北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮-平安北道泰川付近弾道ミサイル発射,25日0653時発射のミサイルは不規則軌道を採り600km飛翔

2022-09-26 07:00:01 | 防衛・安全保障
臨時情報-日本海弾道弾落下
 北朝鮮は25日0653時頃、朝鮮半島北西部平安北道の泰川付近から弾道ミサイル一発を日本海に向け発射しました。飛翔距離は600kmとの事ですがミサイルによる船舶や航空機への被害などはありません。

 平安北道泰川付近から発射された弾道ミサイルは到達高度60kmで水平飛行距離600kmを飛翔し日本海に落下したとのこと。韓国は本日26日よりアメリカの原子力空母が参加する合同演習を予定しており、バイデン大統領も訪韓予定、此処に照準を絞っての示威行動と見られます。弾道ミサイルは最高速度がマッハ5程度、変則的な軌道を採り落下しました。

 変則機動、北朝鮮が現在開発を試みているのは日米のミサイル防衛システムを回避する為の次世代ミサイルです。これは弾道ミサイルは発射すると宇宙へ向け上昇し放物線を描く様に目標へ到達するという方式、第二次世界大戦中にドイツ軍がイギリス本土へ撃ちこんだV2ミサイルと基本的に同じという状況から脱却することがその目的といえましょう。

 弾道ミサイルが放物線を描く限り、上昇段階の数カ所をレーダーにより標定する事で大まかな落下予想地域が判明する為、迎撃ミサイルを展開させやすくなるのですが、不規則軌道を描いた場合、何処に落下するのかが分りにくくなりますし、宇宙空間に向けて上昇するのではなくより低い高度を飛行するならば、レーダーに発見されるまで時間を稼げます。

 しかし、技術的には非常に難しいのです。何故ならば弾道ミサイルは高い高度まで上昇する事が目的ではなく、高い高度から落下する際に音速の十倍前後、衛星軌道よりも上に到達するミサイルでは音速の二十倍以上の速度を発揮します、が、この速度で不規則軌道を行う事は、自動車が最高速度で小刻みな蛇行運転をするような、分解の危険が生じます。

 変則的な軌道をミサイルが分解しないよう実現するには、弾道ミサイルの速度を落とせばよいのですが、弾道ミサイルが迎撃しにくい要因はその速度にあるのですから、速度を落とせばミサイル迎撃システムにも捕捉されやすくなり、不規則な軌道を高速と両立させる技術が、求められている、だからこそ北朝鮮はミサイル実験を繰り返しているのでしょう。

 日本のミサイル防衛については、課題です。北朝鮮の様な核保有国の核ミサイルへの恫喝は、従来であればこちらも同等の核戦力を配備し相互確証破壊、相手が撃ちこむならばこちらも核を使うと示唆する方式が冷戦時代に用いられてきました。しかしミサイル防衛という、相手が撃ちこもうとするならば命中する前に迎撃するという選択肢を拓いている。

 ミサイル防衛ですが、不規則な軌道を採る弾道ミサイルに対しては、探知技術や中高度での迎撃ミサイル等を併せて開発する必要があります。防衛費を節約だけしたいならば報復戦力という選択肢は無いわけではないのですが、日本は核兵器を保有しないという国民的合意のもとで安全保障政策を一貫しています、すると迎撃技術を高めなければなりません。

 ミサイル防衛は巨額の費用を要しますが、逆に従来のミサイルならば迎可能な能力を日本が整備したからこそ、北朝鮮は新技術を開発しようとしている。北朝鮮に核兵器と運搬手段である弾道ミサイルを放棄させる強制手段を執らない事も日本国民の世論の一致するところでありますから、防衛費は高くなるのですが、今後も迎撃技術を強化してゆく必要があるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【14】スクランブル!緊急発進は首都防空の訓練展示(2012-10-20)

2022-09-25 20:17:04 | 航空自衛隊 装備名鑑
■ファントムスクランブル
 百里基地第七航空団の任務は首都防空、スクランブルの緊急発進展示はそのまま日本御首都防空を再現する訓練展示でもあるのです。

 F-4戦闘機は歴史の中に去りましたが、航空家遺体はF-4戦闘機にASM-2空対艦ミサイル運用能力を付与し、対艦攻撃の一翼を担う事で戦闘機としての運用寿命を延伸しました、レーダーも換装していまして、もっとも換装したAPG-66は2000年代には旧式でしたが。

 戦闘機の支援戦闘機への運用変更は、F-86戦闘機がF-104戦闘機により置換えられた際に実施していました、もちろんF-86に対艦ミサイルを搭載する様な無茶な事はせず、500ポンド爆弾を搭載し反跳爆撃にて対艦攻撃を行うという、一寸難しい運用変更でしたけれど。

 ASM-2空対艦ミサイルは射程が150km程度と長く、F-4戦闘機自体は旧式であってもASM-2を敵艦隊より遠方から投射する運用ならば、生存性と戦果を両立できるものでした。もう一つ、レーダーを乾燥してドイツのF-4戦闘機の様にAMRAAMを運用できればとも。

 航空自衛隊のF-4戦闘機、しかし思った以上に運用が継続しまして、この写真を撮影した2012年から実に十年近く現役に在った事は驚きなのですが、仮に防衛出動の際にF-4はどういった運用を想定していたのかが関心事でした、しかも最後の任務は首都防空なのです。

 首都防空、ファントムは南西方面の緊張増大と共に、長らく配備されていた沖縄の那覇基地と、南九州の新田原基地を置換えるべく、首都防空に当っていましたこの第7航空団からイーグルを送り出しファントムを引き取る事としていました、2012年はこの過渡期です。

 東京急行という、ロシア軍ミサイル爆撃機が北海道北部から三陸海岸沖に沿って高速で南下し東京に接近する運用、これを迎撃するのが百里基地第7航空団の任務なのですが、爆撃機ならばファントムからのスパロー空対空ミサイルでも迎撃できるのかもしれません。

 スクランブル発進に際しては、確かにそうなのですが、しかし有事の際を考えますとロシア軍ミサイル爆撃機の任務は長射程の空対地ミサイル投射であり、平時の防空識別圏内進入は単に示威行為でしかありません、するとスパローに巡航ミサイルを迎撃できるのか。

 AAM-4空対空ミサイル、三菱電機が開発した国産の空対空ミサイルであれば射程も長いですしAMRAAM以上に巡航ミサイル迎撃を想定した設計で、何故ならば元々は空対空ミサイルに加え艦対空ミサイルとして護衛艦に搭載し対艦ミサイルを迎撃する計画でしたから。

 航空自衛隊はこれ程ファントムを長く運用するつもりだったのだろうか、逆に考えてしまうのはF-4戦闘機後継機選定が本格化したのが小泉内閣時代であったということです、つまり2002年、いまから20年も前の話であり、この北大路機関さえ出来る前の話なのです。

 次期戦闘機選定は、浜田防衛大臣、現職の浜田防衛大臣が前に防衛大臣を務めた時代に遡るものでして、この頃は浜田防衛大臣が当時、F-22戦闘機の導入を望む、こう発言していました通り、現在航空自衛隊に配備されているF-35ではなくF-22の導入を目指していた。

 F-22戦闘機は、しかし覚悟が必要、こう云われたほどに機密の塊であると共に恐らく日本でのライセンス生産は不可能という、高度な機密の戦闘機でした。ただ、当時開発が進められていたF-35戦闘機はJSF計画と呼ばれた段階、中々に使い難さが予想されたもの。

 JSF計画当時のF-35戦闘機はSが打撃を意味し、実質は戦闘攻撃機といいますか戦域優位獲得の為の多目的戦闘機が優位獲得の一環として空対空戦闘を行うという認識であり、専守防衛の日本としてはF-22戦闘機のほうが防空戦闘に適した機体とも考えられています。

 専守防衛、しかしこれは今の日本も含めてみないようにしているだけで、戦域優位に戦闘機が制空権だけを考える時代はとうの昔に終わり、結局は策源地攻撃や防空制圧はじめ、つまり専守防衛の範疇でも敵の攻撃与点を爆撃し無力化する必要があるという現実が。

 ファントムは、こうした議論の末に結局思ったよりも長く使ってしまった戦闘機、という印象が拭えないのですね。他方で、政治はもう少し例えば、用兵側である航空自衛隊が機種選定を完了できないならば三菱重工のF-2戦闘機の製造を延長する、というような。

 F-2には制空戦闘任務偏重の航空自衛隊には一部懐疑的な意見があるといい、しかしそれでもこうした柔軟な選択肢でF-4をF-2に切替える努力をしてほしかったのですが、石破防衛庁長官時代の決定が響いていたのです。ここで日本の前例踏襲主義が響いたのではとも。

 納税者に説明できないという石破防衛著長官の決定がそのまま覆されずに堅持されてしまいまして、当時は130機の生産計画を96機に縮小してしまいます、これが逆に思うのは、1950年代設計のファントムを2010年代以降も使う事が納税者への説明か、ともおもう。

 F-2戦闘機を予定通り130機生産し、ファントムの耐用年数に併せて先ず一個飛行隊を置換え、まだ後継機が選定出来ないようならばFSX計画の時点での141機まで生産を戻し、そして二個飛行隊を中期防衛力整備計画で整備する、こうした選択肢はあってよかった。

 RF-2戦術偵察機、こうした上でF-4後継機がF-35でもF/A-18E/FでもF-16Vでもストライクイーグルでもいいのですが、決定した後には増強したF-2戦闘機は逆にRF-4戦術偵察機の後継機と改修、改修といっても偵察ポッドを搭載するだけですが、使い道は幅広い。

 ファントムをここまで長く運用する前提がもしあったならば、EJ改への改修に重ねて再度レーダーを換装しAPG-2のようなF-2と同等のレーダーに置換えるか、若しくはF-2のレーダー換装を急ぎ、降ろしたF-2のレーダーをファントムに積む選択肢はあったのでは。

 F-2戦闘機はAAM-4運用能力付与が遅れ、セミアクティヴレーダー誘導方式のミサイルではAAM-4やAMRAAMのようなアクティヴレーダー誘導方式のミサイルよりも運用成約が大きくなってしまいましたが、F-2とF-4,同じレーダーを使っていれば話は変ります。

 能力向上改修は、機種ごとに開発費用が決まりますので、開発費用を機数で割るならば機種当たりの保有数が多い方が有利です、すると、F-2とF-4が同じレーダー系統を使っていたならば、一つの改修プログラムで二機種を改修できる事になるのですね、費用を抑えて。

 AAM-4やAMRAAMのようなアクティヴレーダー誘導方式のミサイル運用能力付与も、レーダーを統合するか機種を統合していたならば早められたのではないか、こう考えられるのです。しかし事情が在った、F-22の導入案の他に、防衛費を増やせないという事情が。

 北朝鮮ミサイル開発が加速すると共に2006年には核実験を実施した事でミサイル防衛の優先度が高まり、しかし財政再建により防衛費を増やせない事で日本の防衛予算は新任務を前に非常に逼迫し、後周しさせる装備計画が多くなりました、ここに甘えたようにおもう。

 ファントムは良い戦闘機なのですが2020年代に相応しい戦闘機なのかと問われますと、無人機母機やミサイル運搬機ならば兎も角、戦闘機として使いにはEJ改の性能では限界を超えていたように思う、予算が無いという言い訳とはいえ、政治は反省すべき命題でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】西九州新幹線開通!特急かもめ号は特急かささぎ号へ,九州旅客鉄道787系電車30年目の挑戦

2022-09-25 18:18:03 | コラム
■在りし日の長崎本線
 西九州新幹線開通という祝賀は同時に前の列車が歴史の彼方へ去るという転換期であったりもします。

 九州旅客鉄道787系電車、1992年に登場した列車で当時存在を知ったのは旅行会社のパンフレットでした、もちろんこんな先進的なデザインの特急は日本ではなかなか想像がつかなかったものですから、ヨーロッパ旅行でのフランスTGVを紹介したのかと思いましたね。

 かもめ。この三連休に運行を開始した西九州新幹線により新幹線列車名となりました特急かもめ、在りし日の姿です。もともとこの787系電車は1992年に西鹿児島と博多を結んだ特急つばめ運用に当る列車としてデビュー、つばめ、も今は九州新幹線の名称なのです。

 長崎本線へは1993年から運用開始となりましたが、1996年のダイヤ改正で883系が導入開始となったこともあり、一時的に長崎本線かもめ運用から撤退します、しかし逆に2000年からハウステンボスと博多を結ぶ特急ハウステンボスとして佐世保線大村線へ乗り入れ。

 かもめ運用には2001年から再開しまして、しかし九州新幹線の建設が進む中で九州の特急は、九州はビジネス特急と観光特急という二つの用途に合って観光特急のビジネス化というような、乗り心地と機能性を両立した車両が増えてゆきました、見た目も中々優美です。

 西九州新幹線の武雄温泉駅長崎駅間開業に伴い、リレーかもめ号が武雄温泉駅と博多駅を結ぶところとなりまして、少々乗換の手間が荷物が有る時は困りますのでチッキのようなサービスが欲しいと思いつつ、リレーかもめ運用は885系電車で統一されているとのこと。

 かささぎ、博多駅や小倉駅や門司港駅から肥前鹿島駅や佐賀駅を結ぶ新特急が9月23日から運行開始となりまして、わかさぎ、と聞き間違えたのですが新特急かささぎ、が787系での運行となっています。デビュー30周年の787系、まだまだ活躍の場は広そうですね。

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戦術核兵器使用の可能性-ロシア核兵器使用の条件を考える,示威行動か核実験か化学兵器など使用の懸念と共に

2022-09-25 07:01:20 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 即座に使用される可能性は低いが実戦投入される可能性を常に考慮し対策を考えなければならないのが、核兵器です。

 ロシア軍が仮に戦術核兵器を使用する場合は、どういった状況が考えられるか。21世紀に入り、冷戦時代の全面核戦争という安全保障上のリスクを度外視し国際関係や世界政治を展開している現状では、ならば実際に使われた場合はどうするのか、という問題領域を、あり得ない事態、単純に選択肢から省いてよいのか、こうした疑問が湧いてくるのです。

 大陸間弾道弾実射演習、劣化ウラン弾の大規模使用、ダーティボムの使用、ロシア領内での地下核実験、ロシア領内での大気圏内核実験、北極圏での大気圏内核実験、実のところ、いきなりウクライナ国内での戦術核兵器使用の前に、幾つかの段階を踏む可能性が高いのではないかと考えています。一方、戦術核兵器ではなく化学兵器を使用する可能性はある。

 ダーティボムの使用や化学兵器の使用、特に核廃棄物を充填したドラム缶などを爆薬により空中散布する手法、また、ウクライナ原子力施設を原子炉破壊させ放射性物質を拡散させるという選択肢は、ウクライナ軍に核防護装備無では行動できない地域を出現させ遅滞行動を行う、こうした戦術的な意義もあります。もう一つ考えられるのは核実験の実施だ。

 核実験を行い示威行動とする、ロシア軍は実際にウクライナへ戦術核兵器を使用した場合は国際的非難に曝されますが、ロシア国内において核実験を行い、次は戦場で使う、こうした示威を行う事は、北朝鮮核実験の様に批判が集まる事は避けられないが非戦闘員を核攻撃するよりは批判は薄いでしょう。また、実際に核兵器が作動するかを確認ができます。

 気象条件などではどのような状況が核兵器を使いやすいのか、例えば放射性物質がロシアではなく黒海方面へ拡散する気象条件か、逆に第三国へ放射性物質が拡散せぬよう西方乃至北方に風が吹いている状況で使われ得るのか、こうしたものを気象学的に検証する事で、どういった気象条件や時間帯が危険なのかを予め検討することも可能なのかもしれません。

 核防護装備のウクライナ供与、ロシア軍による戦術核兵器使用を拒否する為には、仮に使用した場合の経済制裁等を検討する事も重要ですが、同時にウクライナ軍へ核防護装備を供給し、万一使用された場合でも威力を局限できる事を強調する事が出来る体制構築も必要でしょう。意見は多々あるでしょうが、核兵器が使われる懸念を受け留め、その対策が必要と考えます。

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小松-装輪装甲車(改)の再評価【2】NBC偵察車基本車体応用の”機動防護車”という選択肢

2022-09-24 20:15:41 | 先端軍事テクノロジー
■仮称”機動防護車”の提案
 防衛予算における装甲車両の位置づけの低さ、人命に直結する装備でありながら、ここを冷静に考えるならば重要なのは”取得費用”なのかもしれません。

 小松製作所のNBC偵察車、機動戦闘車に随伴しての激烈な近接戦闘の弾雨鉄の暴風最中に進出するという運用を考えるならば1cmでも車高を低くし、しかしIED簡易爆発物に耐える最低地上高を維持するという厳しい制約が加わり、あの形状となることは残念ながら致し方ないところではあります、しかし他の用途ならばどうでしょうか。固い車両の需要は。

 NBC偵察車。激烈な戦闘を考慮しないのであれば、あの装輪装甲車(改)の無理な車高低下再設計でなくとも車内容積を十分に採ったNBC偵察車の小改造型でも、運転台の隣に車長席を配置していますし、十分対応できたように考えます。小改造というのは唯一、NBC偵察車は兵員輸送を想定していないため、後部扉が小さく下車戦闘に支障が生じる点です。

 装輪装甲車(改)ではなくNBC偵察車派生の車両、機動防護車、とでも表現すべきでしょうか、この試案は第一に後部兵員扉を96式装輪装甲車のような動力ハッチ式とするか、観音開き扉として左右両側に開くよう再構成するというところ。武装はハッチ部分が車高を挙げているため、前部の車長席真上に遠隔操作銃塔RWSを搭載する、などなど方法はある。

 指揮通信車。端的に挙げられるのはこの用途でしょうか、もともとNBC偵察車の前型である化学防護車が82式指揮通信車でしたので誰でも思いつく安直な案ではあるのですけれども。NBC偵察車は膨大な化学検知機材や分析装置を搭載する容量での余裕があります、これは通信機材の搭載容積に転じた場合でも、発電容量含め十分搭載し得るようにおもう。

 支援車両として。考え得るのは現在後方支援連隊の戦車直接支援小隊に配備されている96式装輪装甲車の後継です。戦車部隊に随伴し整備支援をおこなう部隊ですが、敵火砲による攪乱射撃や曳火射撃に巻き込まれることを想定し96式装輪装甲車が配備されています。そこまで激烈な戦闘に巻き込まれることは想定しないため、小松案でも対応可能でしょう。

 フクス装甲車。実はこの小松製NBC偵察車であっても十分用途がある、と考えるのはドイツ軍が冷戦時代に似た選択肢を採っているためです。ドイツ連邦軍の冷戦時代における装甲車といえば20mm機関砲の小型砲塔を備え敵の30mm機関砲弾の直撃にも正面傾斜装甲が耐える強力なマルダー装甲戦闘車を思い出すところですが、そればかりではありません。

 マルダー装甲戦闘車とともに、ドイツ連邦軍は汎用装甲車としてアメリカ製M-113装甲輸送車を多用していましたし、そしてもう一つ、装輪装甲車として汎用輸送に重点を置いたフクス装輪装甲車を大量生産していました。フクスはフランスのVAB軽装甲車をふた周り大型化させたような形状の装甲車ですが防御力も高く、後に改良型フクス2が開発された。

 フクスは車体後部兵員室を可能な限りフラットな形状としまして、もちろん折り畳み式ベンチシートを有していますので兵員輸送を念頭に考えているのですが、これを畳めば第一線への強行輸送に用いうる構造となっています。装輪装甲車ですがフクス2は防御力も向上し1990年代の設計ながら14.5mm機銃弾にも耐える比較的充実した装甲を持つもの。

 NBC偵察車に期待するのはこの点でして、また96式装輪装甲車よりは車高が高い分、車内容積も確保できていますので2個小銃班の乗車は不可能としても3両で4個小銃班、というような輸送力の高さを示せるかもしれません。車体は三菱の機動装甲車よりも安価ですが、なにしろ用途が違うのですがら一人当たりの費用を抑えられる点が重要でしょう。

 装輪装甲車(改)のように無理な改修をするのではなく、装甲が在ればいいのは当然だけれども、機動装甲車やパトリアAMVやピラーニャLAVを転用するには、数を揃える必要から防衛予算の上限もあり限界がある、こうした用途にNBC偵察車派生型は適している様に考えます。なにより装輪装甲車(改)開発の背景に安価、という利点があったのですから、ね。

 汎用装甲車として考えるならば、装輪装甲車(改)が制式化断念の背景に在った幾つかの問題が解決されます、例えば防御力の不足が挙げられましたが、第一線で16式機動戦闘車や10式戦車と共に突撃する装甲車と、支援用に運用する装甲車とでは防弾性能の要求水準が違います。また装輪装甲車(改)の難点、砲塔搭載等の将来発展性という問題もそれ程ではない。

 NBC偵察車派生型の装甲車、何しろ自衛隊には装甲車が不足しています、82式指揮通信車も232両も製造されていますが、後継をどうするのか。新たに装甲救急車を導入する事が決定しましたが、実際にはトラックに防弾板を張り付けるだけという始末で、あの程度で曳火射撃には生き残れない、こうした中の選択肢に、安価という点は重要な視点でしょう。

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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-北海道,蟹をちょっとだけ頂き銘酒をちょっぴり嗜み旅の思い出とする

2022-09-24 14:40:03 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 グルメな話題の掲載がちょっと右往左往してしまいましたので改めて居酒屋の話題を。

 北大路機関のグルメ特集はもう少し順番を考えなければならないなあ、と思いつつ今回は何処を紹介しようかと考えていますと気づけば変な順番や重複掲載となってしまうことがありまして、これも三連休で変な多忙と変な幕間故だなあと気を引き締めなおして。

 北海道、COVID-19とともに自衛隊関連行事がこれほど長期に渡り実施できなくなるとは中々思いませんでしたので、北海道空の玄関口であります千歳空港、今はどうなっているのかと思い馳せるところではあります。来年こそはと思ったのは昨年の2021年の話でした。

 朝市食堂、千歳空港で頂く夕餉はなかなかに愉しいものでして、こういうのも札幌と千歳空港が微妙に距離が有りますので、時間に余裕を持つと札幌を散策するよりも千歳空港にいなければならない、という事情故なのですが、だから晩酌も空港で済ませる事が多い。

 男山、銘酒を頂くのですが、今風のお店ではあるところでは少ししか注がないところもあります中で、こうなみなみと注いでくれますと、これはまた来なければならないなあと考えてしまいます。燗酒よりも冷やのほうがするするとはいってくれまして時間配分できる。

 カニ、朝市食堂ですとお手頃に、蟹の甘みを純粋に楽しみ、酒が引き立て蟹が引き立ての美味しい循環を愉しむ事が出来る、北海道だからこうしたものを頂きたいよねえと考えますと余り気張りますと高い、つまり食材の方に気兼ねしてしまう、だから気軽さは大切だ。

 銘酒とお酒、わたしは煙草は香りが受け付けなくなったのですが、お酒は、食事を際立てるものだと思う、銘酒がありますと一口一口の変化を楽しむ時間が生まれるのですが、昔お酒を飲む前の頃はこうしたものを一口で齧り、勿体ない事をしていたようにも思う。

 じゃがいもをホクホクしつつ。この塩辛、実はおしゃれ絵もなんでもなく北海道では昔からの食べ方だと旭川で教えて頂きました、なんでもバターが高級品で在った頃に口さわりを滑らかにするためにおじゃがに塩辛を載せたという、烏賊と歯応えの違いも愉しめる。

 ちょっとした時間帯のちょっとした一杯とちょっとした肴、気取らずに楽しめるというのは、こうしたご飯屋さんの面白い所なのかもしれません、そして、北海道で蟹を頂いたという確かな思い出と共に、旅客機へと歩み始められるのですから、この一幕がいいですよね。

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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-新京極,響きを聞けば思い出すクラシックな昭和モダン

2022-09-24 14:11:44 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 スタンドという店名のこの響きを聞けば思い出す風景のお店を紹介しましょう。

 有名だけれども入った事が無い場所、というところは京都には意外と多いのではないでしょうか、こう答えますと経ヶ岬分屯基地とか海軍記念館とか反応が返ってきました方と八坂の塔の中とか修学院門跡とか返ってきました方と、その方の価値観が反映されてしまう。

 スタンド、知っているし前を通るけれども入りにくい雰囲気があるのだよねえ、こんなお話しについて。ここは新京極、そして阪急河原町駅からも直ぐという一角にありますお店で目立つ場所の入りやすい位置にありながら、雰囲気から敷居が高いという話を聞きます。

 IWハーパー、入ってみると落ち着いたといいますか昭和の情感をわざとではなく当時の最新をそのまま維持していたらクラシックな装いになってしまった的な伝え方のお店になっていますけれども、世代を変えつつもお客さんはむなしのままと代替わりと、そして。

 ポークなスタミナ焼き、KBS京都が角野卓造さんを招いた居酒屋番組でこのスタンドを紹介しましたが、酒場詩人こと吉田類さんも京都を代表するお店といいますか日本の中のお気に入りの三軒を選んだ際にスタンドを挙げるなど、何故かお気に入りの方が多いのです。

 スタンドなのですが、しかしさっきのアップ写真を少し引いてしまいますと、これは普通の定食メニューだったりします、流石昭和モダン風、とおもわれるかもしれませんがここ、要するに普通の定食屋さんでもある。しかしグラスを並べると普通の居酒屋さんとなる。

 新京極、ビンゴカードの様な、ここ独特の伝票とともに勿論定食の他に一品料理もありまして全部は肴として愉しめます、カウンターもありますがテーブルを相席でおひとり様同士が静かにグラスを傾けるのも、談笑するのも、なにかこう自由さがあるスタンドという。

 スタンド、そしてここは四条通も近くもうすこし下りますと寺町電気街、まあ電気街というには昨今その装いは薄れているようですけれども、修学旅行の街から家電街となる境界線にあるという、一杯やるにも、ちょっと気になる看板の奥は、不思議な日常が広がります。

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ロシア軍動員令-30万動員予備役以外も対象ショイグ国防相示唆,プーチン大統領は戦術核兵器使用の可能性示唆

2022-09-24 07:01:22 | 国際・政治
■臨時情報-ロシア動員令
 2022年は予測不能な出来事が多すぎるところですが今回の動員令と戦術核兵器使用示唆はウクライナ情勢が対岸の火事ではなく我が国安全保障へも影響し得る認識の必要性を説いています。

 プーチン大統領の動員令、ロシア軍の予備役は200万名とされていますが、今回の動員令に対してショイグ国防相は、ロシア国内の予備役は軍務経験者や技術者など2500万であるとした上で、その内の1.1%を招集するに過ぎない、と発言しました。これは昨日の記事で危惧した、大学の軍事教練履修者への招集、この可能性が現実となった構図といえます。

 ロシアからの成年男性の出国が加速している、日本や欧米の報道にみられる通り、旅客機や鉄道と自家用車により周辺国へのロシアからの成年男性の出国の動きが加速しています。他方で、今回の動員は30万名規模ですが、ロシア軍に十分な装備が在るのかは多分に疑問で、経済制裁により破損した戦車を整備する半導体も無く、装備が充分ではありません。

 北朝鮮からロシア軍が弾薬等を調達しようとしている、アメリカ情報機関がこうした警鐘を鳴らしていますが、北朝鮮側は否定しているものの、例えば北朝鮮国内の弾薬の他に近代化改修されたBTR-60装甲車やT-62戦車なども可能性として輸出される選択肢はありますし、ロシア経済制裁に参加していない諸国から中国製戦車等を迂回取得する可能性も。

 ウクライナ軍は、ロシア軍の動員に対し冷静な姿勢を堅持しています。この背景には、ウクライナ軍の予備役は90万名であり、そして装備品についてはNATOからの旧ソ連製装備の補充とアメリカ始め友好国からの装備供与により、実態としては非常に苦しい状況ではあるのですが補給目処があり、幸いにして質的優位で量的優位に対抗出来ている為です。

 ロシアの動員令について、楽観的要素を一つあげるとするならば、ロシア軍はウクライナ領内での戦術核兵器使用に慎重である事を証左しています。ロシアのプーチン大統領は戦術核兵器の使用に対して、ロシア領内の一体性が損なわれる事態に対しては使用を躊躇しないとの姿勢を示しており、これは従来の姿勢より使用の可能性が高まったと考えられる。

 戦術核兵器、しかし、今回の動員令とともにウクライナへの侵攻兵力が動員規模30万名に対して、半数が送られると仮定した場合、ウクライナ領内のロシア兵が増大する事を示しますが、ウクライナへロシア軍の対核防護兵器の展開状況はほぼ確認されておらず、ここで戦術核兵器を使用した場合、ロシア軍の被害も甚大となる事が避けられない為です。

 勿論、この週末にはドンバス地域とヘルソン州のロシア軍占領地においてロシアへ併合に関する擬似的な住民投票が行われており、この結果如何でウクライナ国土の一部をロシアに併合した場合、国土の一貫性に反する動きとして戦術核兵器を使用する蓋然性は高まります、しかし核防護装備無しにロシア軍自身が核兵器を使用できぬ事に変わりありません。

 戦術核兵器ですが、使用される懸念は低いものの、1945年の広島長崎への核攻撃以来では、最大の緊張で、1956年のスエズ危機や1962年のキューバ危機に準じた極度の緊張である事は確かです。しかし、いきなり使用するのではなく、ロシアとしては先ず、地下核実験などCTBT包括的核実験禁止条約離脱による作動確認を行うのではないかと、考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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小松-装輪装甲車(改)の再評価【1】陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退

2022-09-23 20:06:26 | 先端軍事テクノロジー
■ほんとうに欠陥装備だったか
 陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退となりました装輪装甲車(改)について、改めて少し考えてみましょう。

 小松製作所が開発しました装輪装甲車(改)についてですが、今更ではありますが防御力の不足が原因という事での制式化見送りを再検討する必要があるのではないか、と。具体的には装甲車両には第一線での激烈な戦闘に展開する車両とは別に防御力が有る程度保持されているならば、装甲を有さないソフトスキン車よりも用途が広い、というものがある。

 NBC偵察車。装輪装甲車(改)はこの全国に配備されています装甲車両を原型として開発されているのですが、NBC偵察車そのものが有用な装甲車両なのですね、車高が高いために転覆限界などの問題がありますが。装輪装甲車(改)はこの部分の車高を下げることで実用化されたものです、当初計画では即応機動連隊へ大量配備される計画だったのですが。

 即応機動連隊。96式装輪装甲車が配備されていますが、96式装輪装甲車はもともと1990年代前半に全国の普通科連隊へ大量配備させる安価な装甲車両として構想されており、試作車28両のうち少なくない車両を重機関銃や無反動砲による試験に完全破壊されるまでに試験を通していまして、防御力は一定程度有しています、これは相応に良い車両でした。

 96式装輪装甲車は、しかし設計当時に簡易爆発物IEDという脅威を念頭に置いていなかったという問題がありまして、いや日本は専守防衛なのだからIEDは仕掛ける側であってそこまで考慮する必要はないのではないか、とも思うのですが、2003年のイラク戦争ののちに自衛隊のイラク復興人道支援任務派遣を筆頭に日本は"行く側"となるのですね。

 三菱重工と小松製作所。装輪装甲車開発に際してはこの二社が名乗りを上げます、自衛隊の要求は96式装輪装甲車を上回る防御力とともに努めて車幅を道路運送車両法の一般車両にあたる2.5m以内に抑え、そして取得費用を可能な限り抑えること、です。細部は燃料や車体構造と定員などがありましたが、車幅というものが重要でした、国内運用するために。

 小松製作所の車体は2.5m以下に抑えられていました、そして取得費用も1億8000万円に抑えられています、やすいというのは重要です、96式装輪装甲車は取得開始当時1億4500万円でした、90年代半ばにはオーストリアのパンドゥール装甲車やフィンランドのXA-180などが6000万円から8000万円程度でしたので高く見えたのですが、量産が進むと日本も。

 96式装輪装甲車は9600万円まで量産が進むとともに量産効果で安価となりまして、この頃にはストライカー装甲車が140万ドル、スイス製LAVシリーズが250万ドルとなりますので、もちろんこちらの方が車幅も広く防御力はたかいものなのですが、日本国内で普通に運用できて安価、という点は非常に重宝するものだったといえます、整備は複雑だが。

 三菱重工は車幅を2.5m以内に抑えては十分な防御力を与えた場合、将来発展性に重大な限界が生じるという一種の確信があったのでしょう、そこで16式機動戦闘車の車体、これが車幅2.98mあるのですが、これを応用する案を提示しました。小松製作所が量産中のNBC偵察車派生型を提示したように、安価とするには既存車両を発展させるほかないのですね。

 16式機動戦闘車派生案ですが、防衛省の書類選考を通ることは出来ませんでした。車幅2.98mというものはあったようにおもうのですが、もう一つ、三菱案は一両あたり2億5000万円を要するといいまして、三割近く安価です、年間50億円の装甲車予算があるとして小松案ならば2個中隊所要28両取得調達できますが三菱案では1個中隊強に留まるという。

 装輪装甲車(改)、試作予算は小松製作所に発注されることとなりましたが、防衛予算に記された装輪装甲車(改)のイメージ図はパトリアAMVを小型化したようなイメージ図を記していたのに対し、完成した車体は、防衛装備庁に記されたものは、無理に高い車高、車高を高くしないとIED爆風に耐えられないためですが、驚いたものです、これか、と。

 陸上自衛隊は即応機動連隊の16式機動戦闘車に伍して運用する車両を構想していまして、転覆限界などは側聞する程度ですが言われている以上に芳しくないものだったという、NBC偵察車の車高を無理に上げた、その分を下げた戦闘室が無理な配置となっていまして。しかも防御力は一定の角度で機関銃弾が貫徹するという結果となり、IEDにも脆弱性が。

 結果的に不採用となり、開発費返還を求められた小松製作所は、しかし一定の角度しか防御力を求められず仕様は満たしているために経営方針ではこれ以上防衛産業に関与することはできないとして、防衛産業から撤退を決定するのです。しかし、防衛省も安価ゆえに不採用とせずとも、用途を考えれば用いられる運用領域はかなりあったように思うのです。

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【京都発幕間旅情】特急かもめ号885系電車とキハ220形気動車時代のシーサイドライナー

2022-09-23 14:19:46 | コラム
■長崎駅の特急かもめ号
 護衛艦もがみ建造進む長崎、COVID-19影響により最近行けていません。この長崎へは長崎新幹線計画が着々と進むようですが現在既に非常に高性能の特急が運行中だ。

 特急かもめ。JR九州885系特急電車です。この885系電車というのは2000年に運用開始となった、九州の風景に馴染んだ特急電車ですが、初めて旅行誌や鉄道誌において紹介された際は、ドイツの高速鉄道ICEを思わせる、優美で秀逸な形状に驚かされたものです。

 長崎駅に停車する特急かもめ。かもめ号は885系電車のほかに787系電車と若干古い783系電車が投入されているのですが、博多駅と長崎駅の区間を、具体的には始発は門司港駅と吉塚駅と博多駅あり、佐賀駅と肥前鹿島駅と長崎駅と、150kmの距離を結んでいます。

 885系特急電車は振り子式制御車輛で、急カーブが連続する九州の峻険な地形を高速で走り抜ける高性能を誇るのですが、乗ってみますと高性能もさることながら客室や供用区画に豪華な装飾と余裕の間取りがあり、客席もおさまりが良く、更に革張り座席に驚きました。

 日立製作所が製造する885系、営業最高速度は130km/hで設計最高速度は更に上という高性能車ですが、この先頭車の高性能を思わせる流線型車両がホームに到着しますと、仕事でも出張でも旅路に出るのだ、という気分の高揚がありまして、この特別感は特に大きい。

 シーサイドライナー、長崎へ行くとするならば神戸空港から旅客機か、山陽新幹線を博多駅で特急かもめ乗換、最近は九州新幹線で鳥栖から諫早駅方面へ乗り換えるという方式があります、この中で大村市の長崎空港を利用する空路の場合は、シーサイドライナーへ。

 キハ220形気動車。驚いたのですが、2020年3月にシーサイドライナーでの運用が終了しているそうです、長崎駅と佐世保駅を結ぶ快速列車でして、快速電車と紹介したいところなのですが実際は見た目の通り表記の通りディーゼルカーでして、高性能を思わせる。

 佐世保と長崎、その中間に大村駅がありまして、佐世保と云えば海軍の軍港都市、長崎と云えば造船工業都市、その二つをシーサイドライナーが結んでいます。とはいっても京阪神の普通列車と新快速電車程速度差はないのですが、クロスシートでゆったりしています。

 キハ66系気動車のシーサイドライナー、佐世保まで乗ってゆきましたらばもう暗くなっていた。2021年ではシーサイドライナーはキハ220形気動車が転出し、キハ66系気動車となっています。こちらの方が先に引退するかと思えば長生き、窓も開き楽しい車両です。

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