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【京都幕間旅情】永観堂,御本尊見返りの阿弥陀奉じる堂宇に拝し社会福祉概念成立前の東五条悲田院願い紡ぐ

2023-12-13 20:00:26 | 写真
■阿弥陀信仰の永観さん
 夕陽も迫る頃合い故に先ず伽藍と御本尊さんよりも庭園を散策しました後にいよいよ拝観へ。

 永観堂、清和天皇より定額寺としての勅許とともに禅林寺の寺号を賜りましたので禅林寺と称するべきなのですが、ここが永観堂と親しまれているのは、7世住持の永観律師、永観堂は“えいかんどう”と読むのですがこの永観さんは、ようかんさん、といいます。

 源国経という文学博士を父に持つ永観さん、11歳で禅林寺に出家しますと先ず東大寺にて南都六宗の三論宗を学びます、その三論宗は浄土教という阿弥陀信仰を中心に救済を説かれていまして、毘盧遮那仏を奉じていた禅林寺に在って、念仏の教えに惹かれた、と。

 阿弥陀信仰、さすがに毘盧遮那仏さんのとなりに阿弥陀さんを奉じるわけには、二尊院さんのような例もあるのですから並んでもらえばよかったと現代の視点からは考えてしまうのですが、流石に当時は難しく、永観さんは先ず貧救院の支援で教えを実践しました。

 東五条悲田院、平安時代の貧救院として設置されていまして、永観さん、近くに医院を併設した寺院薬王寺を開き、ここに当時は薬用になるとされた梅林を整備するとともに阿弥陀さんを奉じまして、貧困救済と病人の無償治療という社会貢献をはじめたのです。

 禅林寺にもこの悲田院を拓くこととなり、こうして民衆からの崇敬を集めましたことで、親しみを込めて永観堂と呼ばれるようになりました。ご本尊は見返りの阿弥陀、といいまして、念仏を唱え続ける高齢となりました永観さんに振り返ったという謂れがあります。

 見返りの阿弥陀、実際いまもご本堂を拝観しますと不思議に左向きに振り返る阿弥陀像を拝むことができるのですが、これは疲れて立ち止まった永観さんを振り向き、永観おそし、と言った、立ち止まるな民衆のために祈り続けろ、と励ましたという謂れという。

 応仁の乱、堂宇は大きな被害を受けてしまいました。いや実際のところ京都市内で鎌倉時代の建物や室町初期の建物というものは、あるにはあるのですけれども数は僅かしかなく、鎌倉時代の建物は京都市内には私の知る限り一つとなっています、全て焼けている。

 堂宇は、しかし今ある通り再建されていまして、そしてご本尊はじめいくつもの仏像が今も輝きを放っているところは、やはり戦乱の時代にあっても何とか守ろうとしました先人たちの努力がありまして、だからこそ禅林寺も親しまれ、永観堂として今に至ります。

 釈迦堂、この建物は方丈となっていまして拝観に際して、その堂宇の中を巡り、今この紅葉の時期は、撮影は禁止なのですけれども特別寺宝展が開かれ、まあそのぶん拝観料も少し高くなるのですが、拝観に巡る際にも再建に尽力した方々の描かれた寺宝が並ぶ。

 方丈となっています釈迦堂は京都府指定有形文化財となっている建物でして、古い建物であるのは確かなのですが、寺伝にはその造営は応仁の乱終戦間もない永正年間の西暦1504年から1521年頃、後柏原天皇により御所の建物を建材として造営されたという。

 後柏原天皇の尽力で再建されたというのですが、ただ今ある建物の建材は寛永年間のもので、実際には寛永4年こと西暦1627年とされています。磨き上げられたろうか、という表現はあるのですが、多くの方々が拝観に床を歩くことで磨いた構図におもえる。

 多宝塔、釈迦堂とともに並ぶ。そうここ永観堂といえばこの多宝塔が椛に浮かぶ様子なのですが、聞けば歴史は意外と新しい、戦前、といっても応仁の乱の前ではなく太平洋戦争の前という事なのですが、1928年、昭和3年、実業家の寄進という歴史があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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