■3.11犠牲者を悼む大空
百里基地は北海道沖を南下するソ連ロシア機への首都防空の要であるとともに、そして基地の所在する茨城県は鹿島灘の太平洋に面しています。
追悼フライト、ミッシングマンフォーメーションフライトともいう四機編隊にて基地上空に飛来し、その内の一機が上空へ急上昇してゆく編隊飛行です。ここ百里基地は茨城県、そして日本海軍の百里原飛行場がその始まりであり、茨城県は福島県に隣接しています。
東日本大震災の翌年に行われた航空祭です、ここ百里基地はRF-4戦術偵察機を運用している全国で唯一の基地ですので、大規模災害に際しては最初に離陸し情報収集にあたります、その偵察機がフィルムカメラを採用しているので現像に時間がかかるのが難点なのだけど。
大規模災害、現在ウクライナで第三次世界大戦への導火線と云うべき状況が火花を散らしている状況では若干まだ災害の方が猶予がありそうに見えてくるのですが、それでも戦術偵察機、そして今は観測ヘリコプターも全廃されている中で大丈夫なのか、と思うのです。
RF-4戦術偵察機の後継に航空自衛隊はRQ-4無人偵察機を採用しましたが、これも広範囲を長時間に渡り情報収集可能という優れた航空機なのですが、東京から大阪まで最短10分強で到達できる超音速戦闘機を用いた戦術偵察機、急ぎの場には必要だったともおもう。
次の災害は待ってくれるのだろうか、現代であれば戦闘機に搭載できる偵察ポッドでリアルタイムの画像伝送できる装備は国際市場に複数が存在します、日本は東芝が開発に失敗して後に戦術偵察機というものの選択肢が無くなったように見えるのだが大丈夫なのか。
RQ-4が一旦離陸するならば被災地の情報は持続的に入るのかもしれませんが、高高度を飛行するとはいえ旅客機との飛行管制をRF-4のように素早く展開できるのか、そもそも機数が限られるRQ-4はスクランブルのように発進できるのか、不安が残るのです。災害の際に。
ファントム、性能面では2010年代にはしかしかなり厳しい水準にありましたが、今となっては懐かしい戦闘機です。いや、後継機のF-35がもう少し早く決まっていれば、偵察ポッドだけでもデータリンク可能な新型に切り替えて、残るF-4を全部偵察機に出来たとも。
航空自衛隊が採用する前にアメリカ海軍が空母艦載機として開発したF-4ファントム、正確には空母艦載機仕様ではなく航空自衛隊はアメリカ空軍仕様のF-4Eを元に日本仕様としたものがF-4EJです。この機体は設計当時、合理的である考え方で複座となっています。
ファントムの優れている部分は無理に自動化しようとせず、二人の操縦要員に分担させることで単座戦闘機であるデルタダートに勝利しました。空母艦載機は二人乗り、アメリカはF-14戦闘機、通称トムキャットでも同様の設計思想を採用しているのが興味深いですね。
デルタダートの単座と一方、ファントムの複座、無理に自動化しないという発想は、マンパワー依存の運用が前提といえるものでして、これは徐々に自動化が進みますと影響が顕在化してゆきます。ファントムの後継機はF-35ライトニングですが、自動化が凄い事に。
F-35は整備員がタブレット端末を携帯して機体周囲で整備を開始しますと自動で同調して整備箇所を画像にて示すとともに予備部品をこれも自動で補給処に申請します、これがF-4は全部手作業という時間も手間もかかるものとなっています。人数が居れば平気なのだが。
いやF-15イーグルでさえ点検部分は前部脚部の内側に自動表示装置があり、緑ランプと赤ランプを見分けて赤ランプの点灯している番号の点検ハッチを開いて交換モジュールと差し替えることで電子整備などは自動化、F-15でも列線整備はかなり省力化されています。
しかしF-4では250ほどある点検ハッチを一つ一つ手動で整備員が開き目視にて端子に異常な煤の付着はないか、熱を持っていないかを確認するという、マンパワー依存の機体となっています、このために列線整備だけでも大量の人員が必要で、なにしろ手作業が多い。
これが現場の負担となっていたのですね。ファントムはよい戦闘機、これは間違いはありません、実際、ヴェトナム戦争では大活躍しましたし、イギリスやドイツはじめ欧州に大量供与されたファントムは強力な抑止力となり、第三次大戦の勃発を、阻止しましたし。
実際ファントムを運用している長い期間にわたり日本も周辺国から軍事攻撃を受けていません。ただ、運用する側にたちますと、ないしろ1981年からレーダーを一人ですべて運用できるほどに自動化されたイーグルを装備している航空自衛隊の視点からは、厳しい。
F-15と比較した場合でも、操縦も整備も、あらゆるめんで古い、といえるのかもしれません。ファントム飛行隊の定数は24機、交代要員を考えずに操縦要員だけを確保した場合で操縦士が48名必要です、なにしろ一人でも飛べる単座戦闘機の複座型と2倍も違います。
ファントムは二人居ないと能力が発揮できない前提での設計なのですからね。三菱重工でのライセンス生産、ファントムは三菱重工が95%のライセンス生産を実施したことで長期間の運用が可能となりました、なにしろアメリカでは制空戦闘機としては早々と交代した。
アメリカでは、制空戦闘機として陳腐化したのちワイルドウィーゼルとして防空制圧に活躍しましたが湾岸戦争を最後に退役しています。ワイルドウィーゼル、対レーダーミサイルを搭載し、本格的な航空打撃戦に先立ち自ら囮となり敵地対空ミサイル圏に飛び込む。
ファントムはワイルドウィーゼル任務に用いられただけでも優秀な特性があるといえます、敵地対空ミサイル圏内をのんびりと飛行し、撃ちあがってきたミサイルを欺瞞と電子妨害で躱しつつ急降下し敵地対空ミサイル陣地を攻撃破壊する、そんな任務に投じるのだから。
ただ、世界中に供給されたファントムはその後も現役で、最強では無かったが強力な戦闘機ではあった、無理にロールスロイス製エンジンを搭載したイギリス軍機を除き長く運用されています。この背景にはファントムが古い設計であったことが逆に寄与した、とも。
世界初のソリッドステート式コンピュータを搭載したファントム、ソリッドステートとは要するに半導体ですが、遙か後に北海道函館に亡命したソ連製MiG-25は真空管を採用していましたが、ファントムは半導体を、EMP電磁パルスシールドと共に採用していたのです。
しかし1950年代の半導体性能はたかが知れていますし何より巨大でした、これが逆に旧式となったコンピュータを新型へ置き換えるための空間的余裕となったのかもしれません、同じことは同時期に開発されたホーク地対空ミサイルにもあてはまるのかもしれませんね。
ホークミサイルも、草創期の電子計算機を積み込むために直径35cmと巨大な演算装置を組み込む大きさを有していたために、後に新型の誘導装置などにも対応、2020年代でも日本を始め数多くの諸国で第一線運用に耐える能力を維持しつつ運用中です。F-4と似ています。
航空自衛隊のファントムは2021年に運用を終了しましたが、防衛出動などに用いられる事は無く、RF-4は災害派遣に活躍、F-4は日本に戦争の可能性が及ぶのを遠ざけ抑止力として威力を発揮しました。後継機となるF-35もその偉功を引き継げるように切に願うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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百里基地は北海道沖を南下するソ連ロシア機への首都防空の要であるとともに、そして基地の所在する茨城県は鹿島灘の太平洋に面しています。
追悼フライト、ミッシングマンフォーメーションフライトともいう四機編隊にて基地上空に飛来し、その内の一機が上空へ急上昇してゆく編隊飛行です。ここ百里基地は茨城県、そして日本海軍の百里原飛行場がその始まりであり、茨城県は福島県に隣接しています。
東日本大震災の翌年に行われた航空祭です、ここ百里基地はRF-4戦術偵察機を運用している全国で唯一の基地ですので、大規模災害に際しては最初に離陸し情報収集にあたります、その偵察機がフィルムカメラを採用しているので現像に時間がかかるのが難点なのだけど。
大規模災害、現在ウクライナで第三次世界大戦への導火線と云うべき状況が火花を散らしている状況では若干まだ災害の方が猶予がありそうに見えてくるのですが、それでも戦術偵察機、そして今は観測ヘリコプターも全廃されている中で大丈夫なのか、と思うのです。
RF-4戦術偵察機の後継に航空自衛隊はRQ-4無人偵察機を採用しましたが、これも広範囲を長時間に渡り情報収集可能という優れた航空機なのですが、東京から大阪まで最短10分強で到達できる超音速戦闘機を用いた戦術偵察機、急ぎの場には必要だったともおもう。
次の災害は待ってくれるのだろうか、現代であれば戦闘機に搭載できる偵察ポッドでリアルタイムの画像伝送できる装備は国際市場に複数が存在します、日本は東芝が開発に失敗して後に戦術偵察機というものの選択肢が無くなったように見えるのだが大丈夫なのか。
RQ-4が一旦離陸するならば被災地の情報は持続的に入るのかもしれませんが、高高度を飛行するとはいえ旅客機との飛行管制をRF-4のように素早く展開できるのか、そもそも機数が限られるRQ-4はスクランブルのように発進できるのか、不安が残るのです。災害の際に。
ファントム、性能面では2010年代にはしかしかなり厳しい水準にありましたが、今となっては懐かしい戦闘機です。いや、後継機のF-35がもう少し早く決まっていれば、偵察ポッドだけでもデータリンク可能な新型に切り替えて、残るF-4を全部偵察機に出来たとも。
航空自衛隊が採用する前にアメリカ海軍が空母艦載機として開発したF-4ファントム、正確には空母艦載機仕様ではなく航空自衛隊はアメリカ空軍仕様のF-4Eを元に日本仕様としたものがF-4EJです。この機体は設計当時、合理的である考え方で複座となっています。
ファントムの優れている部分は無理に自動化しようとせず、二人の操縦要員に分担させることで単座戦闘機であるデルタダートに勝利しました。空母艦載機は二人乗り、アメリカはF-14戦闘機、通称トムキャットでも同様の設計思想を採用しているのが興味深いですね。
デルタダートの単座と一方、ファントムの複座、無理に自動化しないという発想は、マンパワー依存の運用が前提といえるものでして、これは徐々に自動化が進みますと影響が顕在化してゆきます。ファントムの後継機はF-35ライトニングですが、自動化が凄い事に。
F-35は整備員がタブレット端末を携帯して機体周囲で整備を開始しますと自動で同調して整備箇所を画像にて示すとともに予備部品をこれも自動で補給処に申請します、これがF-4は全部手作業という時間も手間もかかるものとなっています。人数が居れば平気なのだが。
いやF-15イーグルでさえ点検部分は前部脚部の内側に自動表示装置があり、緑ランプと赤ランプを見分けて赤ランプの点灯している番号の点検ハッチを開いて交換モジュールと差し替えることで電子整備などは自動化、F-15でも列線整備はかなり省力化されています。
しかしF-4では250ほどある点検ハッチを一つ一つ手動で整備員が開き目視にて端子に異常な煤の付着はないか、熱を持っていないかを確認するという、マンパワー依存の機体となっています、このために列線整備だけでも大量の人員が必要で、なにしろ手作業が多い。
これが現場の負担となっていたのですね。ファントムはよい戦闘機、これは間違いはありません、実際、ヴェトナム戦争では大活躍しましたし、イギリスやドイツはじめ欧州に大量供与されたファントムは強力な抑止力となり、第三次大戦の勃発を、阻止しましたし。
実際ファントムを運用している長い期間にわたり日本も周辺国から軍事攻撃を受けていません。ただ、運用する側にたちますと、ないしろ1981年からレーダーを一人ですべて運用できるほどに自動化されたイーグルを装備している航空自衛隊の視点からは、厳しい。
F-15と比較した場合でも、操縦も整備も、あらゆるめんで古い、といえるのかもしれません。ファントム飛行隊の定数は24機、交代要員を考えずに操縦要員だけを確保した場合で操縦士が48名必要です、なにしろ一人でも飛べる単座戦闘機の複座型と2倍も違います。
ファントムは二人居ないと能力が発揮できない前提での設計なのですからね。三菱重工でのライセンス生産、ファントムは三菱重工が95%のライセンス生産を実施したことで長期間の運用が可能となりました、なにしろアメリカでは制空戦闘機としては早々と交代した。
アメリカでは、制空戦闘機として陳腐化したのちワイルドウィーゼルとして防空制圧に活躍しましたが湾岸戦争を最後に退役しています。ワイルドウィーゼル、対レーダーミサイルを搭載し、本格的な航空打撃戦に先立ち自ら囮となり敵地対空ミサイル圏に飛び込む。
ファントムはワイルドウィーゼル任務に用いられただけでも優秀な特性があるといえます、敵地対空ミサイル圏内をのんびりと飛行し、撃ちあがってきたミサイルを欺瞞と電子妨害で躱しつつ急降下し敵地対空ミサイル陣地を攻撃破壊する、そんな任務に投じるのだから。
ただ、世界中に供給されたファントムはその後も現役で、最強では無かったが強力な戦闘機ではあった、無理にロールスロイス製エンジンを搭載したイギリス軍機を除き長く運用されています。この背景にはファントムが古い設計であったことが逆に寄与した、とも。
世界初のソリッドステート式コンピュータを搭載したファントム、ソリッドステートとは要するに半導体ですが、遙か後に北海道函館に亡命したソ連製MiG-25は真空管を採用していましたが、ファントムは半導体を、EMP電磁パルスシールドと共に採用していたのです。
しかし1950年代の半導体性能はたかが知れていますし何より巨大でした、これが逆に旧式となったコンピュータを新型へ置き換えるための空間的余裕となったのかもしれません、同じことは同時期に開発されたホーク地対空ミサイルにもあてはまるのかもしれませんね。
ホークミサイルも、草創期の電子計算機を積み込むために直径35cmと巨大な演算装置を組み込む大きさを有していたために、後に新型の誘導装置などにも対応、2020年代でも日本を始め数多くの諸国で第一線運用に耐える能力を維持しつつ運用中です。F-4と似ています。
航空自衛隊のファントムは2021年に運用を終了しましたが、防衛出動などに用いられる事は無く、RF-4は災害派遣に活躍、F-4は日本に戦争の可能性が及ぶのを遠ざけ抑止力として威力を発揮しました。後継機となるF-35もその偉功を引き継げるように切に願うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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