「量子力学にための解析力学」という名の本まであるが、しかし、量子力学に必要なのはまずポテンシャルと力の関係である。もちろん、さらにハミルトニアンの作り方を知ることが必要である。
ところがこのポテンシャルと力の関係が私の教えていた工学部の学生にはしっかり身についていなかった。量子力学を学ぶのに力学のすべてを知っておく必要はないが、どうしても必要な部分がある。
ハミルトニアンは解析力学を工学部ではラグランジュの方程式くらいまでしか普通勉強しないので、これはもう量子力学で講義をしなければならない。
それをハミルトニアンの定義までさかのぼって話をすべきだろうが、いつも力学的全エネルギーということでお茶を濁していた(付記参照)。
約37年の大学在任中にはじめの30年くらいは量子力学の講義のときに出席を取らなかったので、試験のときにだけ出て来て合格しようという不心得者を防ぐためにシュレディンガー方程式を立てさせる問題を出題していた。
そのときに力の式は与えておいたら、それをポテンシャルに直さないで力のままの形で方程式の中に書く学生が1/3くらいは出て来た。意地が悪いが、こういう風にして出席をした学生と区別がつくようにしていた。
その内に出席を取らなくてはならなくない風潮になったので、これはできなくなった。また、確かに講義に出席はしているのだが、内職で実験のレポートを書く時間にしている不心得モノも散見された。
ときどき教室の後ろの方へ行って学生に質問したり、不心得モノの学生には注意したりしたが、わからないことに付き合っている学生にしたら、自衛策だったのだろう。
もう出席はとってあるのだから、教室から出て行ってレポートを書きなさいと学生には口頭で指導していたのだが、そう指導しても教室から出て行く学生はいなかったのは不思議である。
レポートを書きながらでも授業に出ていれば、試験のときに役に立つかもしれないという心理だったのだろうか。
(2012.6.8付記) ハミルトニアンはラグランジアンからLegendre変換をして得るというのが、正統的な道筋であるが、解析力学を学んだ当時は私はそういうことを知らなかった。Legendre変換の詳しいことは小著「物理数学散歩」(国土社)に書いた。