前のJAS-39を提案したもよう。

 スウェーデン政府は9月9日、クロアチア政府が進める次期戦闘機計画についてJAS-39C/Dグリペン戦闘機12機を提案しました。クロアチア空軍は2010年代に戦闘機として旧ソ連製MiG-21戦闘機24機を運用していますが2020年代に入ると共に老朽化と部品枯渇からMiG-21は12機まで減少、内4機は練習型で戦闘機実質8機となっています。

 スウェーデン政府はJAS-39の提案に併せクロアチア防衛産業近代化への包括協力を契約一部に含めており、またJAS-39は東欧地域ではチェコ空軍とハンガリー空軍に採用されている事から東欧地域全体での相互運用性を利点として提示しています。JAS-39はこの他フィンランド空軍やスイス空軍へも提案、また現在南アフリカやタイ空軍にて運用中です。
■タイフーンに新型レーダー
 新世代のレーダーは防衛装備庁も開発していますが、イギリスではタイフーン戦闘機の将来レーダーに新しい性能を盛り込むようです。

 イギリスのジェレミークイン国防大臣は9月3比の記者会見で現在開発が進むユーロファイタータイフーン戦闘機用のECRS-Mk2-MFA多機能アレイレーダーは現在問題となっている無人機への対処能力を持つことを明らかにしました。ECRS-Mk2-MFA多機能アレイレーダーはBAEとレオナルド社により3億1700万ポンドを投じ開発進められています。

 ECRS-Mk2-MFAはAESA方式を採用、民生型無人機を悪用したテロ等に対し同時多数を識別追尾し自動応答により無人機番号を確認すると共に電子攻撃を加え誘導乃至撃墜する能力を有し、これは昨年までに問題となった環境活動家無人機によるとされる旅客機反対への主要空港旅客機発着妨害等をタイフーン戦闘機は電子的に阻止出来る事を意味します。
■ロシアTu-160超長距離飛行
 Tu-160,日本周辺空域へ進出する頻度は低いのですが非常に速度が大きく緊急発進が大変だという。

 ロシア航空宇宙軍は9月19日、ツポレフTu-160超音速爆撃機による長距離飛行訓練を実施、滞空時間25時間と連続飛行距離20000kmを達成したと発表した。この長時間長距離飛行には三度の空中給油により実現している。Tu-160超音速爆撃機は1987年より導入開始となった戦略爆撃機で、ロシア航空宇宙軍には35機が量産、配備されている。

 Tu-160超音速爆撃機は全長54mで最大離陸重量275tという巨人機だ。最大兵装搭載能力は40tで可変翼を用いた超音速侵攻を任務としており、形状はアメリカのB-1ランサーを参考としているともいわれる。航続距離は14000kmであり、今回は空中給油により達成した形だ。乗員は4名、今回の25時間に渡る飛行でどう交代したかは発表されていない。
■グローバルアイがUAEに納入
 E-3やE-767のような早期警戒管制機を欲しくとも導入できない諸国ではコミューター機派生の手頃な早期警戒機が躍進しています。

 スウェーデンのサーブ社は10月、グローバルアイ早期警戒機をUAEアラブ首長国連邦に納入した。グローバルアイの納入は2020年4月の初号機に続く2号機、エリアイ空中警戒監視レーダーシステムをカナダのボンバルディア社製グローバル6000旅客機に搭載したもので、アラブ首長国連邦では近年増大する無人機長距離攻撃へこの種の装備を必要としていた。

 エリアイ空中警戒監視レーダーシステムはサーブマイクロウェーブシステムズ社が開発したレーダーシステムで小型旅客機などに搭載を想定したカヌー型AESAレーダーアンテナと制御装置を基本とする。Sバンドレーダーにより最大440km、戦闘機規模の目標でも330kmで探知しミサイル等も小型目標も150kmで探知、中小国には理想的装備である。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【G3X撮影速報】イージス艦ま... | トップ | 【京都発幕間旅情】手力雄神... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事